編集後記63

【編集後記】 

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◎世界の期待を集めて船出したオバマ号ではあるが、暗雲立ち込める中東、な
かなか正常化しない金融システム、年率換算11.6%を越える失業者、無医療保
険人口4700万人問題、戦後最大の財政赤字1・2兆ドルなど立ちはだかる壁は厳し
く、早くもその手腕に失望の声さえ聞こえるがオバマ大統領の出現とは何であっ
たのか。
読売新聞記者からサンフランシスコに渡って邦字新聞やTVなどメデイアの経営
に携わり、帰国後は日本大学の特任教授として国際関係論を講ずるなど異色の経
歴をもつ北岡和義氏にそれらを論じて頂いた。

◎船橋成幸氏に寄せていただいた『侵略戦争の総括について』は「戦争の時
代に生きた」世代が「戦争を知らない世代」の人々に是非とも伝えたい私たちの
共通した歴史認識である。「オルタ」61号の『小国日本の勧め』(黒岩義之)な
どとも合わせご一読願えればと思う。イラク戦争の不条理に反対しようと創刊さ
れた私たちのメデイア「オルタ」は、加藤周一が言うように『物事をより大きな
世界と歴史の中で見ようとする』立ち位置を踏まえ、しっかりした歴史認識を次
世代に伝える役割を担いたい。  

◎「オルタ」創刊以来の編集協力者工藤邦彦君の訃報はすでにお伝えしたが、
この号では在りし日の工藤君を偲び、かって社会新報同僚であり、その後長年に
わたって現代ロシア思想の研究をともにされた相沢進一氏に追悼の辞をお願いし
た。工藤君は、生涯を在野の学徒として貫き、私たちに知の地平を拓いてくれた
。いつまでも感謝したい。なお、ご遺族によれば最後まで資料収集に気を使われ
ていたというオルタ58号から60号まで3回にわたって連載された論考『「2008年
秋の政権交代」への私見』は工藤君の絶筆となった。

◎濱田幸生氏の「農業は死の床か再生の時か」では『農協の大罪―「農政トラ
イアングル」が招く日本の食糧不安』(宝島社刊・667円)の評をかねて実際に
農業を営んでおられる立場から日本農業の問題点を鋭く抉っていただいた。 

◎「オルタのこだま」には北海道大学名誉教授の望月喜市氏から62号の中国に
関する篠原論文を高く評価する雑感をいただいた。そして高沢英子さんからは濱
田氏が連載する農の現場からの農業論に関連して、都会に住む私たちが農業の現
場について余りにも認識が浅いことを鋭く指摘された。「オルタ」としても「食
と農」を真剣に考え、もっと目を農業の直面する現実に目を向けなくてはと思う
。なお、高沢さんは、3月中に『京の路地を歩く』(未知谷社刊・2400円)を上
梓されるが、いずれオルタでもご紹介したい。
 
◎「健康」欄では、患者が1300万人を超え、日本の国民病とも言われる糖尿病
について元和歌山県選出国会議員の貴志八郎氏に病いとの長い闘いぶりを赤裸々
に綴っていただいた。その文中に私たちが生活習慣病である糖尿病に勝つための
ヒントがあるのではと思う。

◎今月はオルタの執筆者下山保氏が『異端派生協の逆襲――生協は格差社会の
共犯者か』(同時代社刊・1800円)を、また吉田勝次氏が『癒す力――がんの患
者学入門』(にんげん出版刊・1600円)を相次いで上梓され、それぞれ盛大な出
版記念会があった。下山氏はまず小さな団地の生協を立ち上げたあと、旧首都圏
生協(現パルシステム生協・取扱高1800億円・組合員100万人)を創りあげた活
動家である。現在は第一線を引き改憲阻止活動に専念されている。出版記念会で
は、多数の来会者を前に『成功体験にあぐらをかくな、生協が「運動性」と「企
業性」のバランスを欠いて企業性に傾き運動性を欠くと5年以内に必ず沈没する
』と声を大にして警告されていた。

大阪で催された吉田勝次氏の出版記念会は元国連大学副学長武者小路公秀氏・神
戸のがん相談NPO代表黒田裕子氏・八尾オンドルパン施設長徐正ウ氏などがパネ
ラーとなったシンポジュウム形式で進められた。席上、吉田氏が病躯をおして、
がんとの闘いを40分にわたり熱く語り、参会者の胸を強く打ったが、東京から参
加した初岡昌一郎氏と私は、闘病生活を支え、献身的な役割を担っている春子夫
人にも深く敬意を表した。
  
◎去る、3月6日吉田氏の出版パーテー出席を機に、創刊直後からの執筆者で堺
市の西村徹先生・木村寛さんと東京から初岡昌一郎・仲井富・加藤宣幸が琵琶湖
畔の大津に集まり、63号を迎えた「オルタ」の編集充実策などについて話し合っ
た。

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