編集後記78

【編集後記】 

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◎昨年7月31日、湯浅誠氏などの反貧困ネットワークが主催した『総選挙目前!
私たちが望むこと』集会に参加し熱気に包まれたのが、つい先日のような気がす
る。当時菅民主党副代表は、『貧困の実態調査』実施を固く約束した。たしかに
鳩山政権は湯浅誠氏を内閣府参与に起用し、雇用・貧困問題などにも前向きに取
り組んだ。また外交密約文書の存在を明かし、外交文書自動公開・記者クラブ開
放、高校授業料無償化さらに子供手当の実施など歴代自民政権は忌避したが先進
諸国では当たり前の政策課題をこなした。

◎「国民生活第一」「コンクリートから人へ」「東アジア共同体」「新しい公共
」のフレーズに違和感はなかった。しかも国民には自分たちの手でついに政権交
代を果たしたという高揚感さえあった。しかし政権は8カ月であっという間に潰
れた。鳩山氏は「政治と金」「普天間」を辞任の理由としたが、海外の反響の多
くは「普天間」が日本政府を倒したと見る。退任後の鳩山氏は「思った以上に外
務・防衛省は最後まで固かった」と言外にこれを認めている。

客観的にみても「日米合意の履行」という形でアメリカは日本政府を交代させた
のだ。ゲーツ国防長官の恫喝をゴングに始まったジャパンハンドラー達の動きと
これに応ずる日本のマスコミ・官僚による「日米同盟」の大合唱は鳩山政権を次
第に追い詰めた。この事実は沖縄の住民だけでなく日本国民の心底に深いよどみ
を残した。これは日米関係を長い歴史の目で見れば決してアメリカ側にもプラス
にならない筈である。

◎6月11日、菅首相の施政方針では安保や普天間については官僚の作文を読み上
げただけで、積極的な意欲は殆ど感じられなかった。鳩山退陣の主因の一つが沖
縄問題だとすればこれは異様である。これらについて船橋成幸氏には『提言・民
主党の再発足に望んで』を、沖縄の人々が、この事態をどのように受止めている
かについては、米海軍環境報告書を読み解き普天間のグアム移転を強く主張され
てきた吉田健正氏に沖縄の声として『米国にノーと言えない日本』・『沖縄のノ
ーを無視する日本』として論じていただいた。

◎5月28日、東京・九段の教育会館でのソシアルアジア研究会・総会に出席した。
明治大学名誉教授尾崎和彦氏が『「北欧デモクラシー」についての覚書』と題
して、デンマークの政治家で思想家のステイング氏とスタウニング氏、さらにス
エーデンの有数な政治学者テイングステーン氏の主張や、福祉国家構築の業績・
ナチズム・コミニズムに対する彼らの一貫した姿勢などについて詳しい紹介をさ
れた。
日頃、私たちは、福祉国家のモデルとして北欧諸国の名をあげることが多
い。しかし、これがどのような人々の活動によって築き上げられたのかについて
の歴史を知ることは少ない。長年、デンマークの政治思想史を研究されてこられ
た尾崎氏の深い学識に触れ、これら諸国の社会民主主義者たちの先進的活動にた
いする認識を新たにした。

◎今年は60年安保の50周年を記念する催しがいくつもあった。そのひとつに6月
15日早稲田大学で国際教養学部主催の記念講演会があり参加した。講師・演題は
加藤尚武京大名誉教授(ヘーゲルとマルクス)、坂野潤治東大名誉教授(明治・
安保・平成維新)であった。司会者の篠原浩一郎氏と講師の高名な学者2人がと
もに60年安保の当時、学生デモ指導部として逮捕され有罪判決を受けた被告仲間
だったことはあまり知られていない。このことを坂野氏が紹介したとき300人を
越える満員の会場には一瞬驚きが広がった。

◎【お断り】連載の『農業は死の床か再生のときか』は今月休載となりお詫びし
ます。
                   (加藤宣幸 記)
 

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