編集後記97

【編集後記】 

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◎多くの国民が新年を心から祝えない気分なのは津波・原発の被災地の方々を想
うだけではない。原発・沖縄・TPPと不手際のつづく民主党政権に失望はする
が、失政の総括もできない自民党政権に逆戻りもしたくないという閉塞感である。
しかも世界は、米国一極支配から無極化し、欧州の経済危機。中東の不安定。と
流動するなかで、1月台湾・3月ロシア・5月フランス・10月中国・11月米
国・12月韓国など主要国がリーダー選びの季節を迎える。

◎『いま、世界で何が起こっているのか』とは、この号の巻頭に国際政治学者で
元国連大学副学長の武者小路公秀氏から頂いた論考のタイトルだ。これは私たち
が2004年にイラク戦争の不条理に反対し、オルタを創刊してグローカルに生
きようとする視点でもある。この提起を機会に私たち自身の立ち位置を考えてみ
たいと思う。

 武者小路氏は辻井喬・大石芳野・池田香代子氏等とともに世界平和アッピール
7人委員会として『原発に未来はない。―IAEAの役割を強化すべし―』と共
同声明を出すなど国際的に活発な平和運動・反原発活動を展開されている。この
稿は、内外の日程が詰まる超多忙のなか書き下ろされたものだが、これを一挙掲
載するため、連載執筆者初岡昌一郎・濱田幸生・荒木重雄・羽原清雅・西村徹・
高沢英子の各氏には、今月号に限り、予定稿を来月号に延載し、代わりに短い新
年のメッセージを頂くことにご了承願った。

◎【書評】はリヒテルズ直子さんの『祖国よ、安心と幸せの国となれ』を参加型
システム研究所の林田亜希子さんにお願いした。著者はオランダ型成熟・市民社
会を日本復興のビジョンに、と強く主張されている。金融がすべてを支配し、超
格差社会を生む新自由主義社会の破たんの先に見えるものは何か。日本では、北
欧型モデルが比較的多く論じられるが、これからの日本がGNPの順位を競うよ
うな「ボリューム国家から国民生活本位のクオリテイー国家」(大前研一)を目指
すには、是非オランダモデルも検証したい。

◎佐藤美和子さんの深センからの便りは生活感が溢れ、中国庶民生活の実相に触
れて毎号好評だが、先号は初めて休載となった。今月は健康を回復され再び鮮度
の高い情報を頂ける。アメリカからは武田尚子さんが大統領選挙をめぐる動きを
伝えて下さることになったが、ジャーナリステックなテーマなので日本のマスコ
ミとは一味違ったものを期待したい。

◎12月21日 文京シビックホールの≪崔承喜生誕100周年記念讃フェステ
イバル≫に行く。
 
今、崔承喜(1911~1969)を知る人は少ないが、私の世代には「半島の
舞姫」「東洋の舞姫」はては「世紀の舞姫」と称され、植民地時代日本が世界に
誇る大舞踊家で、当時の国民的アイドルだった。それは1936年にベルリン・
オリンピックのマラソンで東洋人として初めて金メダルをとった孫基禎氏が「日
本国の英雄」であったのと同じ構図だ。私は少年の頃、彼女の舞台に感動したが、
この半島に出自を持つ稀有な芸術家の生涯は日・朝・韓現代史の糸に操られるよ
うに数奇なものだった。戦後北朝鮮に夫(安漠)とともに帰国したが安莫は粛清
され、自身も一時人民英雄の称号を剥奪され、韓国では「親日舞踊家」として近
年まで高く評価されなかった。

◎12月25日 岡田一郎・山口希望・堀内慎一郎・荒木重雄各氏ら社会運動史
研究者と懇談。27日 オルタホームページ更新を毎月ボランタリーでやって下
さる西風陽子さんと会食し協力をお願い。1月7日塩尻市の農業法人信生を訪問
し山田農事部長と今年の計画など懇談。10日 生活クラブ生協顧問・河野栄治
氏と新年交歓会。12日 日本開発工学会の野口寿一氏にWEBメデイアへのア
ドバイスを受ける。

◎今年も多くの方々から賀状を頂いた。自分ではいつのころからか年賀状を出さ
ないのに頂くと嬉しい。まことに身勝手極まりないが、オルタをお届けすること
でこの非礼をお詫びします。なにとぞ今年もご海容・ご鞭撻をお願い致します。

(加藤宣幸 記)

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