青少年育成都条例に反対する

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≪2011年私の視点≫
■ 青少年育成都条例に反対する          岡田 一郎
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 2010年12月15日、東京都議会本会議は東京都青少年の健全な育成に関する条例
の改定案を可決した。この改定案は6月議会において、都議会民主党、日本共産
党、生活者ネットワーク・みらい、自治市民'93の反対で否決された改定案とほ
とんど内容は変わっていない。にもかかわらず、都議会民主党が改定案反対から
賛成へと態度を急変させてしまったために、改定案は可決されてしまったのであ
る。なぜ、都議会民主党の態度が変わったのか、など詳細は来月号に書く予定で
あるが、この出来事は様々な視座を我々に与えてくれると思う。
 
  第一に、漫画・アニメに関する誤解が多いことを浮き彫りにしたことである。
現在、日本の漫画・アニメは世界的に高く評価され、そういった漫画・アニメを
生みだす日本は「クール・ジャパン(かっこいい日本)」として世界中から尊敬
のまなざしを浴びている。日本政府もまた、漫画・アニメを通じて日本の好感度
を上げ、さらに漫画・アニメ関連商品を売り込むことで経済の振興をはかろうと
いうクール・ジャパン戦略を進めている。

 しかし、今回成立した都条例の改定案では規制対象は「漫画・アニメーション
その他の画像」に限定され、小説・実写は除外されている。これは石原都知事や
都庁官僚・都議会議員に「漫画・アニメは子どもが見るものでわいせつなものは
子どもから隔離しなければならない。小説・実写は子どもではなく大人がみるも
のなので規制は必要ない」という意識があったためではないだろうか。今や、大
人を対象にした漫画・アニメが大量に製作されているというのに、為政者の意識
は非常に遅れていると言わざるを得ない。

 また、マスコミ報道などで今度の改定案の内容について「過激な性描写のある
漫画・アニメを規制する」などと報道されているが、そのような漫画・アニメは
改定前の条例で規制可能であり、今回の改定案は性描写自体を根こそぎ規制しよ
うというものに他ならない。そもそも、これまで出版社は行政との協力の下、自
主規制をおこなっており、性描写や残虐描写の多い漫画を成人向け指定し、性描
写の多い漫画雑誌の小口止め(シールで封印し、未成年者が立ち読み出来ないよ
うにすること。出版社が1点につき10~15円の費用を負担)もおこなっている。

 書店やコンビニエンスストアも成人向けの書籍や雑誌を都条例等に基づき、販
売区域を他の書籍や雑誌と分けておこなっており、販売の際には未成年者がその
ような書籍や雑誌を購入しないよう店員が注意している。アニメのBD/DVDやゲー
ムなども販売店での区分陳列を徹底させている。今や、未成年者がかわいい表紙
につられて誤って性描写の多い漫画などを購入するといったトラブルはほとんど
ない。ここまで徹底した自主規制がおこなわれているにもかかわらず、マスコミ
はまったくそのことを理解していない。それはひとえにマスコミ記者が不勉強で
あることが原因なのだが(11月29日に大手出版社が改定案に関する記者会見を開
いたが、大手新聞社の記者の不勉強ぶりは甚だしく、出版社側があきれるほどで
あった。

 この記者会見はニコニコ生放送で放映されたが、視聴者からも大手新聞社の記
者の不勉強ぶりを非難するコメントが寄せられた)ただ、出版社側もこれまで自
分たちがおこなってきた自主規制の内容を宣伝するのを怠ってきたため、マスコ
ミ等にいらぬ誤解を与えてきたことを反省しなければならない。
 
  第二に、都議会民主党の政治的センスの欠如が明らかになったことである。都
議会民主党が変節した背景には東京都青少年課の職員がPTAなどに対して81回も
説明会を開き、そこで保護者などにいかがわしい本を見せ、「このような本を子
どもが誤って買う危険性があるので条例を改正しようとしたのに、都議会民主党
が反対した」などと吹き込み、その内容を真に受けた一部の保護者が民主党都議
に抗議するなどしたことがあったと言われている。

 しかし、都議会で1度否決された条例案を十分検討しようともせず、都議会民
主党を貶めるような行為をおこなった東京都青少年課の行為は明らかにやり過ぎ
であり、都議会民主党はむしろ、このような東京都青少年課の行為を都議会で追
及するべきではなかったか。東京都青少年課の強引な世論喚起に屈したことで、
都庁はこれに味を占め、住民を扇動して、都議会民主党が都庁に逆らえないよう
にしていくのではないだろうか。これでは都議会は都庁に対してチェック機能を
果たすことが出来なくなってしまう。

 また、今回の改定案に反対するために出版社だけでなく、全国の多くの若者が
立ち上がり、都議会や都議会議員個人への陳情・請願などをおこない、都議会民
主党主催の政治資金パーティーにまで出席した人も多かった。そういった人々の
願いを都議会民主党(一部の都議を除く)が一蹴したことは、都議会民主党だけ
でなく、民主党という党全体のイメージを悪化させることとなった。「民主党は
議会で第一党になっても何も出来ない。政治を変える気概がない」と多くの人々
が胸に刻んだことを都議会民主党は忘れてはならない。

          (筆者は小山高専・日本大学・東京成徳大学非常勤講師)

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