驚きと畏敬の念をもって愛読する『回想のライブラリー』

【読者のこだま】

驚きと畏敬の念をもって愛読している「回想のライブラリー」今井 正敏

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中国の改革開放のシンボルになっている広東省の深せん市に居住され、『オルタ』
に毎号ホットな中国の一般の人たちのナマのくらしに関する現地レポートを送
ってくださっている佐藤美和子さんに、『オルタ』32号で、普通の中国の人た
ちが、どんな「日本観」、「日本人観」を持っているのか、教えてほしいとお願い
しましたところ、早速32号にそのお返事をお寄せいただき、大変嬉しく心から
お礼申し上げます。
 ご多用のなか、2回に分けてお送りくださるとのこと、大いに期待しています。

 今月は、連載中の初岡昌一郎姫路独協大学名誉教授の「回想のライブラリー」
の読後感を述べさせていただきます。
 32号で、加藤編集長は、「回想のライブラリー」について、「いままでは、い
わば世界を股にかけたライブラリーという名の交友録で、多くの読者はその多彩
な広がりと深い交友関係に驚き、惹きつけられたが、同時に著者の卓越した記憶
力にも感嘆した。今月からは、いよいよ少年期からの読書歴に筆が及んで、楽し
さもより増すはずである」と書いておられるが、まさにその通りで、青年運動、
労働運動、政治活動等の分野での幅広い多彩な交友関係、国際舞台での活発な活
動歴、各方面にわたる豊富な読書の積み重ね、活動の中での数々の貴重なエピソ
ード・・・等々が、33号で、元日本青年館常務理事の水野光四郎氏が、「記憶
力のすごさ」と述べているとおりの抜群の記憶の力で記述されている「回想のラ
イブラリー」。20年前、30年前の活動の様子が、まだつい最近の歩みのよう
な筆致で書き綴られているので、畏敬の念と驚きの思いを交えながら、毎号愛読
しています。

 今月は、「生い立ちの記」から始まり、国際キリスト教大学を卒業するまでの
少年期、青年前期の勉強歴、読書歴、交友関係歴、そして恩師との出会い等々の
遍歴が述べられているが、その時代背景は、敗戦の年が小学校四年生だったと書
かれておられることで、よくわかるが、小学校の後半期、中学校(新制中学校が
発足したばかり)、高等学校の生徒、学生時代は、まさに戦後の混乱期のまった
だ中。
 また、その家庭関係も、普通の平穏な家庭環境とはかなり異なっていたと思わ
れるので、初岡先生の少年期、青年期前半は、波乱にみちたものであったことが、
よく理解できた。

 1955年に国際キリスト教大学に入学。この1955年は、よく知られてい
る通り、自民党、社会党が対決する「55年体制」が始まった年。そして、「も
はや戦後ではない」という文句が、『経済白書』の中に登場したのもこの年。ま
た、第一回原水爆禁止世界大会(広島市)の開催、いわゆる「神武景気」の始ま
り、石原慎太郎が『太陽の季節』でデビューしたことなどがあったのもこの19
55年であった。

 ついでに私ごとを記すと、私が調布市の深大寺町に居住するようになったのも
この55年の秋から。その1年後ぐらい後に、すぐ近くに、のちに社会党の国民
生活局長として活躍された横山泰治さんが居住されたので、横山さんと親しくつ
き合うようになり、横山さんの配慮で、社会党の中執の方がたにお目にかかれる
機会ができた。
 私が新居をかまえた深大寺町から、国際キリスト教大学までは、自転車で10
分ぐらいなので、この大学に隣接して広大な都立の野川公園があったことから、
休日には、キリスト教大学(略称キリ大)を横目で見ながら、野川公園までサイ
クリングをするのが、大きな楽しみになった。
 
 また、このキリ大の正門から、キリ大の教会の大聖堂があるところまで、広く
て長い通学路がつくられていて、その西側にサクラが植えられていて、春サクラ
の季節になると見事な花を咲かせるので、その季節には、このサクラ並木の通学
路が一般に開放され、サクラ見物に多勢の人たちが訪れた。私もその中の一人で、
毎年、満開のサクラ見物に、キリ大に足を運んだ。

 このキリ大は、戦時中、中島飛行機製作所(現富士重工)があった場所に戦後
建てられた大学で、開校当初から人気が高く、入学最難関の大学の一つに数えら
れ有名校として知られていたが、そのキリ大に初岡先生は入学されたので、勉学
意欲に燃えた若き日の初岡先生のさっそうとしたお姿が目に浮かんでくる。

 「大学時代も雑読だった。ICU図書館はよく利用した」と書かれておられる
が、この「雑読」の内容がまたなんとも幅広く、数も多いのには驚かされた。「大
学時代には多くの本を乱読するくせがさらに昂じてしまった」ということで、そ
の乱読の一部のリストをあげておられるが、私の目にふれたこともない本が何冊
も登場してくるので、「本好き」ということではかなり自信を持っていた私も、
手をあげざるを得なかった。
 そして、語学の学習や読書に明け暮れる中で、サークル活動や学外での活動(社
会党青年部での活動、関東社研連書記としての活躍等々)にものめりこんでゆか
れた旺盛な行動力。まさに初岡先生のキリ大の学生時代は「青春バンザイ」の時
代でなかったかと思われ、後日、初岡先生が多方面の部門で活躍される基礎が、
この時代にしっかりと固められたのではないかと思う。

 そして、最後に新宿三越裏にあった喫茶店の「風月堂」のこと。私も1956
年から勤務先が新宿になったので、この風月堂にはよく通った。60年の安保闘
争のころには唐牛健太郎全学連委員長の姿なども見かけたが、私もよく利用した
「風月堂」の名前が出たので、大変なつかしく思った。
 この「回想のライブラリー」の連載は、この先も続くことと思われるので、初
岡先生の健筆に大きな期待をこめながら、愛読させていただきたいと思う。    
                                      
           
(筆者は元日青協本部役員)
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