【運動資料】
ヘイトスピーチとレイシズムと闘う国際ネットワーク(のりこえねっと)
ヘイトスピーチと闘い、差別なき世界を
2007年から散発していた「在日特権を許さない市民の会」(在特会)をはじめとする「行動する保守」と呼ばれる差別者集団が行うデモが大きな広がりを見せたのが、2013年の春です。
これに危機感を覚えた市民たちが路上で敢然と立ち向かい始めました。そしてさらに大きな社会的包囲網を作ろうと、人材コンサルタントの辛淑玉さんが呼びかけて2013年9月に結成されたのが、ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(略称・のりこえねっと)です。村山富市元首相や上野千鶴子・和田春樹東大名誉教授らの知識人やアイヌ・沖縄・部落・日系ブラジル人などマイノリティ当事者を含む共同代表は21名(現在は22名)にものぼり、ヘイトスピーチ・レイシズムと闘っていく体制がまた一つ構築されたのです。
それから1年あまり、私たちは以下のような活動を行ってきました。
●1)のりこえねっとTV
在特会など作った動画が多数流れているニコニコ動画であえて、これに対抗する番組を作ろうと、毎週月曜日午後9時から10時まで、さまざまな角度からヘイトスピーチ・レイシズムを考える番組を行ってきました。ヘイトスピーチそのものの問題性を取り上げることもあれば、差別者集団がターゲットにする従軍慰安婦問題や生活保護、靖国問題やLGBT(性的少数者のゲイやレズビアンなど)、沖縄の基地や韓国における「反日」教題など幅広いテーマです。すでに放送回数も50回を超え、日本におけるヘイトスピー・レイシズムを考える貴重な映像となっています。
現在は、ニコニコ動画だけではなく、「You Tube Live」でも見られるようになり、twitter などを通じて意見・質問などお寄せいただき、視聴者の声を聴きながら放送しています。また「のりこえねっと」のHPでは、これまでのほとんどの放送をアーカイブとして見ることができます。すべて無料でご覧いただけますので、ぜひ一度ご覧下さい。 http://www.norikoenet.org/
●2)セミナー・シンポジウムの開催
セミナーを3回開催し、ヘイトスピーチについて、実際に被害にあった人々などから直接話を聞く機会を作りました。また6月には、「のりこえシンポ」と題し、漫画家の石坂啓さん、元文部省事務次官の寺脇研さん、エッセイスト・歌手の八木啓代さんをパネラーに迎え、シンポジウムを開催しました。定員をはるかに超える200名の方々にお越しいただき、ヘイトスピーチに対する関心の高さを感じることもできました。
●3)ヘイトスピーチへの抗議
「『在特会』にもいいところがあった」竹田恒泰氏発言について読売テレビに抗議(昨年10月21日) 、ニューズウイーク日本版の「『反差別』という差別が暴走する」への抗議(今年6月24日)、ヘイトスピーチ規制を国会デモ規制に捻じ曲げる高市早苗自民党政調会長への抗議(9月4日)など社会的影響の大きいマスメディアや政党への抗議や国連人種差別撤廃委員会の対日勧告や京都朝鮮学校襲撃事件の判決に対する見解など、世論喚起やレイシズムとの闘いへの連帯支援を表明していきました。
●4)ヘイトデモへのカウンター行動
3月16日に池袋で行われたヘイトデモに対し、「3.16 TOKYO ANTIFA HUMAN WALL」として、カウンターの仲間と共に抗議に立ち上がりました。桜井誠在特会会長を先頭にヘイトスピーチを繰り返すデモ隊に、それに倍する人々が抗議を行いました。これ以外にも首都圏を中心に、ヘイトデモに抗議にかけつけています。
他にも啓発漫画の作成、取材や大学生の自主学習会講師などさまざまな活動を行ってきました。
さまざまな人々の努力により、ヘイトスピーチに対する関心が高まってきました。国連自由権規約委員会や人種差別撤廃委員会はこの夏相次いで日本でのヘイトスピーチ規制を行うよう勧告を出しています。国立市・名古屋市・奈良県では、国にヘイトスピーチの根絶を求める法規制を求める意見書を採択しています。国会でも、この間ヘイトスピーチの現場でそのひどさを見つめてきた有田芳生参議院議員を中心に、「人種差別撤廃基本法(仮称)」の制定をめざしています。
おおぜいの人々の「ヘイトスピーチ・レイシズム反対」の声がここまで事態を動かしてきました。実際ヘイトデモの参加者数は2013年前半より、現在は減ってきています。しかし一つ一つのデモ参加者は減っても、むしろヘイトデモやヘイトスピーチ街宣の回数は増加傾向にあります。ヘイトスピーチによって、傷つき沈黙を強いられる当事者がいる現状はいまだ改善されていないのです。11月8日にも、ひどいデモが東京・銀座で行われました。
「日本で戦前、犯罪を犯しまくった在日韓国・朝鮮人は日本人から出て行け! 犯罪韓国・朝鮮人を日本から強制連行しろ!」
聞くにたえないデモのコールが銀座の街に響き渡ります。
このデモの名前は「子供に嘘を教えるな!デモ in 銀座」となっていて、教育問題についてのデモのはずでしたが、やはりヘイトスピーチの連続のデモでした。
ヘイトスピーチは、決してごく限られた少数の偏った思想の持ち主の問題ではありません。かつてもっとも民主的な憲法といわれたワイマール憲法を持ったドイツが、ユダヤ人を敵に仕立て上げて扇動することによって、大衆の人気をひきつけ、政権についたナチスによって、ユダヤ人を虐殺し、第二次世界大戦を引き起こした史実を忘れるわけには行きません。日本でも90年前には関東大震災において、「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマによって数千人の朝鮮人・中国人などが殺されるといったことも起きているのです。このようなことを二度と起こさないために、どのような努力が必要なのか、それはこの社会を構成するすべての人々の問題でもあります。
皆さんとヘイトスピーチや差別のない社会をめざしていきます。のりこえねっとでは、実際に活動を共に担う仲間や財政的に活動を支える賛助会員などを募集しております。ぜひご支援ご理解をお願いします。
(詳しくはHPをご覧ください http://www.norikoenet.org/)
(筆者は「のりこえねっと」事務局員)