【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(34)

「アベノマクス」ではなく「○○マスク」(2)

坪野 和子

 みなさま、ご無事であられますか? 私は大丈夫です。千葉県在住で勤務先が東京と埼玉の私はまだ自粛状態です。3月の初めから東京ベイインターナショナルスクールは依然としてオンライン授業が続き、もうすでに3か月目です。私の大人のクラスでは、お子さんが小さいご家庭は奥様がお気を遣ってくださっています。彼らは2月末から在宅勤務が続いています。身近な日本在住ITインド人の素早い行動を実感していると、日本はなにもかも遅いと感じます。

 私の近辺では、どこへ行ってもマスクがなかった状態が続きました。ある日、バングラデシュ人の友人が特に文章も載せずに大量のマスク画像を(1,000枚くらいに見えました。他にもあったのかも?)送信してきました。彼のお店であることは知っている人にはすぐわかるので、売るつもりだったのでしょう。その数日後、テレビで新大久保のイスラム横丁でマスクが売られているという報道があり、出どころはやはりバングラデシュ。本国から共同購入したのでしょうか?

 そのうち人々は手作りマスクを使いはじめ、洋服屋さんや手芸用品屋さんがキットを売りはじめ、居酒屋さんが手作りマスクとお弁当を売るようになり、中国料理屋さんが本業休んで中国マスクを売り、気づけば普通に買えるようになりました。出遅れてマスクを売っていたお店は値下げしています。ですが私の許にはアベノマスクはまだ届いていません。給付金の書類も届いていません。ITインド人に限らず、日本に住む外国人たちは行動が速いようです。

 さて、今回はマスクボランティア活動を日本国内で続けている日本ウイグル協会、パキスタン・コミュニティ・ジャパンの続報と補足です。

1.「アベノマスク」より先に届けた
      「東トルキスタン(ウイグル)マスク」寄贈

 4月15日に逗子市、16日に相模原市、市長さん・市議さん・商工会の要人に会ってマスク、消毒液を無事お渡しできたようです。
 「両市とも台風19号の復興ボランティア活動でのご縁を継続させることができた、嬉しかった。ウイグルのことを知ってもらうとか、政治的なこととか、今回も抜きにして少しでもお役に立てることが先だった。相模原市は何人かウイグル人が住んでいます」(※日本の統計だと「中国国籍」で処理されます。)

 彼の話と日本ウイグル協会公式サイトでの数が合っていなかったので(記憶がずれていたのだと思います)以下は公式サイトのマスクの枚数などです。
 (1)市販マスク:1,224枚(2)手作りマスク:200枚(3)消毒液:20.3L
 (4)次亜塩素酸系除菌・消臭剤:5袋(15個)(5)ハンドジェル 2本(1L)

 「マスクは60人くらいの方々から寄付していただいた。ひとり1枚から、大体ひとり7枚くらいで…それより多い人もいた。市販マスクを送ってくださった人たちからマスクのことを聞いた」「ある人は、テレワークが続いて家を出なくなったので10枚入りマスク3枚を置いて7枚送った」「ある人は50枚入りの箱が偶然買えた。自分で必要な枚数だけ抜いて残りを箱ごと送った」「7枚なんて枚数そのものが入手困難だったのにすすんで喜捨してくださった方々に感謝している」

 「私たちウイグル人は故郷で多くの人々が生命の危険にさらされている」
 「今、一番大切なことは生きている存在すべての生命の安全ではないかと思う、思っている」

●在日ウイグル人有志らによる「マスクのボランティア活動」報告
  https://uyghur-j.org/japan/2020/04/xalis/

2.引き続き医療機関に寄贈「パキスタンマスク」と東日本大震災回想

 またもやマスクは1枚ずつビニール袋に入れ、そこに「パキスタン日本友好1952 私たちはこの困難な時期に日本人と一緒にいます」とカラー印刷した紙を貼って寄付。前回は、幼稚園に消毒液、病院、市役所を通してマスクを寄付する活動を考えているということでしたが、医療関係者が頑張ってくださっているので主にそちらに送るようにしたそうです。

 ここで、前回のマスクの話で出てきた、東日本大震災の時に駆け付けた南三陸町のエピソードをお伝えします。
 「2011年、トラック2台で8人のパキスタン人・日本人ボランティアと炊き出しのために雇ったイラン人ケバブ屋2人、計10人みんなで向かった。メンバーの1人は企業に働いていたけれど、あとは自営だから遠くに行っても自分の責任だったね。途中、道路が壊れていてたどり着くまで大変だったけど、ボランティア活動をするって神様と約束したからね。私はこのために100万円使ったし、友だちもお金を喜捨してくれた。お金と炊き出しのほかは必要だと言われたものを用意して持って行った」
 水とティッシュペーパーと子どもの本。
 この話をしているハーフィーズさんのマスク越しの嬉しそうな顔は、口元が見えなくてもボランティア活動をすることに幸せを感じるんだなと思いました。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)
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