【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(30)

「カレー屋さん」たち(2)

坪野 和子


 地球温暖化…なんで日本でこんな天気? そう感じる日が年々増えています。インドのデリーのほうが日本の埼玉県より涼しいなんて数年前には考えられませんでした。私は秋が好きですが、年々短くなっています。暑い日にカレーが食べたいと思っても暑すぎて食べられない日もあったりします。今回もカレー屋さん。

カレー屋さんが代替わりする理由(1)

 私が最初に代替わりしたなあと感じたのは、パキスタン人の旦那さんと日本人の奥さんが開いた「インド料理屋さん」です。30年くらい前でした。店名からするとパンジャブ出身なことがわかります。食べてみて、懐かしい味だったので嬉しかったのを覚えています。あの当時、カレー屋といえば、日本人のクチに合う有名店が多くて、今のように南アジア料理が大抵の町で食べられるようなことがなかったので、「現地の人」の料理など珍しかった時代でした。

 それから15年くらい経って、行ってみたら、そのお店はまだありました。持ち帰りで買って帰ろうと思って入ったら、中はネパール人のコックさんたち。「あら? パキスタン料理の店じゃなかったっけ?」「オーナーは他の仕事に行っている」…どうもパキスタン人お定まりの中古車の仕事に行っているっぽい。

 さらに数年経って、そこはネパール人たちに売ってしまったのかしら? それから行っていませんでしたが、偶然サービスデーだったので、持ち帰りで買いました。おしゃべりして、パキスタン料理が好きだと言ったら、やたら油っこい…イメージだけの油だけパキスタン料理風のカレーが入っていました。
 この店は支店も出して、そこはハラール食材+レストランになっていました。ネパール人のハラール?(※でも、新大久保のハラル横丁はネパール人の店もあるし?)ああ、もしかして外観はネパール人の店だけど、パキスタン人のオーナーがそのまま経営しているのかも? いや? このオーナー、(たぶん元)パキスタン人だけど、ヒンドゥ教徒。商売手広いのかも。

カレー屋さんが代替わりする理由(2)

 友達のバングラデシュ人の事務所の近くに、ネパール人の居酒屋がありました。そこは…夜の営業なんで、一度も入ったことがありませんでした。で、つぶれました。そして近くの定食屋で日本の定食と「本場インド料理」を出す店に彼らは移動しました。安いんで、食事してみました。…??「本場インド料理」は冷凍食品とわかる! 彼らが作って冷凍したのだろうけれど。
 バングラデシュ人の友人曰く。「ああ、彼ら、最初はちゃんと作るけれど、お客様がこなくなる、作り置きする、そのうち冷凍する、そのうち、お客様が来なくなる。その連鎖で自分の店がつぶれる、どこかに雇ってもらう、作り置き・冷凍がクセになっている。うまいものを作る意識がない。ダメだろ」

カレー屋さんが代替わりする理由(3)

 ネパール人のカレー屋さん、シャルパ族(シェルパ)。とりあえずお腹がすいたから入って食べることにしました。え? 冷凍のカレーソースと冷凍の具材とトマトソースと生クリームをミックスして出来上がり!! これ見せられて、食べる気がしない。その上、「オレ、料理うまいんだから」?? これ、お金を出して食べる意味がない? 半年してその店はなくなっていました。

カレー屋さんが代替わりする理由(4)

 バングラデシュ人の旦那さんと日本人の奥さんの店。インド人(西ベンガル出身)のコックさんがいて、色々工夫していました。イベント、カラオケ、ワンコインランチなど。ですが、うまくいかなかったようです。理由はわかります。オーナー夫妻があまり店にいなかったからです。
 私の出勤や退勤時間に、店の外で現地の奥さんや友達とケータイで電話している様子を見ています。彼らは日本の時給で働いているので、簡単に手抜きをします。お客様は料理のクオリティが落ちたら来ないでしょう。お客様が減ったので、ハラル食材の販売をはじめました。バングラデシュ人の留学生のたまり場になってしまい、日本人のお客様が敬遠したようです。その後、その場所はネパール人の料理屋になりました。

カレー屋さんが代替わりする理由(5)

 よーく知っているパキスタン人の支店。友達が予約の電話をしたら、その店は場所が悪いから閉店して、他のパキスタン人に譲った…って。で、数日前、パキスタン人の友人は、その譲った店でご飯食べようっておさそいただきました。撤退、決断、速いのは、多角経営しているからなんでしょうね。

カレー屋さんが代替わりする理由(6)

 お店の名前も料理も変わりません。コスパ良くて気に入っていたお店がありました。経営者本人はギリギリ経営だとこぼしていました。「ネパール人の店が数軒近くにできて、彼らにきいたら、なんでこの光熱費でやってられるの? なんでこの材料費でやってられるの? 味がわからない日本人に料理を提供するのではなく、ビジネスでしょ? 食べて喜んでもらうんではないよね」
 最近、このお店のオーナーが変わったことを元教え子が教えてくれました。コックさんは同じようです。このお店以外にも店名キープでオーナーが変わったお店を知っています。

カレー屋さんが代替わりする理由(7)

 親戚がもっといい場所を見つけた。そこに移転し、元のお店は別の親戚に。

カレー屋さんが代替わりする理由(8)

 ネットで店舗売り出し。ナンなどを焼くタンドリー(窯)があるのでそのままシフト。移転でも窯があると引っ越し費用軽減。日本人、カレーそのものより、ナンを食べるのが目的だから。
 次回もカレー屋さんの話し。

 (高校時間講師)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧