【視点】
「マイナ保険証」のごり押しは国難!!である。
1.「国賊」と「国難」
かつて故・安倍晋三総理を「国賊」と言ったのは現在の総務大臣・村上誠一郎氏だ。その村上といえば戦国時代に瀬戸内を治めていた「村上水軍」の末裔として知られる。皮肉にも今度は、その村上が前任の引継ぎとなった「マイナ保険証」のごり押しで「国賊」になりかねない気配だ。村上は以前より現行保険証との選択可の主張だから「ちゃぶ台返し」が期待される。
我が国の国民皆保険制度 (1961年開始)は世界に誇れるものだが、今般の「マイナ保険証」の強行でそれが瓦解するのか。誰でも、どこでも、いつでも、国民は保険医療を受けることができる、という先達の崇高な理念と確かな仕組みは時代を超えて犯してはならない領域だ。
2.嵌められたか!! 最高裁
「個人情報の漏洩や目的外の危険性は極めて低い」と、マイナ制度自体に最高裁は憲法違反ではない(最高裁2023.3.9)とした。しかし、のちの具体化では同判決を方便に公然と個人データの「紐づけ」に成功したかにみえる(「一部改正法」成立・2023.6.9)。
「社会保障、税、災害以外にも」である。個人のデータが個人の知らないところで知らない人によって「のぞかれる」「利用される」という、即ち最高裁が想定しない事態になった。「本人の同意」のタッチで「こんなはずじゃなかった」は必至。自身のプライバシーは第3者に閲覧され、今後は「個人情報保護法」に抵触などトラブルもまた必然か。
「医療DX」(医療デジタルトランスフォーメーション)は「個人の保健医療介護に関する情報やデータを外部化、共有化、標準化からより良質な医療やケアを受けられるように」と謳うが、その狙いどころは拡がり、さらに「---以外にも」は国民の医療情報以外のプライバシーも対象になる。こんな応援団がいる。
「政府が健康保険証の廃止を目指す2024年秋を、納期、納期でありますと位置付け、ぜひとも保険証廃止を実現するよう、納期に向けてしっかりやっていただきたい」(新浪剛史経済同友会代表理事2023.8.15東京新聞)
3.カルテの一人歩き
「厚労省医療DX令和ビジョン2030」(2022.9.22)によれば各種のデータ基盤やシステムから成る「全国医療情報プラットホーム」を「PHRサービス事業者」のもと「マイナポータル」を情報共有するという。そこでは「情報を作成、情報を収集、情報を利活用する」「研究開発等にも利用」と念を押す。国民の食事、睡眠、歩数、医療機関の利用や日常生活データを把握し「PHR事業者」の関心である国民の行動変容、健康増進の開発治療につなげていく。
要するに電子カルテの一人歩きは、医療者の守秘義務、職業倫理などどこ吹く風だ。
国内外の事業関係者にとって、これほど使い勝手のいいシステムはなく、国民のプライバシーは丸裸だ。まずは「PHRサービス事業者」を構成する企業に丸見えといった構図だが、このままでは日本人のビックデータは「GAFA」など巨大IT企業の餌食になる日は近い。「マイナ保険証」で笑うのは誰か。マイナ利権はないか。
4.法律で決まったこと」の嘘
そもそもマイナンバー取得自体が強制ではなく任意が原則だ。
にも拘わらず「マイナ保険証」を強制する政府だったなら、明らかにその仕儀には整合性がない。「ルールを守る」が所信表明の石破総理だ。本件では当初の「任意で、患者は紙かマイナかを選択できる」のルールに戻すだけのことだ。
なくすな!! この国の国民皆保険制度の精神を。日本人1.2億人のプライバシーを漏らすことに同意した「国賊」は誰か。
了
ジャーナリスト 星槎大学特任教授 日本ペンクラブ会員
(2024.11.20)
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