【オルタの視点】
「彎道超車」「隧道效應」「騰籠換鳥」
― 中国の次の発展戦略を知る三つのキーワード ―
◆◆ 中国の計画力と実行力を見くびるな
2017年10月に開催された中国共産党第19回党大会で、2050年までの新しい3段階発展構想が決定された。本当に実現できるのかと疑う日本人が多い。1978年に鄧小平氏が打ち出した改革開放戦略は、その当時、日本のGDPの10分の1未満だった中国を、2017年末の時点で日本の経済力の3倍に作り上げた。その予想と対応に失敗した日本は再度、中国を馬鹿にして、その戦略構想、計画力、実行力、潜在力を見くびる余裕があるのだろうかと聞きたい。
中国の今後の成長が立ち向かうべき課題はこれまでよりもっと多く、もっと厳しいことは言うまでもない。世界的な経験値から見ても、「中所得国の罠」(最近の中国の研究によると、2023年頃に本格的に到来)、「ルイス転換点」(実態として2015年から2020年までの間に到来)、「開発独裁のジレンマ」(経済発展の次に到来する民主化の波)といったハードルが立ちはだかっている。
一方、中国も日本に負けないぐらいの「課題解決先進国」である点を忘れてはならない。問題が出現したら全力で取り組み、短期間でクリアしていく能力だ。近年の環境汚染、PM2.5の問題に対する中国の取り組みはすさまじいものがあり、2020年までに「目に見える改善」という目標は習近平指導部から厳命され、各地方の幹部はそれを達成できなければ首を切られるとの危機感で必死にやっている。
経済発展の行方に立ちはだかる問題に対しても中国では近頃、新技術革命の波を積極的に引き寄せる「彎道超車」、「一党独裁」を逆手に利用する「隧道效應」「騰籠換鳥」といった実施戦略を打ち出している。日本ではそれらの4字熟語からなる戦略構想はほとんど見落とされるか、素っ気なく直訳されているが、実はこれらの表現の背後に、中国の経済発展に関する昨今の思考様式が込められており、是非理解を深めたほうがよい。
ここでは「彎道超車」を中心に、このような4字熟語的な表現に込められた中国の経済発展戦略を紹介・解説する。
◆◆ 「彎道超車」は今の中国の流行り言葉
第19回党大会前後、「彎道超車」との表現はより一層多く使われるようになっている。たとえば、
① 十九大代表楊德森院士:“彎道超車”實現海洋強国夢『中国教育報』2017年10月25日
http://dangjian.hrbeu.edu.cn/2017/1031/c5871a169018/page.htm
『中国教育報』という新聞に掲載された中国の国家級科学技術専門家(「院士」)であり、ハルピン工程大学の教授の談話は、中国は日米などの海洋大国に対して「彎道超車」をし、海洋強国の夢を実現せよ、と呼びかけている。
② 19大再提AI 中国機器人啟動“彎道超車” 「財經頭條」サイト2017年10月26日
http://cj.sina.com.cn/article/detail/5994769263/453133?column=stock&ch=9
第19回党大会の政治報告でAIが取り上げられ、ロボット分野でも中国は「彎道超車」をしようと意欲的である、とのことがルポされている。
③ 十九大代表劉国治:軍事智能化發展是我軍實現彎道超車的戦略機遇 「搜狐網」サイト2017年10月25日
https://www.sohu.com/a/199992111_100044418
人民解放軍も、軍事のAI化を「彎道超車」を実現する「戦略的チャンス」だと捉えていると、党大会に参加した軍からの代表が解説している。
ほかにこういう使い方もある。
④ 政法系主導国安委? 驚人逆轉 王小洪十九大試彎道超車 「阿波羅新聞網」2016年6月29日
http://www.aboluowang.com/2017/0629/953877.html
中国に批判的な、米国に拠点を置く中文サイトの記事も、習近平主席の信頼が厚い王小洪氏は一気に数人を抜いて国家安全委員会の要職に就くかも、と行った分析の中でも「彎道超車」との表現を使っている。
この言葉に関して、まずは字面の日本語の意味を見てみる。
⑤ 中国社会を理解するためのキーワード・彎道超車 「北京観光」サイト2017年11月30日
http://japan.visitbeijing.com.cn/a1/a-XCXQCW01B168FE5637E04E
<本来、カーレースの専門用語で、カーブで相手を追い越すことを指したものですが、最近では、政治、経済、社会生活などでも幅広く使われるようになっています。「弯道」はカーブの意味ですが、これが転じて、社会の発展に伴う変化や人生などのキーポイントを指しています。そこから、このキーポイントをしっかりとつかみ、アクセルをふかせば、追い越すことができるという意味を表すようになっています。>
日本ではおそらく発行部数が一番多い中国の広報誌『人民中国』誌にも「彎道超車」に関して小さい解説のコラムが設けられた。
⑥ 彎道超車 カーブでの追い越し 『人民中国』2017年11月14日
http://www.peoplechina.com.cn/zlk/wlxcy/201711/t20171114_800109985.html
<本来は自動車競技によく出る用語で、カーブで相手の車を追い越すことを指す。現在は政治、経済、社会生活など幅広い分野で使用されており、その「カーブ」とは社会の発展に伴う変化や人生におけるキーポイントを指す。「カーブでの追い越し論」とは中国の検索エンジンサイト百度の李彦宏董事長が2009年に初めて打ち出した考えで、李董事長は金融危機において中国経済は「カーブ」に差し掛かっているが、これはまさに飛躍的発展を実現し、ライバルを追い越すチャンスだ、と述べた。>
もともと自動車レースに使われる専門用語だが、近頃の中国では特に国家および産業、企業の発展戦略を考える上で強調されるコンセプトになっているのだ。
ちなみに、英語では「彎道超車」は「corner overtaking」となっている。だが、欧米でも中国がこの表現を使ってある種の発展戦略を語っていることについてやはり的確に理解されていないようだ。たとえば次のNYタイムズ紙の中文と英文を併記した記事だ。
⑦ 彎道超車,中国志在主導未來清潔能源産業 『紐約時報』中文サイト2017年6月6日
英語タイトル:China Looks to Capitalize on Clean Energy as U.S. Retreats
https://cn.nytimes.com/business/20170606/china-looks-to-capitalize-on-clean-energy-as-us-retreats/dual/
この中に、中国のクリーンエネルギー分野の産業政策について次のように紹介されている。
The country's “Made in China 2025” program, the heart of Beijing’s domestic industrial policy, calls for heavy spending on clean-energy research and development, as a way to bolster the economy. State-owned banks are pouring tens of billions of dollars each year into technologies like solar and wind along with energy conservation strategies like high-speed rail and subway lines.
China is already dominant in many low-carbon energy technologies. It produces two-thirds of the world’s solar panels and nearly half of the wind turbines. China is also rapidly expanding its fleet of nuclear reactors and leads the world by far in hydroelectric power.
次の段落では「彎道超車」の戦略が言及された。
“與以往不同,傳統能源都是西方国家主導,”為陽光電源供應太陽能板的中国公司晶澳太陽能的技術總監李陶説,“新能源使中国有了彎道超車的機會。”
この部分の英語は
“It's different from traditional energy, which is dominated by Western countries,” said Li Tao, the technical director at JA Solar, the Chinese supplier of Sungrow's panels. “China has an opportunity to surpass Western countries in new energy.”
と訳されているが、「corner overtaking」のニュアンスが出ておらず、そもそもそれに込められた国家戦略が理解されていないように感じられる。
◆◆ 「彎道超車」の発想に込められた中国の大戦略
では中国の新しい発展戦略としての「彎道超車」はどういう意味なのか。
自分はカーレースをあまり見ないので、競馬に例えて説明したい。馬券は買わないが、テレビ中継を見るのが好きなので、競馬の最終カーブの追い越し作戦に似ているとのイメージが浮かぶ。遅れた馬が直線コースでは先行する馬を追い抜くことは難しい。だが最終カーブの前ではどの騎手も有利なポジションを取るための駆け引きをし、コーナーをうまく回りきるためにややスピードを落とす。それにより、各競走馬は最終的直線コースに入ったときは互いの距離が縮み、一団となりがちで、そこからそれぞれゴールに向けて全力疾走する。すなわち、コーナーを回る際は後進者が先行馬を追い抜く可能性を一番秘めるポイントだ。
中国は今、世界経済、産業技術ないし国際政治がこのような「コーナー」に差し掛かっていると捉え、その「カーブ」をほかの国よりうまく回れば、一気に先頭に立つ可能性が出てくると見ている。中国の専門家は、
<「これまで自動車産業など大半の伝統分野では、中国が先行する先進国を模倣・追随するだけでは先行者に追い抜くどころか、追いつくのも難しい。しかし21世紀10年代に入って、IT(ネット技術)、VR(仮想現実)、AI(人工知能)などの新技術が次々と出現し、巨大な新しい可能性が現れた。これらの新技術の前ではどこの国もほぼ同じスタートラインに立っている。この経済・産業・技術の「カーブ」を掴み、新技術を伝統産業に活用し、新天地を切り開くことができれば、中国は今後10年、20年の間、先進諸国を一気に抜き去ることができる。習近平指導部はこの点を十分に認識しており、『一党集中』体制の強みを生かし、『彎道超車』戦略を力強く推進しているのである」>
と個人的に解説してくれた。
このような戦略的発想は日本ではほとんど理解されていない。中国が電気自動車(EV)の発展戦略を発表すると、「日本企業を苛めるため」と解説された。たとえば、
① 【高論卓説】欧中主導のEVシフトに“抵抗”必要 日本メーカーは「二面戦略」で挑め 「SankeiBiz」サイト2017年10月20日
http://www.sankeibiz.jp/business/news/171020/bsa1710200500002-n1.htm
この中で
<「中国政府高官は内燃機関の販売を禁止する政策立案に着手していることをほのめかすなど、一気にNEV普及を加速化させ、内燃機関中心の日本の自動車産業の国際競争力を封じ込む意気込みにある」>
と述べている。朝日新聞でも同様に、中国のEV促進政策は日本を狙い撃ちしたものと解説した記事を読んだことがある。
中国が、自動車産業などすべての分野においていつまでも日本の後塵を拝したくないと考えているのは当たり前だ。日本も他国がリードする技術や産業に対して同じ考えを持つだろう。ただ、今回は「日本を狙い撃ちにしたもの」との理解は自意識過剰ではないか、少なくとも視野が狭いと言わざるを得ない。
中国は「中国製造2025」の発展戦略を制定しており、「製造大国」(生産量では世界をリード)のレベルをあと10年で「製造強国」(技術面でも世界をリード)のレベルに押し上げようとの目標を掲げている。その実施の方針(の一つ)はまさに、新技術を積極的に取り入れ、それを伝統技術と結合することにより、新しい発展の方向を切り開く、というものだ。その発想が中国の中で広く理解され、取り入れられるように、分かりやすく使われ始めた表現が「彎道超車」である。
今回の党大会での習近平報告は「革新型国家の建設を加速する」の一節において、「突出關鍵共性技術、前沿引領技術、現代工程技術、顛覆性技術創新」との「彎道超車」の方針を明示している。この中の「顛覆性技術創新」は「革命的なイノベーション」と訳されているが、「これまでの産業技術を転覆的に乗り越え、斬新な技術を創出する」と直訳的に説明した方が分かりやすいのかもしれない。
それについて中国の代表的専門家たちは次にように解説している。
②“顛覆性技術”寫入十九大報告 有助彎道超車 『科技日報』2017年10月22日
http://finance.jrj.com.cn/2017/10/23055923268122.shtml
要旨:
1、中国の政府と企業は近年、「顛覆性技術創新」を高度に重視ており、「国家の競争力と国際的地位にかかわる重要課題と位置付けている。
2、伝統的な技術開発モデルそのものが限界に来ており、「顛覆性技術創新」は「科学技術の強国」を作り上げる「利器」(必殺技)となる。
③ 找到適合的途徑 初創企業迎來“彎道超車”新機遇 『環球網』サイト2017年10月25日
http://tech.huanqiu.com/original/2017-10/11336780.html
要旨:
1、今、「IoT」時代からさらにAIにシフトする新しい変革の波が押し寄せている。
2、中国政府は、AI、ビッグデータ、IoT などを目指す企業に多くの優遇政策を打ち出している。
3、中国は国から企業、個人に至るまで、あらゆるレベルで「彎道超車」の「千年一遇」のチャンスに取り組むべきだと考えている。
中国政府の経済戦略ブレーンの一人林毅夫氏もこの戦略を提唱している。
④ 観察者2017年11月18日林毅夫:中国的彎道超車型産業可以直接和發達国家競爭
http://www.guancha.cn/Industry/2017_11_18_435438.shtml
林毅夫氏は「彎道超車」を図る可能性の高い産業分野を列挙し、「彎道超車型の産業におけるイノベーション」において「中国は比較優位性を持っている」との自信も示している。
世界の新技術を活用して一気に世界の最先端に躍り出よ、との発想は明治維新時代の日本が連想される。ところが、前出の「高論卓説」は、中国や欧米が取り組むEVに惑わされるなと説く。
<現在の欧州・中国主導の電動化戦略に安易に迎合することは、欧州・中国の産業政策の思うつぼだろう。戦略を持ったEV化への対処を見据える重要性が高まっていると考える。将来どこかのタイミングで来る電動化に向けた構造対応は重要だが、EV化そのものを遅らせる内燃機関を磨き込む努力も忘れてはならない。
内燃機関の競争力を高めれば、ハイブリッド化でさらにその競争力は上がる。結果としてEVシフトへの抵抗力となる。>
この言説はどこか清朝末期の中国の「中体西用論」に似ているように感じられる。当時の中国も、中国自身のものは素晴らしく、あくまでも自国のものを根幹とし、西洋の技術をテクニカルに取り入れればいい(中学為体、西学為用)と考えていた。今の日本は厳しく言えば、過去の栄光に浸り、厳しい規制や業界間の壁に阻まれて身動きが難しく、その上、中国などに対するかつての上から目線を捨てきれていない。バブル崩壊後、全社会的に意欲もあまり湧かない。そこで黄文雄、石平らの「中国崩壊論」の本がよく売れる。それを読んで真実への追求を忘れ、しばし自己満足する。このような社会現象は起きていないのだろうか。
もっとも日本でも、このままではならじと警鐘を鳴らす学者、研究者も増えている。ある学会では中国の「新・深センモデル」に関するすばらしい研究発表を聞いた。EVの世界的潮流に日本も積極的に対処せよと以下のような提言も出ている。
⑤ ニューズウィーク日本版2017年11月1日 丸川知雄「中国は電気自動車(EV)に舵を切った。日本の戦略は?」
https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2017/11/ev-1.php
問題はこのような認識を持つ人は日本ではやはり少数であり、社会全体の雰囲気はなお現実と大きくかけ離れている。それで「突如」現れたかのように中国の「無現金ネット支払い」「シェア自転車」などに驚くが、その背後にある中国社会、経済、国民意識の構造的変化は依然知らないし、知ろうともしない。このままでいけば、本当に「井の中の蛙」になってしまうのではと我ながら懸念する。
◆◆ 国家主導の未来開拓戦略
中国の新しい発展戦略を示す新概念は実はこれだけではない。少なくとも以下の二つに関しても理解を深める必要があろう。
一つは胡鞍鋼氏が言う「トンネル効果」である。
① 從十九大到2050中国,且聽胡鞍鋼如何向世界説 『光明網』サイト2017年12月29日
http://share.gmw.cn/economy/2017-12/29/content_27225269.htm?from=groupmessage&isappinstalled=0
産業・技術の突破的、転覆的前進はそんなに簡単ではない。何かに賭けて全力でやっても結果が必ず出るとの保証もない。また一企業、一個人が「大革命」を起こすには無力すぎる。それに関して中国は「体制集中」の強みを生かし、国の主導で新技術、新産業に通ずる道の途中に立ちはだかる険しい山脈に対し何本かのトンネルを掘る、との戦略を中国政府が取っていることを著名な経済学者胡鞍鋼氏が解説した。
日本は1960年代、欧米がリードした産業・技術分野において「通産省による窓口指導」で躍進を実現したが、今の中国は、高い山の向こうにまだ誰も見えていない新産業、新技術に対して、国主導のベンチャー企業ならぬベンチャー産業・技術に取り組み、同時に何本ものトンネルを掘っている。そのうち一本、二本でも未来につながれば、産業ないし国力の競争で一段と「転覆的」なことが起こる。
もう一つのコンセプトは「騰籠換鳥」である。
② 騰籠換鳥”的廣東 FT中文サイト2014年2月7日
http://www.ftchinese.com/story/001054718
③ 廣東6年“騰籠換鳥”記 「鳳凰財經」サイト2014年3月7日
http://finance.ifeng.com/a/20140307/11825552_0.shtml
広東は1970年代末に伝統的な労働集約型産業を誘致して経済発展に成功したが、早くも2005年頃、競争力の低下などの限界を感じた。そこで汪洋氏の主導で2008年以降、競争力がない、もしくは競争力の低下が見えている企業ないしそれに勤めるブルーカラーをいろんな方法で追い出し、それによって明け渡された土地に新技術産業と新人材を優遇措置で導入するとの「大入れ替え」に着手した。その戦略を形容する言葉が「騰籠換鳥」だ。それを先駆的に、大規模に推進する過程で一時期、東莞などで企業倒産と失業者噴出との激震が走り、日本ではそれを「広東の凋落」と断じる報道、記事が多かった。しかしいつの間にか、今の広東、特に深センとその周辺は強力な「騰籠換鳥」政策により、もはやかつてとは完全に様変わりしている。ちなみに、今、広東省一地域のGDPはロシア一国を上回った。
この発想はその後、全国各地で取り入れられるようになった。上海の友人に聞くと、ここ数年、上海はずっとこれを推進しており、斬新な上海は間もなく現れると約3年前に自信満々に話してくれた。2017年年末、「2018年の上海はみんなをびっくりさせる」との記事が微信を通じて伝わってきた。上海出身者の自分でもその変貌の速さ、幅広さに驚いている。以下の記事をご参照。
④ 大局已定!2018年上海要大變了! 微信2017年12月30日
https://mp.weixin.qq.com/s/1StQkZUX44uiGU4rK9ieyQ
北京は「騰籠換鳥」戦略の実施に一歩立ち遅れた。そのため、17年9月、その実施の号令が北京市の党機関紙『北京日報』に掲載された。
⑤ 京平:在騰籠換鳥中華麗轉身 『北京日報』2017年9月15日
http://www.71.cn/2017/0925/966495.shtml
だが、19回党大会後、その実施を急ぎすぎた結果、住民から強い反発を呼び、今、頓挫している様相だ。ただ、一時的な調整があっても、「騰籠換鳥」戦略は北京を含め、各地で更に実施されていくのは間違いない。人権と効率、この矛盾を抱えながら中国は今後も突っ走る。
◆◆ 欧米は中国経済の現状をわりに高く評価
このような中国の日進月歩に対して、欧米では客観的に評価しようとの機運が出ている。「フィナンシャル・タイムズ」紙の記事を中心にいくつか紹介する。
⑥ 為什麽會誕生中国浪潮? FT中文サイト2017年10月10日
http://www.ftchinese.com/interactive/10332
未来学者ジョン・ネイスビッツ(John Naisbitt)は、中国は新しいラウンドの産業の波でリードしていると指摘。どうしてそうなったのかを分析した記事。
⑦ 中国收入不平等程度下降 FT中文サイト2017年12月5日
http://www.ftchinese.com/story/001075323
2008年以降、中国の所得格差は先進国に比べ依然深刻だが、確実に縮小しているとの分析。
⑧IMF:中国“僵屍企業”債務占比不大 FT中文サイト2017年12月5日
http://www.ftchinese.com/story/001075343
IMFのレポートによると、中国の産業に占める「ゾンビ企業」の債務の比率は5%~9%、生産過剰の企業も16%しかないとのこと。
⑨ 英智庫:中国經濟 2030年取代美成世界第一 「世界新聞網」サイト2017年12月27日
http://www.worldjournal.com/5348371/article-%E8%8B%B1%E6%99%BA%E5%BA%AB%EF%BC%9A%E4%B8%AD%E5%9C%8B%E7%B6%93%E6%BF%9F-2030%E5%B9%B4%E5%8F%96%E4%BB%A3%E7%BE%8E%E6%88%90%E4%B8%96%E7%95%8C%E7%AC%AC%E4%B8%80/?ref=%E8%A6%81%E8%81%9E_%E6%96%B0%E8%81%9E%E7%B8%BD%E8%A6%BD&utm_source=BenchmarkEmail&utm_campaign=Dec_27_2017_Email&utm_medium=email
イギリス民間調査機関の経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)が去年12月末に公表したリポートは、中国の経済規模は2030年までドルベースでも米国を超えて世界一になるとの見通しを発表した(IMFによれば、購買力平価の計算方式では、2014年、中国の経済規模はすでに米国を超過)。
⑩ 德媒呼籲學習中国模式 世行行長點贊中国 「多維新聞網」サイト2017年10月13日
http://economics.dwnews.com/news/2017-10-13/60017148.html
ドイツ専門誌のHPに、「中国モデル」をよく研究し、学ぼうと指摘した記事が掲載。世銀行長も、「中国は8億人の貧困問題を解決し、これは人類史上の最大の成功の一つだ」とし、低所得国だけでなく、中所得国もその経験を参考すべきだと語った。
2018年はついに幕を開けた。友人からいただいた葉書に、
<「日本が失い中国が堅持しているものを学ぶことが肝要である。それは、VITALITY(元気さ)、SPEED(意思決定の速さ)、FLEXIBILITY(融通性)、WOMEN(女性の活躍)、STRATEGY(戦略思考)」>
と書かれている。耳が痛いかもしれないが、当を得た指摘だ。自分も長年日本に在住しており、毎日のように、外国人の口を借りて自分をべた褒めするテレビ番組を見て陶酔しながら世界に置いてきぼりにされていく日本の未来の姿を想像したくない。もっと相互理解・相互学習し、日本自身も中国にもっと夢を与えるような国にならなければと切に願う。
これを自分から皆様に差し上げる新年のご挨拶とさせていただきます。
(東洋学園大学教授)
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