【視点】

「当面」はないだろ!! JR東日本社長

山口 道宏

 大きな声でいえないが筆者は60年来のサユリストだ。その吉永小百合が宣伝するのだから早速入会した。JR東日本の50歳からの「大人の休日倶楽部」だ。旅行好きのシニアにとって好都合の企画と飛びついた。JR東日本・JR北海道線の切符が30%割引 (男性65歳以上 女性60歳以上 乗車券・特急券、片道100km以上。通称「ジパング」)。 年会費4.364円だから、さしずめ損はないだろうと筆者は綻んだ。
 
 ところがだ。入会も「窓口」で親切な対応で済ませ、いざ利用しようとするその日、都内のターミナル駅の同所に行くと「窓口」は外国人専門といい「事前に予約しましたか」と腕章をつけたアルバイト駅員からストップが。どうやらJRの「窓口」に異変が起きているらしい、と感じていた。
 
 テレビでJR東日本の社長が謝罪している。
 そうだったか!! 「みどりの窓口」が削減中、と知った。社長はその計画に対する利用者からの猛反発に抗した格好だ。
 新幹線が敦賀まで延伸したことで話題の一方で、大失策だった。
 駅の景色ともなっていた「みどりの窓口」が消えていた。となれば、残る「みどり」を探し求めて時間とお金をかけてたどり着き、ようやく相談してのチケット購入だ。困惑した筆者のケースでも「倶楽部」の特典(前記)など、もはや感じられないことになるか。
 身も蓋もない。せっかく吉永小百合を使って旅行キャンペーンの一方でシニア向きの「みどりの窓口」を廃止するという計画は、明らかに整合性が取れていない。
 
 今回、社長は「方針を凍結し、当面は数を維持する」という「お詫び」だ。
 JRは「2025年までの7割削減の方針」といってきた。すでに440から209ケ所まで減らした。3年前には440ケ所の「みどり」があったが、それが戻るわけではない。案の定、「定期券が買えない」と長蛇の列がうまれ、「(みどりの窓口でないと)詳しい相談できないから」も並び、さらに訪日外国人がわんやと立往生している。
 もしやインバウンドの客対応に追われ日本人客は後回しになるのか。障害者の外出支援に車椅子の客などに適切な現場駅員の対応は、世界に誇れる日常だ。つまり、いまJRはバリアフリー配慮を進めるかたわらで相談窓口の切り捨てだ。誰もが思う。単に対面の「窓口」を増やせばいいだけのことだ、と。
 
 「みどり」は切符の色で1965年から開始という。
 指定券発売が台帳からオンライン発券に転換する。前年には東海道新幹線が開通。コンピュータによる管理システムが開発され、その下で指定券購入が可能となった。
 これぞ端末が置かれた対面の窓口だ。
 「『みどり』には安心や癒しなどを連想される効果がある」とJRの先達はいった。いまは利用者不在の無機質な合理化が先行し、「人手がない」を理由に対面サービスを嫌うのか。 
 ひとに優しいJRであってほしい。なにより吉永小百合を泣かせてはいけない。
                          (2024.5.14記)
 
 ジャーナリスト 元星槎大学教授

(2024.5.20)
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