■ 「日本国憲法公布記念メダルの発見」          木村 寛

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  ここ10年くらい、大阪四天王寺の境内で毎月21日に開かれるガラクタ市
に通っている。二年ほど前、ジャンクものの箱(一個300円)の中にスイス
製のいたんだ手巻懐中時計(快調に動く)を見つけたので、自分で5000円
の値をつけて買って領収書をもらい(これは若い店主への教育)、加藤さんの
総評時代の知人、小島健司先生にお譲りして喜ばれた。この時計には空自幹候
第34期25周年記念とあり、私の目をひいたからである。小島先生は軽井沢
在住、懐中時計のコレクターで、時計に関する本も趣味で出版されていて、
『ポケットウオッチ物語』グリーンアロー社は最近再版が出た。

 さて前置きが長くなったが、数箇月前、なにげなくある店のメダル類を見て
いたら、赤っぽい銅色の一つの見慣れないメダルが目にとまった(直径33m
m)。値段を聞くと1000円であった。表には2/3くらいの周囲の上側に
日本国憲法公布記念、その中心に太陽(日の丸)があり、その円から八方向に
各三本の細い線が放射していて、その円よりも大きく一羽の鳩が両羽根をひろ
げて左向き、斜め下向きで飛んでいて、左羽根の下に小さな字で1946、更
にそれより小さな字で造幣局製と入っていた。裏には、中心に国会議事堂の屋
根の高い中心部分が小円で囲まれ、四分割された周囲には、右上に麦の穂(農
業)、右下に歯車とハンマー、つるまきばね?(機械工業)、左上にパレット
と絵の具、絵筆(文化)、左下に魚二匹と波模様(漁業)が描かれている。
  日本国憲法公布は1946年11月3日なので、その周辺を図書館でしらべ
てみたが、このメダルに関する記述や写真はなかったので、デザイナーが誰か
とか、一切不明である。どさくさの中で発行されたものであってみれば、これ
を入手した人たちがどれほど居たか(発行枚数?)もわからない。

 ただ新しい日本国憲法公布にむけて、その出発を祝う気持ちが込められたも
のであることだけは確かだと思う。この記念メダルに対してケチをつける気は
毛頭ないのだが、ただそのデザインに関しては、表の鳩がなぜ斜め下向きなん
だろうかとか、農業の象徴がなぜ麦であって米でないのだろうといった単純な
疑問を禁じえない。西村徹先生に話したら、当時米はめったに手に入らなかっ
たので、稲穂ではあまりに白々しいと言われた。煙草ピースのオリーブの若葉
をくわえた鳩はまっさかさまである(創世記8-11)。
  このメダルに関して、その周辺事情などご存じの方がおられたら、ぜひ「こ
だま欄」にでも投稿して教えていただきたいと思う。私は石膏型を用いて青銅
で何個か鋳造して複製を作り、オニキス台にはりつけて文鎮を作ろうかと考え
ている。

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