【沖縄の地鳴り】

「辺野古」県民投票、投票率について

平良 知二

 「辺野古新基地」建設を問う沖縄の県民投票は、基地建設埋め立てに「反対」する票が71.7%を占め、改めて新基地に対する県民の意思が明らかになった。「辺野古」反対を主張して当選した玉城デニー氏の県知事選(昨年10月)に続く全県規模での意思表示である。「辺野古新基地」建設の正当性は失われたと言っていい。

 だが、埋め立ての土砂投入は続いている。安倍政権は投票前から「結果にかかわらず工事は進める」との考えであった。開票後、防衛大臣が堂々と証言した。「反対」票が多くなることは予想していたのだろう。でもその結果に動かされない、地域の意思がどうであれ決めたものは押し通す、そういう強気一点張りの姿勢である。
 安倍政権のこの強権的で頑なな態度は、森友・加計問題、昨今の勤労統計問題でも前面化しているが、「辺野古」問題では異常といえる。沖縄の主要選挙で「辺野古」反対派が何度となく勝利し、今回は71.7%が反対票である。さすがにこのところ「辺野古が唯一」「県民に寄り添う」という言葉は発しなくなったようである(替わりに「普天間の危険性除去」がより前面に)が、工事は強行されている。県民投票などなかったごときだ。

 投票結果を受け止めるなら、少なくとも工事はいったん中止すべきだろう。それが「県民に寄り添う」態度である。

 だが一方、政権の頑なさが「しょうがない」「やむを得ない」という諦めの気持ちを県民に植え付けた側面もある。今回の投票率にその一端が表われたように思われる。投票率52.48%は過去の全県的な選挙等では最も低い。
 自民党を中心とした県議会と主要な市議会の保守系会派が、連携するような形で県民投票の壁となり、現状容認ムードを広げる役を担った結果の投票率、と言えるだろう。準備期間が短かったなど投票率低下の要因はほかにもあるだろうが、各議会での抵抗、それを受けた主な市長の抵抗が地域の投票行動に影響を与えたことは否めない。
 安倍一強政権への追従、あるいは政権からの“尻たたき”があったかとも思われる。

 県議会自民党は、県民投票の意義や設問項目をめぐって県民投票条例に反対し、県民投票に対する壁を作ってしまった(のち、修正案には一部議員が賛成)。この動きが各市町村議会にも波及した。結果、地域住民に「今さら県民投票でもあるまい」という流れを醸成してしまったのだ。
 投票率は昨年の知事選(63.24%)より10ポイントも落ちている。

 県民投票の「投票事務費」を議会が否決したのは沖縄、うるま、宜野湾、宮古島、石垣の5市。それぞれの市長も議会決定に従って「投票を実施しない」と表明した。県内11市のうち5市が参加しないとなると、人口比率から見ても投票の意義が失われると危惧されたが、県議会が設問を付加するなど条例を修正し、それを受けて5市の市長らも投票実施を決め、何とか全県実施となった。綱渡りではあった。
 県民投票の「投票事務費」は県が負担する。市町村の経費出費はほとんどない。にもかかわらず、保守系多数の5市の議会はその「投票事務費」を否決した。政治的判断である。また市長は、たとえ議会が否決しても自己判断で「投票事務費」を執行できる。にもかかわらず、執行しない判断をした(のち執行判断に変わる)。
 ともに通常ありえない事態であった。

 5市の投票率は以上の経緯もあって低かった。県内11市中、投票率の高いほうから宜野湾市がやっと6位(51.81%)、あとの4市はそろって下位に並んだ。特に目立ったのが宮古島市の38.48%、石垣市の44.63%。この2市は全41市町村中、下から1、2位であった。また、那覇に次ぐ県内2位の人口を擁する沖縄市も49.88%と50%を切った。
 宮古島市と石垣市は米軍基地がないため「辺野古」への関心の低さがあるとみられるが、自衛隊の配備問題で議会と市長が強気の政策を進めている地域である。保守的な空気が県民投票に影響したと思われる。それにしても宮古島市の低さは尋常ではない。大型選挙では、全県を通じて過去も含めて最低値だと思う。

 ただ、抵抗に遭いながらも投票率が50%を超えたことを評価する声は強い。短期間の取り組みでもあった。若い人たちが運動の先頭に立った。その結果の「反対」71.7%である。「辺野古」に対する県民の意思はやはり固い。

 (元沖縄タイムス記者)

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