【本を読む】

『流砂』13号

三上 治


 ひと昔前なら小さな書店に所せましとばかりに積まれていたミニコミ雑誌があった。今はあまり見かけなくなってきている。『流砂』はそんな雑誌である。そのようにイメージしていただければいいのだろうと思う、この雑誌は60年世代(1960年世代)の遺言の場として栗本慎一郎によって提起された。ただ、栗本の体調もあって、共同編集者の三上治が主に編集・発行を担当し現在に至っている。今では13号まで号を重ねている。

 このての雑誌を出していくには編集者や書き手の間に、共通の思想的な主題やテーマがある。それが普通であると考えられてきた。しかし、それは、困難である。1960年代以降は共通の思想的な主題とかテーマは解体し、拡散して行く一方だからである。ここで、僕が主題とかテーマとか呼ぶものは、革命でも社会主義でも、自由でもいいわけであるが、それは解体し、拡散しているのである。これは書き手の立場に立てば、何かの主題やテーマがあってということが困難であり、個々人の内発的な意識によって主題やテーマにたどりつく、それを発見するということになる。そうなればいいということである。編集者の立場にたてば、編集する基本的立場を持てないということである。それは編集者が書き手にテーマのようなものを提示するということの難しさになる。これらは今という時代のなかで、あるいは現在のなかで、世界を認識し、何をなすのかが極めて困難であることの反映である。自分の意識や言葉を内観してみれば誰もわかることだ。

 この雑誌はこうした状況の中で、一号毎にこうした時代の中で書くとは何か、僕らの言葉は状況(世界)とクロスすること(相渉ること)はできているかを自問し続けてきた。書くということも闘いなら、現在の闘いということになろうか。勝手な口上など無視して読んでいただくのがいいのだが、13号について少し説明をさせていただく。

 13号は冒頭で栗本慎一郎のトランプ問題についてのインタビユーがある。そして、宮崎学、白井聰、北岡和義、桂木行人等のトランプ論がある。これは1月に流砂編集部で主催した講演会の記録でもある。トランプについてはいろいろの評価がある今、是非、一読してもらいたい。
 続くは戦後史の論及と憲法問題への言及がある。三上治「非戦と自由のために、憲法その予備的考察」、橋本克彦「水飲み鳥は「国家」と「勅語」の上を飛ぶ」などがある。憲法改正が政治日程になりつつある今、是非読んで欲しいものだ。294頁で定価は1,200円。市販されている分は少数なので直接購読を。

<連絡先>『流砂』編集委員会
 〒154-0017 東京都世田谷区世田谷1-4-14-305 味岡方
 電話:03-3426-4026
 携帯:090-3908-7330(三上)

 購読料は送料込みで1,200円 10冊まとめ買いの場合は1万円
 購読料及びカンパの振込先口座
  三井住友銀行 世田谷支店(店番788)
  口座番号 普通 5435458
  口座名義 味岡修

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧