【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(41)

コロナ禍前の日本語学校の若者の一部は…②

坪野 和子

 寒中お見舞い申し上げます。なかなかコロナがしぶといですね。誰一人として油断できない状況ですが、皆さま安全でらっしゃることを願います。
 昨年、バングラデシュに一時帰国していた高校の生徒が、2度のタイミングを逸して日本に戻れなくなっています。海外の学校と違って、また日本の義務教育と違って出席日数重視の日本の高校ですし、5月、6月だと中間試験も受けられない可能性もあります。また同じ学年をやらなくてはなりませんから「3月中に戻ってこないともう1回3年生をやらなければなりませんよ」と言いました。今回は高校生ではなく、前回に続いてコロナ禍前の日本語学校の生徒たち。

◆ 1.ウワサを信じちゃイケナイよ「2020年オリンピックの年」

 前回も述べましたが、ひとりのフェイク書類が見つかると芋づる式に全員入管の審査で落とされます。2019年はそれが異常に多かったようです。推測ですが、彼らの動きを考えると、そのビザブローカーの学校や本人をよく思っていない人が、不正を行っているということを日本の入管や法務省などに通報している可能性があります。

 パキスタンとバングラデシュでは、そんな現地学校で落とされた生徒たちがネットでウワサをたてました。「2020年オリンピックの年にたくさん外国人を入れたいから今年はわざと沢山落とした。来年はチャンスだ」
 同じ文のチェーンメールではなく色々な書き方で、何回も何回もこの言葉が見受けられました。大勢落ちているから、自分が落ちたことを公表しても恥ずかしいと思わないんでしょう。

 また、全員落ちた学校の生徒から、メッセージで同じことを私に送ってくるので、「ひとりフェイクが見つかると全員落としているそうですよ」「そんな~!ボクはきちんとした書類と合格証明書を提出したのに」…本当かしら?
 そして、その数日後、友達が「ひとりフェイクが見つかると全員落としているんだよ。ひとり見つかったら、あとは全員の書類がゴミ箱に入るんだよ、知っている?」あああ! 私の話しに尾ひれがついたみたい…。ゴミ箱って言った覚えはないんだけどね。

◆ 2.失礼な電話

  2018年4月ごろのことです。当時のパキスタン人生徒の知り合いがいて、生徒から紹介され、その知り合いの人の弟が日本の日本語学校に入りたいとのことでした。その弟とメッセージのやり取りをしていました。『みんなの日本語』(もっともよく使われている日本語教科書)の最初のほうのあいさつを練習したり、なぜか力自慢の動画を送ってきたり、普通のネット友達だったと思っていました。ある日、突然、なぞのインタビュー電話をしてきました。

「こんにちは」
「名前は?」
「何歳ですか?」
「たんじょうびはいつですか?」
「お国はどこですか?」
「家族は何人ですか?」
「趣味はなんですか?」
「何年、学校で勉強しましたか?」

 プツン。電話が切れました。
 一応、その通りに返事しました。なんだ?これ? 失礼な電話ね。と思ってから、「あ!日本語学校の skype 面接の練習だったのね!」とわかりました。そうしたら次々と芋づる式みたいに、この子の友達から同じ内容の電話がかかってきました。私を練習台として使っているんだ!

 もしかしたら、これは現地の学校の宿題かもしれません。「誰か日本人を(何人か)見つけて面接の練習をさせてもらいなさい」とでも言ったのではないかと思います。全員シアルコート(パキスタン・パンジャーブ州の地名・公式競技用のサッカーボールの産地として有名)からの電話でしたから。
 人をタダで使おうとするパキスタン人らしいやりかたでもありました。英語でいいから事情を説明してほしいし、「ありがとうございました」も言ってほしかった。本当に失礼です。

 さて、この子たちですが、無事に仙台の日本語学校に入学できました。時々、思い出したように連絡がきますが、日本語でタイピングして送ってくる子が少ないんです。ローマ字打ちがほとんどで、いかに日本に来る前にまともに勉強していないかがわかります。ひらがな・カタカナ・簡単な漢字・あいさつ・面接の練習…その程度だろうと思います。150時間も勉強していないと思います。
 日本の日本語学校の規定は現地150時間学習もしくは日本語能力試験N5合格です。もちろん授業時間が多ければいいとは言えません。私の直接指導のITインド人生徒は、まるっきりゼロから120時間くらい授業を受けて、日本語能力試験N4合格確実なレベルに達しましたから。パキスタンとインドの教育の違いもわかりました。

◆ 3.パキスタン プライベートスクール日本語学校コロナで撤退

 まず、ビザブローカーのインチキ学校は、不正がバレて生徒が入管の審査で続々と落ちました。儲からないのでハラル食材を日本ではじめようとしたら、コロナで物資が入らないので、その後どうしたのか消息がわかりません。

 次に、国際交流基金に留学したことがある先生は、オンラインでも教えていましたが、コロナで生徒が集まらない。日本に来られないのでは日本語を勉強しても意味がないからです。この先生、お友達です。
 日本に留学したのが1990年前後のため、文法の教えかたも古いし、生徒も高いレベルを望んでいるわけではないので、動画を何回も再生したような授業でした。ご自身もマンネリと「儲からない」…ということで日本語学校とパキスタンから撤退しました。「カナダに帰る」と言って。カナダとの二重国籍であることを、この先生の学校にお子さんを通わせていた友達が教えてくださいました。

 そして私からオンラインで勉強していた生徒はコロナで残業が増え、私と勉強できなくなったのでアメリカの定額制通信教育に切り替えました。12月の日本語能力試験は、コロナのためカラチ会場は中止となり、受験することができませんでした。彼のようなパターンが多くなったのではないかと思います。7月の試験が実施されることになったら、リスニングテストだけみてあげたいと思います。

 (東京ベイインターナショナルスクール顧問)

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