■【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】(37)

サングルポットとカッドゥルパイの冒険㉜

吉川 佐知子

 “今度こそ死んでしまうよ”鷲さんが大きな石をくわえて立ち上がった時、カッドゥルパイが叫びます。
 石を投げ捨てるとバンクシャーがたくさん乗ったもう一隻の船の上に落ちました。なんとカッドゥルパイの投石は、今度はバンクシャーの頭に当たりました。彼が倒れる時、とかげさんの首を絞めつけていた手が緩んでしまいます。そして二人とも海へ落ちて行きますが、鷲さんがさっと降りてとかげさんを救い上げます。
 ドボン! バンクシャーマンは海の中へどんどん沈んで行きました。
 バンクシャーマンのお話はもう何もありません。

 “サングルポット! サングルポット!”カッドゥルパイは叫びながら鷲さんから飛び降りて彼のそばへ駆け寄ります。でもサングルポットはじっと横になっているだけです。
 それでみんなで彼をかわせみ夫人が用意したベッドにそっと運びました。みんなはその周りに座ります。とかげさんは静かに喘いでいて傷跡があります。鵜さんは海水でびしょ濡れです。みんな―鷲さんもかわせみ夫人も―彼が眼を開けますようにと見守っています―すると目を開けたのです!
 “カッドゥルパイ!”そう叫んで飛び起きたのです。

 “サングルポット”カッドゥルパイはそう叫んで彼をきつく抱きしめます。
 “バンクシャーマンはどこ?”とサングルポット。
 “死骸だよ”とカッドゥルパイ。
 “よかった”とサングルポットは答えて、また眠り込みます。眠って眠って、それ程彼は疲れ切っていたのです。

 やっと眠りから覚めて皆に話します。ほぐれ花を小さなオベーリアをお世話するために置いてきたこと、カッドゥルパイは啜り泣きます。彼はあの小さな友達をなくすのが耐えられないのです。
 “泣かないで”とサングルポット“彼女は魚族に囲まれてとても幸せにしているし、それにアンやフリーリーがいるでしょう。その内僕らもおりて行って皆に会うことも出来るんだから”

 それでカッドゥルパイは大喜び、鵜さんやかわせみ夫人、鷲さんにさよならをします。
 とかげさんは休んでいましたが、ベッドを作り背中の上にそれを放り投げます。そのようにしてカッドゥルパイのそばにサングルポットを乗せて長い長い旅、彼らの家の方へ向かって遠い遠い道のりを連れて行きます。

 ―それから優しいお母さんやお父さんにまた会えた時小さなナッツ達を抱きしめる素晴らしさ―
 これでサングルポットとカッドゥルパイの二度目のお話を終わります。

 (詩人)

(2022.6.20)
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