【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】

(18)サングルポットとカッドゥルパイの冒険⑬

吉川 佐知子

 “僕をこわがらないで” かれは親切にそう言って ほぐれ花を優しくなでました。それで彼女は涙がいっぱいにあふれでて 蛇婦人が今までにしたこと サングルポットとカッドゥルパイを捕まえようとしてること 可哀そうなとかげさんを殺そうとしていることなど話しました。それを聞いて蛙さんは とても腹を立てます。

 “ここから出るのは今がチャンスだ。地下牢のドアが開けっ放しになっているから さあ早く 川へ出る道を僕は知っているから急いで あなたを連れて行くから” そういってほぐれ花を湖に通じる穴へ送り出します。“目をつむって ぼくにつかまって 怖がらないで”と言って蛙さんは水に飛び込みます。水中を泳いで飛び込み台の下までくると台によじ登って 辺りを見回します。誰もいません。

 “おいで” ほぐれ花の水を払い落しながら “早く!ぐずぐずしないで” そう言って小川の土手を下りて大きな川へ急ぎます。井草の下にボートがおいてあります。それに飛び乗ります。蛙さんはボートを流れの方に押し出し くるくる回ったり 揺れ動いたりしながら流れに沿って行きます。すこしのあいだでも大変でしたが 蛙さんはその小さなボートを静かな水たまりに寄せて ほぐれ花を岸に押し上げました。

 “ここはどこなの?”と聞くと “ガム宿の庭だよ” と蛙さん
 “早くおいで ちょっと遅かったかもしれないけれど” といった時 大きな金切り声がしました。それからまた 大きな悲鳴です。蛙さんはまっ青になりました。ほぐれ花は膝ががくがく震えてうまく走れません。それでも大急ぎで登り庭を横切った時 恐ろしい音が聞こえました。

 “殺されるんだわー” とほぐれ花 “しゃべるな 急げ” と蛙さん 蛙さんがあんまり早くて花からは姿が見えなくなるくらいです。庭の一番高いところに 道に出る小さなドアがありました。二人はそれをあけて外をみました。
 そして恐ろしさで 茫然としました。

 宿の前ではとかげさんのうえにサングルポットとカッドゥルパイが乗っかり とかげさんは後足の方にのけぞりかえっています。そしてその上に蛇婦人のかがやく大きな体です。その頭が彼らに一撃を与えようと持ち上がっています。でもここで驚くべきことが起こります。

 蛇婦人の頭がガム宿の看板を揺らしたので 看板を書いていたナッツ;何が起こったのかとみていたところへ 揺らされて丁度蛇婦人の首につかまり手と足でしっかりときつく締めました。

 (詩人)

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