【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】(23)

サングルポットとカッドゥルパイの冒険⑱

吉川 佐知子

 “おお いい抜け道だ!”とサングルポット “それじゃちょっと食べるものをコックさんからもらって こよう”

 そうしている間に夕暮れが迫り 船は暗闇に包まれます。そして波止場に太い綱でしっかりと結ばれました。
 皆で急いで 穴を抜け出し ウインキーに続いて船のわきの影の中を デッキに沿って そっとでていきます。
 一度は見つかりそうになりました。変な老婦人が自分の荷物を探しに来た時 ウインキーの長い尻尾に躓いて大きな悲鳴を上げました。でも大騒ぎの最中でしたからだれも気付きません。そして彼らは這って船がつながれている綱の上に出ました。

 “さあ 私にみんなつかまって 一度に連れ出すから”とウインキー
 それでみんな無事に地上に降り立ちました。
 “私についておいで できるだけ早く”
 それでみんなウインキーの後を追います。

 長い道のりでした。垣根を超え 道に降り立ち 橋を渡り 庭を抜け 屋根の上を走り
 ついにみんな疲れ果てた頃 周りは明るくなってきます。小鳥のさえずりが聞こえます。
 そこでみんな休んで周りを見回します。広い道に出ていました。両側には大きな家があります。太陽が昇り暖かくなっています。するとナッツの大群が旗を立てて歌いながら道を下っていきます。

 “なんだ あれは?”サングルポットが聞くと
 “お金を作り出す新しいやり方だよ”とウインキー
 “それでは あちらへ行きましょうよ”とほぐれ花
 “私の家は ほんの近くなんだ”と ウインキー

 そして彼らを連れて小道に沿って 小枝で作られた小さな可愛い家に着くと ドアにはノートが貼ってあります。みんな彼を見ていられません。彼は大泣きしています。

 “大丈夫よ”とほぐれ花 “あなたはここにいなさいよ。そしてきれいにお掃除をしてお家の人が帰ってきたら喜ばせてあげなさいよ”
 ウインキーは大喜びで皆をうちの中に入れました。部屋は充分にあります。そしてどこからも外へ出ることができるようになっていて 部屋は草で仕切られています。

 “みんなここにいてよ、自分の家ができるまで”
 “ありがとうウインキー でも私たちは何かお金儲けの仕事を探さなくちゃ”
 “仕事ならいくらでもあるよ”とウインキー

 そしてサングルポットは出かけます。カッドゥルパイも別の道のほうへ ほぐれ花もまた違う道へと出ていきます。
 まず カッドゥルパイがどうしたかを見ていきましょう。
 少し歩いたところへ電車がきて 彼の近くに止まりました。たくさんの人が乗っています。

 “これは その辺を見て歩くのに便利そうだ”彼はそれで飛び乗ります
 車掌がまわって来て“チケット”と言います。
 “チックス(ダニ)なんてついてないよ”とカッドゥルパイ
 “チケット 切符だよ”と車掌
 “そんなの知らないよ”とカッドゥルパイ
 “生意気な事言うな すぐに出ていけ!”

 かわいそうにカッドゥルパイはすぐに降ろされ 道の真ん中に置き去りにされ 電車はがたがたと行ってしまいました。
 道路は急いでいる人達であふれています。
 木の鉛筆(炭のように焦がしたもの)の束を持っている男が通り過ぎる時に 何本か落として行きました。カッドゥルパイはそれを拾いましたが 男は行ってしまいます。カッドゥルパイに素敵なアイディアが浮かびました。

 “そうだ地面にこれで絵を描こう。そしたら人々がそれを見てお金をくれるだろう”
 彼は平らな岩をみつけて それに絵を描きます。たくさんの人々が通るのに誰もお金をくれません。誰もそんな小さな絵に気が付きません。一日中彼はそこに座り込んでいました。
 暑い日でしたから服を脱いでいましたが、いつの間にかその服を誰かが盗んでいったので ありません。日が沈んで寒くなってきます。カッドゥルパイは疲れてお腹が空いて そして寒くなりました。

 “もう帰ろう。誰かがお金を儲けただろう”カッドゥルパイは自分に言い聞かせます。
 しかし さてと見回してもどっちから来たのか覚えていません。彼は慌てました。ああ こっちの道だ。いや あっちの道だ。でもだんだん暗くなります。カッドゥルパイは歩きながら叫びます。

 “サングルポット どこにいるの? ウインキージェルボー! ほぐれ花! オー! オー! オー! 皆どこだー?”
 彼はすっかり動転して泣き叫びます。
 “なんだね どうしたんだ?”とドアの方から聞こえます。カッドゥルパイが立ち止まって見ると 変な大きなナッツが彼をみつめています。

 “どこにいるのかわからなくなったんです。”と泣きじゃくりながらカッドゥルパイ。
 “そうかい そうかい。”と変なナッツ。
 “迷子になった”と哀れなカッドゥルパイ。
 “かわいそうに 中へ入ってどうしたか話してごらん。”と言って震えているカッドゥルパイを暖かい家の中に入れて大きな布で彼を包み、温かいミルクを飲ませてくれました。

 彼は安全で心地よくなった所で彼の事は暫くおいてサングルポットとほぐれ花はどうなったか見てみましょう。

 (詩人)
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