【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】(26)
サングルポットとカッドゥルパイの冒険(21)    高沢英子

 そう、これってほんとの話なんです。実のところサングルポトもほぐれ花も、びしょびしょの食事は、最初はそれほどたくさん食べられなかったんですが、日がたつにつれて、二人とも慣れっこになって、洗わずに食べられるなんて素敵、と考えるようになりました。

 ”誰もここでは洗ったりしないの、アンチョビさん?“
 “そうよ。でもあたしたちは、こすりとったりはするのよ”とアン
“なにをこすりとるの?”
”海藻やら、フジツボとかエボシ貝などよかれらはアンチョビたちの厩舎にいるタツノオトシゴたちに会いに行き、そこにいる美しい赤や黄色のオトシゴたちと遊びました。小さな色とりどりの魚たちが頭上を泳ぎまわり、”
まるでブッシュの中の小鳥たちみたい“とほぐれ花がいい“そうだ、この道を下りて何がいるか見に行こう” “そうね,あら私のフリーリーはどこへいったの?
 “あの子は今夜のダンスパーティの花を取りに行ったアンチョビさんの手伝いに行ったのさ”とサングルポットがいい、かれらのあとをタツノオトシゴたちが跳ねながらついていきました。

 海藻が生い茂り、風が吹き抜ける大きな森のなかの道を通りぬけると、あたりは明るく輝いて、珊瑚のあいだに素敵な花々が咲き誇っていました。タツノオトシゴたちはアカシアの木の間にナマズを見つけて大喜びです。“まるでポッサムみたいだ!”とサングルポットは叫びました“おいで!ポスちゃん、ポス、ポス、ポス!

 プス、プス、タツノオトシゴっちは丁寧に言いました。“こちらにいらっしゃい、そして彼の足をさすってごらんなさい”

 ほぐれ花はそれを見て“まあ美しいわ”とそのヒレに触りながら、“アンのところに連れて行きましょうよ”と叫びました。けれどもタツノオトシゴたちはさっさと向こうへ行ってしまいました。
 “なんて残念なこと”とほぐれ花は叫びながら、かれらについていきました。

 急いで行くと、あたりはとてもきちんとしていて、小路のはずれにある背の高い海の風車の足元に、小さい家を見ました。そしてドアのところにとっても年寄りのお魚が座っているのを見ました。タツノオトシゴはかれのところに泳いでいき、なんだか変な名前で呼びかけてかれに会えてとてもうれしそうにしています。年寄りは貝殻や海藻で覆われていました、そしてサングルポットとほぐれ花を見てよたよた近づいてきました。

 “小ちゃな生きた人間たち”この老人は、しめった声で言いました。“ああ、ああ、干されて食べられちまう“
 ”どういうこと?“サングルポットがききました。
 “干されるか食べられるかだ“と年寄りはくり返しました。
 “どうして?”
 “干されて食べられる“老人は、頭を振りながら言いました。
 “だれがぼくらを食べるんだい?”
 “凶暴なジョン・ドリー、食いしんぼうのマトウダイさ”と老人は云いました。
 “けど、かれはぼくらに約束したよ”とサングルポットは始めました
 “ああ、わしは、わしは!残虐なマトウダイ、食い意地のはったマトウダイ”老人は繰り返します。
 “けど、ぼくらは、どうすればいいんだい?”とサングルポットは尋ねました“
 “リトゥルオベーリアを探しな”   
 “いったい何が云いたいんだい?”
 老人は聞こうともしないで頭を振りながら“”
 “リトゥル オベーリア、リトゥル オベーリア”
 ”可哀そうに、みんな、干されて食べられる“とつぶやきつづけました。サングルポットはほぐれ花と顔を見合わせ、ほぐれ花は
 “あたしは、そんなのこわくないわ“といい
 ”心配ないさ、アンはぼくらをそんなひどい目にあわせたりしないよ“とサングルポットも云いました
 “干されるか食べられる“と老人はいいつづけました、
 “行こう!いそいで帰ってフリーりに言いつけよう”とサングルポット。
 そのとき、老人は、不意に恐ろしげに手をあげると、大慌てでナマズのあとを追って小さな家に走り帰ってしまいました。見上げるとトラサメとアンチョビのアンが大きなタツノオトシゴに乗って、小さなタツノオトシゴ2匹を従えてやってくるところでした。
 “おお、あなたたちお馬鹿さんねえ!いなくなった、と思って、どれほど心配したことか”とアンは叫びました。”ほら、マトウダイののジョンからのプレゼントを持って来たわよ“
 サングルポットとほぐれ花は大喜び、不安がまったく消し飛んで、アンとトラサメが連れてきた小さなオトシゴ馬に飛び乗り、アンの家めざして帰ることになりました。タツノオトシゴ馬たちは家に帰りつくと、2人のナッツたちに、かれらがどれほど危ない目にあっていたかしれない、ということを云い聞かせたのでした。

       ※※※※※※※※※※※※※※

 海に落ちたガムナッツ、でも木の実だから大丈夫、溺れ死んだりはしないで、魚たちの世界で楽しく過ごします。
 このころ作者メイ・ギブスは、素敵なパートナーを見つけ友人たちや両親に祝福され、シドニーの海辺に花と生きものに包まれた家を持ちます。彼女は既に40歳を超えていて子供は無かったのですが、献身的な夫に助けられ、生涯絵筆は決して捨てませんでした。ガムナッツの冒険物語もまだまだ続きます。 

(2021.07.20)
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