【メイ・ギブスとガムナッツベイビーの仲間たち】(36)

サングルポットとカッドゥルパイの冒険㉛

吉川 佐知子

 それは一瞬の出来事でした。―ほんの指をパチッと打ち鳴らす間です―あの悪いバンクシャーが笑いを止める前に鵜がこのニュースを知ったのです。彼はクック鳥に告げます。するとすぐ鷲に話し鷲はとかげさんを探し出し、とかげさんがカッドゥルパイに告げました。

 とかげさんは頭を上げて“鷲さん、カッドゥルパイをここまで連れてきて、そしてあの敵を見張っていて。クック鳥さん、誰か怪我した時の為にベッドを作っておいてね。鵜さん、海岸に出ていて海からの情報を教えてね”
 そう云い残してとかげさんは森を抜け出して行きます。
 カッドゥルパイは鷲の背中に飛び乗ります。石のつぶてを背負い手にも投げる石を持っています。まっすぐに素早く鷲は空高く舞い上がります。鵜は水辺に低くかがみ、クック鳥は木の梢です。そしてみんなで鵜の様子を見守ります。

 さて今鵜は立ち上がりそれから石が投げ込まれたように水に沈みます。これは鵜からのサインです。鷲がすーっと降りて来てあの凄い爪で大きな石をつかみます。それから皆で下をのぞき込むと、おそろしい光景が見えました。あの悪者のバンクシャーたちが集まってボートに乗っていて、笑ったり手を叩いたりして崖の上を見上げています。崖の上には一番の悪者のバンクシャーマンがいて、片方の手でかわいそうなサングルポットをつかみもう片方の手には大きな石を持っています。そして足元には深い深い穴があります。

 “さて”とバンクシャーマンが他のバンクシャーマン達に大声で云います。
 “これから彼は落ちていくんだよ。これでおしまいだよ”
 そしてまさに落とそうとした時恐ろしい叫び声と共にとかげさんがバンクシャーマンに飛び掛かります。サングルポットはバンクシャーの手から逃れ崖の端まで転がります。でもそこで芽生えていた草木がサングルポットが崖から落ちるのを止めてくれました。草木はつぶれそうなのを我慢します。ナッツにとても優しいのです。

 それから大変な騒動がおこります。まずとかげさんです。次はバンクシャーマンが上に立ちます。彼等は足で立ち上がり転げまわり、どんどん崖の端まで近付いて行きます。
 鷲は急降下します。どしん、大きな石が落ちます。バンクシャーマンのボートの上です。カッドゥルパイは持っていた石を後のバンクシャーマンめがけて投げつけます。でも彼はとかげさんを抱え込んでいたのです。それでとかげさんをぐっと締め付けたのでとかげさんは息絶えてしまいました。

 (詩人)

(2022.5.20)
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