【コラム】
あなたの近くの外国人(裏話)(27)

ドラマのような小説のようなスリランカ出身者たち

坪野 和子


 過日、所用あって東京入国管理局へ行ってきました。2度目です。いや、今年に入って2度目です。

 昔はチベット人を連れてビザの延長や女性の友達の彼氏の観光ビザ申請(だったかな??)に行くことがありました。30年以上前です。場所は今の品川ではなく、他のもう少し交通の便がいい所にあったと記憶しています。そして昔はとても態度が悪くて、特に女性に対して「あんたね」みたいな言い方をして対応していました。その当時は韓国人とフィリピン人の女性が多く、お水のお仕事だと見た目でも分かりました。
 チベット人の友人の航空券が期限まで取れなかったので、数日間の滞在期間延長の申請をしたかったのですが、パスポートにはローマ字の氏名も書かれていたのに呼び出しの名前は「じおう・きょくちん さん」。一瞬私もわからなかったのですが、3度目で気づきました。「次旺曲珍さん」なんと…漢字を日本語読み! ただでさえチベット語の当て字なので原語から発音が違う上日本語読みするとは、しかも在住者ではなく短期滞在ビザなのに。
 「日本語読みするから日本人の私でもわからなかったんですけど、ローマ字のほうでよんでくださればよかったのに」というと「漢字でそう書いてあったからそのまま読んだんだけどね」

 その時のイメージが抜けなかったので入国管理局って意地悪なんだと決めつけていました。しかし、今年、数年ぶりに行ったら、とても親切で外国語でも対応していました。

◆ 1.人でごった返す入国管理局・帰りの満員バス・親切になっていた

 今年はじめて行ったときは、3月。ちょうど切り替えの時期だったので色々な国のひとたちでいっぱいでした。そして品川から入国管理局までのバスはほとんど外国人でした。芋洗いという言葉が浮かびました。人が多かったのですが、私が日本人なのでどのかたでも対応できるので、並んでいた割にはすんなり用事がすみました。何か手続きをするわけでもなかったし。そして帰りのバスは、係の男性がバス停に整列させていて、いっぱいだと「ここまで」というジェスチャーをして次のバスを待たせていました。

 2回目のときは前回ほど人が多くなかったし、担当のかたがベテランのかたを連れてきてご説明してくださいました。微妙な問題を抱えていると思われる外国のかたがたには個室で訊いているようで、外国人と結婚する日本人とある質問に行った私には廊下ですんなりと終われるように話してくださいました。

◆ 2.周りを見ると…スリランカ人が多い

 今回、入国管理局で見かける外国人は、様々な国ではなく、スリランカ人が目立ちました。4月の爆破テロの影響だとすぐにわかりました。普通に街で見かけたらどこの国か瞬間ではわからないはずですが、ここで待っていたらなぜか容易にわかるのです。難民申請中!
 私の知るところでの現在難民資格で在留しているスリランカ人と、同じような特徴を持っているからです。スリランカは仏教国のイメージが強いのですが、イスラム教徒も多いのです。おそらく政府発表の宗教人口比はウソでしょう。スリランカ国内でしょっちゅう宗教対立がありますし。そして、仏教徒に狙われて殺されそうになったと言っている人が多いのです。難民資格でない人もそういう話をします。自分のこととしてだけでなく、噂レベルから他人の体験談として。中にはリアリティを感じない話もあったりしますが、日本語や英語の問題かもしれないし、チベット人、ウイグル人、ロヒンギャ、天安門事件、難民では入らないけれど避難的に日本に来たインドのカースト差別被害者などから、もっと深刻な状況をいっぱいきいているので私の問題かもしれません。

 スリランカ人の日本在留イスラム教徒が多いことをよく知っているインド人仏教徒の友人は低カーストで「私は難民ではないけど難民と同じくらい迫害されていたから国外脱出のように日本にいる」。彼はすでに日本でインド人相手の食材販売で成功しています。「スリランカ人相手の商売がしたい。彼らを相手にしたハラルショップを出したい」と。彼らしい。弱者だからわかる商売。彼は常に弱者が喜ぶ商売をしています。食いものにするのではなく共存共栄の商売。彼に言わせると、「日本人相手の商売はいったんうまくいけば安定するけれど、自分たちの文化や食生活は国を離れていても忘れられない。」
 彼はスリランカ人のイスラム教徒相手のハラル食材の店を自分の事業拡大として狙っています。

◆ 3.不法滞在と入国管理局にみなされてしまった男性

 現在、スリランカに戻っている男性の話。永住権もはく奪されて帰国。当初、日本に観光ビザで入国、日本で難民ビザを取得しますが、その後、不法就労していました。そして、日本人女性と真剣に恋愛に落ちて結婚しました。ですが、奥さんは外国人との結婚による軋轢と日本人男性の誘惑に勝てず、離婚再婚したそうです。そして出会い系サイトで知り合った別の日本人女性と…日本人からすると…あまりない話ですが…わずか3か月でその女性と再婚したそうです。

 まあ彼はその日本人女性に騙されたと思いますし、彼も日本人女性と結婚しないとビザ資格で困る。彼は山梨在住、奥さんは北海道函館在住。奥さんの居住地である北海道で婚姻届と入国管理局に届けを出したそうです。彼はその女性を食べさせるため、仕事を探しましたが、北海道に職を求めるには日本語が不足していました。ふたたび山梨で仕事を求め、しかし、東京支店で仕事を得たそうです。入国管理局に踏み込まれ、同居していないという理由で偽装結婚とみなされ、拘束され国外退去を命じられました。東京で届けを出せばよかったと言っています。
 現在、再再婚。スリランカ人の奥さんが日本に入国して自分も再入国したいと…残念ながら私が知る関係では無理です。年齢と既婚者。日本語学校も技能研修生も私が紹介できるところはありません。お気の毒ですが。

◆ 4.転職とビザ変更がしたい

 今まで、少し日本語ができるということで、日本で仕事をしてきた男性。ビザ資格は私に言わなかったけれど、明らか難民。電話をもらった当時、彼はタクシー会社の清掃員の仕事をしていました。ものすごくビザ資格を変えたいみたいです。外国人向け職業紹介事業の友人に紹介しましたが、その後どうなったのかわかりません。

◆ 5.日本に来るなら本当の難民でも難民資格は控えるべし

 日本で難民資格を申請するとどういう感じか、数名から聞いた話からまとめます。最初の対応はとても親切なのだと、優しかったよ、と言って喜んでいましたが、仮認定から認定に変わるまで8か月待たなくてはなりません。その間、仕事は出来ません。不法就労しているのが発覚すると拘束されて強制退去となります。
 またホームシックにかかったり、金銭的にもお金は出ていくだけですから、宗教施設から施しを貰ったり、施食を出してもらう生活をしています。またなるべく本国の人に見つからないようにしています。精神的にも金銭的にもとてもキツイです。認定にならなそうな人は日本人と結婚しようと英語ができる人を探します。ならなそうな人の理由を聞くとビミョーです。本人が狙われたのではなく、その場に居合わせて危ない目にあったなど。

 8か月後、無事に認定されても「特定活動」ビザでアルバイトしかできません。スリランカではないのですが、教え子のお父さんは定住者ですが、難民資格のままな上、同じ国の難民資格の女性と再婚しています(教え子の義理のおかあさん)。初婚も教え子の本当のおかあさんも同じ国です。お父さんは子どもを呼び寄せたので生活が大変です。日本語の読み書きができないので帰化できません。難民資格から別の在留資格に変更することは、審査が通ればできないことはないのですが大変です。
 教え子のお父さんの場合、かつては「難民」といえばこの国と日本人が認識する国から来ました。本当に「難民」です。またテロが多い国は、外務省や法務省はほとんどわかっていますが、確認把握されないこともあるようです。スリランカなんかは、これだけムスリムが多いのを隠しているくらいですから。他の国もです。このことはまた後日。

 日本は難民に対して冷たい国、怪しいと収監される国、偽装とみなされると簡単に強制退去させられる国。甘くない。先ほどのインド人の友人のように、日本に在留したいのであれば、難民資格は避けたほうがいいと思います。実質、難民であっても。

 次回は、インドネシアから来た豚を食べる日本人の配偶者たち。

 (高校時間講師)

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