【視点】

ニッポン人の「ビッグデータ」が流出の危機

「マイナ紐づけ」で <国民を売る> のは誰か!!
山口 道宏

「マイナ法」=個人情報だだ漏れ法
 なぜ撤回をしないのか、できないのか!! これだけ不具合がつづき、支持者からも「紐づけなんてやめて」「便利さより怖さを感じる」の声が寄せられるのに。自民、公明、維新、国民民主が賛成した「マイナ改正法」(2023.6.1)。4党は「悪法も法なり」を地で行く覚悟か、政治家の「個人情報」とて例外ではないが。 4党はいま「マイナ法」について何も語らない。「身を切る」どころか、国民の「いのちを切る」から国民は決して忘れない。個人情報だだ漏れの国策をめぐっては、国民のプライバシーの侵害、国民の生命と財産、人権の侵害で、憲法違反の審判が行き着く先か。

「なりすまし」を国が誘導する理由
 「紐づけ」がいけなかった。海外はどうか。とっくに危険性に気づく主要7か国(G7)だった。英、独、伊、仏国などは、そもそも共通番号自体がない。人権の侵害は数字化できず取り返しがつかないからなおのこと恐怖だ。個人情報の管理に厳格なこれら国々は行政分野毎の「セパレートモデル」が一般的。しかし、「フラットモデル」という一つの共通番号に固執する米国では「なりすまし詐欺」で膨大な被害にあっていた。
 我が国政府は「バラバラだった情報に横櫛を通すこと」が導入の目的というが、むしろ前述の主要国は、危険性を認識し早々に導入すらやめている。つまり日本は、後者に倣い周回遅れで強行突破というさまだから「なりすまし」を国が誘導するといったふうだ。

サイバー攻撃と地方交付税
 そうでなくても連日のサイバー攻撃。今夏、我が国政府はNISC(「内閣サイバーセキュリティセンター」)で個人情報を含むデータが外部に漏れていた可能性があると発表。続いて先の米国政府が日本のサイバー対策の稚拙をこう露呈したから尋常ではない。日本の防衛機密情報がハッキングに遭っている、と再三警告している(『ワシントンポスト』2023.8.7)。となれば、お宅に任せると危なかっしいから、こちらでニッポン人全ての個人情報のデータ管理をしましょう、といってもおかしくない??? 
 「マイナ紐づけ」では、国から丸投げされた市町村の現場が哭いている。一方で「マイナを進めれば地方交付税の上乗せがあるから」と、ほくそ笑む地方の首長がいる。ここでも「紐づけ」の効果!!だ。
 「基地」も「原発」の誘致も同じ政府がする手口だが、国に依る地方交付税の精神から、ここでも憲法違反の審判待ちとなるか。

「ビッグデータ」の行方
 さて、そうして得た「ビッグデータ」は、一体どこへ提供か!? 
 思い出されるのが20年前の「郵政民営化」(小泉政権・竹中平蔵郵政民営化担当相)。その背後に日米の生命保険業界、投資会社の存在があった。当時、「民営化」の真相は「(郵政民営化は)郵政米営化」と呼ばれた。我が国の年金資産の運用も同様に報じられている。
 「紐づけ」は芋づる式だ。個人情報を得るには喉から手がでるほど欲する国や組織や会社が存在する。それに国が手を貸す。税金を使ってだからとんでもない。
 今回の「紐づけ」の導入で、国が個人の所得を把握し、個人の身体、既往症、嗜好、思想性、行動パターンまで公然と「覗ける」から、政府は自国民をすっかり愚民化している。
 情報基盤の整備が行政の効率化どころか「紐づけ」は人権が危うい。しわ寄せは拡がり、ただいま「突貫工事」の各地の自治体職員とて、やがて「本人の同意」や「目的・目的外」のこだわりも失してくるは必然だ。
 国は「誰ひとり取り残されない。人に優しいデジタル化」という。

個人情報の流出と「見返り」
 デジタル庁の職員には民間からの出向者もいる(期限付き任用・原則2年)。「兼業」といい、やがて「奉公」があければ元の所属会社に戻る、「みなし公務員」? という身分だ。 情報の守秘義務は在任中のことゆえ、後はケセラセラであってもおかしくない。
 新聞も「デジタル庁の民間登用は98%が非常勤、企業との兼務で癒着防止に甘さ」(2021.10.16 東京新聞)と、早くから警鐘を鳴らしていた。発足時、同庁600人組織の民間登用は250人を数え、本来の所属はIT、電気メーカーで、ヤフー、マイクロソフト、NTT、NECなどなど。あれから3年、いま同庁は1,000人を超える大所帯になっている。
 「誘惑」を疑われる気の毒な「志願兵」か。「犯人捜し」に庁内は物々しい雰囲気になるは必至か。そんなとき、「それは、人為的ミス」(河野デジタル相)と個人への責任転嫁がいまからみえるようだ。
 本人の知らないところで、いつ、どこで、誰が、なにを、国や自治体が保有するニッポン人1.2億人の個人情報の海外流出など、どうみても現実的だ。
 また個人情報は、我が国の財界にとってもビジネスデータになる「ビッグデータ」だ。企業の健保証も「マイナと完全一本化せよ」(2021.4 経団連・新浪剛史ら)と、国に対して催促する。「マイナ紐づけ」で、膨大な情報量を見返りに、大企業は減税を実現し、政府はしぼれる消費税アップで「国民を売る」というシナリオだ。
 売国奴は誰か!?
  
(ジャーナリスト・元星槎大学教授)

(2023.9.20)
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