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ネットで知る最近少し気になるあれこれ 8月〜9月

河口宏司

 しばらくお休みしてしまったが、やはり色々気がかりがあり、もう少し気がつ
いた諸々を書かせてもらいたいと思った。今月は、久しぶりに昔少し勉強したロ
シア語でネットを検索してみた。分かりづらい事があっても、ロシア語から英語
を含む欧米語への翻訳は正確で使いやすく、ロシア語から日本語への翻訳が用を
足さないのとは対照的である。
 9月5日、ウラジオストクで第5回ウラジオストク経済フォーラムVEFが開か
れ、ホストのプーチン大統領に次ぐ常連になった安倍晋三首相も参加した。この
経済会議はダボス会議を真似したようで、バカ高い参加費がかかるが、発表では
参加者は8500人とのことで盛況だった。しかも、65カ国からの外国人参加
者で日本は588名でダントツのトップで、次に中国の395名、韓国295名、
インド204名、モンゴール69名、米国63名などだった。この会議には、イ
ンドのモディ首相も参加したが、初参加の94歳のマハティール マレーシア首
相が大歓迎された。この二人ともプーチン大統領を自宅に呼んでの家族ぐるみで
の非公式の付き合いもあり、好意と尊敬の念でお互いに接している事が述べられ
た。  
 日本のマスコミもSNSでも、このフォーラム最終日全体会議での安倍首相のス
ピーチ:「ウラジーミル!二人で駆けて、駆けて行きましょう!」に注目が集ま
っていたので、あらためて全体会議の録画を見てみる。
http://static.kremlin.ru/media/events/video/ru/video_low/Y0WXjg6Ht7tRt
vBdrym7hVQGNcUeG1Kj.mp4 Livアドレス) 。
 
  2018年の安倍首相スピーチ 
 しかし、昨年2018年9月12日に開かれたVEF4全体会議 では、プーチン
大統領、中国国家主席 習近平、韓国李洛淵 国務総理(首相)、モンゴル大統
領と一緒に登壇した安倍晋三首相は、「プーチン大統領、もう一度ここで、たく
さんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか。今や
らないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか?」と聴衆を巻
き込んでプーチン大統領に迫り,「我々の子どもたちを、我々の世代を悩ませた
と同じ日露関係の膠着で、これ以上延々と悩ませてはなりません。…平和条約締
結に向かう私たちの歩みをどうか御支援を皆さん、頂きたいと思います。力強い
拍手を、聴衆の皆さんに求めたいと思います」とプーチン大統領側の優柔不断さ
によって、日本側の約束するロシアの明るい未来の繁栄が阻まれているとする趣
旨の発言があり、「今ビデオで御覧になったいくつもの達成は、両国がその気に
なれば成し遂げられる偉大な事業の、ほんの予告編のようなものであります。私
たちが持つ可能性をもっと全面的に開花」できないでいるのだと聴衆に訴え、応
援の「力強い拍手」をもらうと、場内の拍手に「ありがとう」と感謝した。(ト
ランプ大統領が金正恩委員長に見せたビデオ「輝かしい北朝鮮の未来」にそっく
りな手法だが、ロシアは発展したヨーロッパ型の国で国民は自由に海外を行き来
しており、何もない北朝鮮と同じ様にビデオで釣れるほどナイーブではないと言
う認識が日本側には欠けている。) 
 この安倍首相の前段のスピーチがあって、プーチン大統領は『シンゾーが「ア
プローチの仕方を変えよう」と、今言った事から始めてみよう。信じてもらえな
いかもしれないが、誠実に言いますが、全く簡単な考えが、頭に、まさに今、こ
こで真っ直ぐ浮かんだんですよ!70年間も我々は、争点の多い問題の解決をし
ようと努力しています。あなた方は1956年の宣言にも触れました。あの宣言
はただ調印されただけでなく、日本の議会でもソ連最高会議でも批准されたもの
です。その後日本側が、この宣言の実施を拒否したものです。我々は、今この問
題の検討に戻りました。こうして我々は70年も協議を続けているわけです。シ
ンゾーは、「アピローチの仕方を変えよではないか!」と言いましたが、そうし
ようじゃありませんか!それで、どんな考えが頭に浮かんだかについてですが…:

平和条約を調印しましょう、たった今ということではなく、今年の年末までに。

ーなんらの前提条件なしで。(盛大な拍手)私は、会場の皆さんに拍手での応援
を求めなかったのに?… 応援に感謝します。それで、この平和条約を基に、友
人として(敵対関係が解消した友人として*著者注)、争点になっている諸問題
の解決に取り組んでゆきましょう。もちろん、私見ですが、こうすれば70年間
取り組んで解決できなかった諸問題の全てを解決する事が容易になると思います」
と応じた。
司会者(嬉々として)今、9月12日16時30分!年末までのカウントが始ま
りました!!」と叫んだ。
 当時の日本の報道を検索すると「プーチン氏は全体会合に出席していた安倍首
相ら聴衆を前に「年末までに前提条件なしで平和条約を結ぼう」と呼びかけた
(朝日2018年9月12日)などと報じ、「菅義偉官房長官は12日夕の記者会見で、
「大統領の発言は承知しているが、その意図についてコメントすることは控える」
と述べた。そのうえで、「北方四島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結する
という(日本政府の)基本方針に変わりはない」と強調した」(朝日)。
 日本の報道は、安倍氏のスピーチでの挑発があって、プーチンの回答があった
という前後関係を報じていない。

 2019年の安倍首相スピーチ 「ロシアは頭ではわからない!」

さて本題の2019年の安倍首相スピーチは、冒頭「今、声を大にして申し上げます。
皆さん、未来はここにある。ここにこそ、私たち皆の無限の可能性があるのです。
私は本年も、未来と可能性をお話しに、未来と可能性だけをお話ししに、やって
まいりました。
 さて、お集まりの皆様。今から引用するのは、皆様よく御存じの四行詩です。
 (官邸https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement2018/0912eef.html
 

  「ロシアは、頭では分からない。

  並の尺度では測れない。
  何しろ色々、特別ゆえ。
  ただ信じる。それがロシアとの付き合い方だ。」

 と、確かにロシア人であれば誰もが知っている19世紀の詩人チュッチェフの
アフォリズムを引用し、詩文中の「ロシア」の代わりに「日本」を入れ替えてくれとの無粋な要求から始まった。
 しかし、安倍氏が引用した日本語訳文はネット検索では見つからない!?

   どなたの翻訳なのだろうか?

ちなみに、在日ロシア大使館のフェースブック(2018年12月4日)では、
 「ロシアは頭ではわからぬ
  並みの尺度では測れぬ
  ロシアならではの特質がある
  ロシアは信じることができるのみ」
 
という訳文と同時に別訳も載せている。
 
 「ロシアは頭じゃ分からない
  並みの尺度じゃ測れない。
  その身の丈は特別で
  信じることができるだけ。」

 このチュッチェフの詩の1行目は、ロシアの非合理的な文化・文明を語ろうと
いう場合には、いつでも引き合いに出される。ところが時とともに、ロシア人ま
たはロシアの、予想外な行為なら何でも、その評価に関係なく「ロシアは頭では
わからぬ」が引かれるようになる」との解説が付いている。
 
 我々が、この三つの訳文を比較すると安倍氏引用の訳文には、官邸のオリジナ
ル翻訳なのか判らないが、「ただ信じる。それがロシアとの付き合い方だ。」と、
原文にはない説明(下線部分__)が加わっているのが見て取れる?
しかも、この原文にない「説明的な補足」をスピーチ全体の基調論理である「日
本を信用しろ!」に持ってきているのでは、見当違いも甚だしい。
 
 ヨーロッパ文化の中で何十年も住んでいた詩人が、ヨーロッパ的合理的精神で
はロシア文化・民族・歴史は理解し難い、ヨーロッパ基準の尺度(三例とも、尺
度と訳されているが,原文では「アルシン」というロシア特有の尺度の単位が詠
われており1アルシンは71.12cmに当たる)では理解不可能で、ただ信じるしか
ないとの意味だとされている。 信仰的な意味での「信じる」であって、安倍ス
ピーチのように言ったことは守るので、
日本を信用してもらいたいなどという論旨にふさわしい引用ではない(鳩山由紀
夫首相がTRUST MEとオバマに言ったとされるのを思い出す)。

 昨日亡くなった教養人であり自らもロシア語の詩をフランス語に翻訳して出版
するほどのジャック・シラク元フランス大統領がロシア国家勲章を受賞した時に、
このチュッチェフの詩を下記のように引用している:

「Without Russia, Europe would be a flawed continent.
 "Mind can not understand Russia,
  no yardstick to measure:
  she has become very special –
 in Russia one can only believe"

 – I firmly believe in the future of your great country」。

当然ながら、どこにも付き合い方だとは書いていない! 

しかし第5回会議事務局の提供する英語サイトでは、安倍首相のスピーチが”暫
定訳”として英文になっているが、そこでは日本語からの逐語訳なので、同じロ
シア詩が
  Russia cannot be understood with the mind alone,
  No ordinary yardstick can span her greatness:
  She stands alone, unique –
  In Russia, one can only believe. And in which way should one deal
   with Russia.

と見事に、下線部分が付け加えられている!
この詩の、信じるверитьについては、名古屋大学 語文化部・国際言語文
化研究科 田中聰子・Kekidze Tatianaの論文「日露慣用表現に見る身体と精神の捉え方」に詳しい:

Умом Россию не понять, (ロシアは ум
(良識的判断能力)では理解できない)
Аршином общим не измерить, (一般的な尺度では計
りきれない)
У ней особенная стать, (ロシアは特別な
気質を持っている)
В Россию можно только верить. (ロシアはただ信じ
ることができるのみ)

「ロシアは ум(良識的判断能力)では理解できない」というこの詩の最初の
一行ではまず ум(良識的判断能力)の限界が示されている。そして、最後の
一行にはверить(信じる)という言葉が出てくるが、ロシア語の概念体系
では「信じる」ことは сердце(心臓)(または душа「魂」)と結び
ついているものである。したがって、より深い理解は知的側面を表す голо
ва(頭)ではなく、感情的側面を表す сердце(心臓)と結びついてい
るということになる。これは英語の mind 重視の価値観とは違うところである。
このように、ロシア語の сердце(心臓)は論理的思考や良識的判断力と
結びついたголова(頭)を超えるものである。この сердце(心臓)
は、純粋で、共感や同情を通して他者とつながっているという特徴を持っている。
この感情的で道徳的という特徴はсердце(心臓)を душа(魂)に近
づける。」とある。

 勝手に間違った説明を加えてロシアの詩を引用しながら、ロシア国民に説明す
るという乱暴粗野なのが、日本国首相を支える官邸であり外務省であることに恥
ずかしさで戦慄を覚える。無教養国家ニッポン!きっと他の国に行く時も、安倍
首相は、その国のために書かれた様々な陳腐極まり無いスピーチを読み、日本国
の恥を晒してきていることだろう。

  安倍官邸のスピーチ 『日本は頭ではわからない!』

安倍さんの指示に従えば、
 「日本は、頭では分からない。
  並の尺度では測れない。
  何しろ色々、特別ゆえ。
  ただ信じる。それが日本との付き合い方だ。」となる。

 しかしこのスピーチでは、ロシア詩の理解が間違っているだけでなく、こスピ
ーチ全体の論理が、原詩に無いが日本語訳に付け加えられた『それがロシアとの
付き合い方だ』から、『ただ信じる、それが日本との付き合い方だ!」と言いな
がら、自分でも信じてもらえるかどうか自信がなく不安なのか、我が安倍首相は、
「日本を、ただ信じるのだとして、何をどう信じればよいのでしょうか?」と自
問し、どうして日本は信用できるかとの想定される問いに丁寧に答えている!
「それについて、三つ申し上げます。日本とは、第一に、「ヴァンガード」です。
高齢化のような、皆さんがいずれ直面する問題に、世界で誰より先に取り組まざ
るを得ないからです。第二に、第一の延長で、日本は「ソリューション」です。
皆さんが抱える問題に対し、いろんな解が、日本にはあります。第三に、日本は
「パートナー」です。皆さんが、信を置ける国。一度約束を結ぶと、子々孫々守
って、日本は堅固不抜です」とした。

英文では
If it is “in Japan” that “one can only believe,” what and how
exactly should one believe? To this I will offer three points.
As for what is Japan, the first is a “vanguard.”
This is because Japan has no choice but to tackle earlier than anywhere
else in the world problems that all of you will face at some point,
such as the aging of society.

 首相は、①高齢化社会にどこよりも早く到達した。② ①の色々な解がある。
 ③パートナー と言う飛躍した何の論理性もない説明をする?
 しかし、「なぜ信用できるのか?」の問いの答えが、「皆さんが身を置ける国。
一度約束を結ぶと、子々孫々守って、日本は堅固不抜です」では、ただのトート
ロジーでしかなく証明にはならないだろう!
 しかも、安倍首相は、この“似非証明”では心もとなく、『日露の協力8項目
は、ロシアの国家的課題を解決を望んで選んだものでした』、「中間報告として
短い映像ですので、どうか御覧いただきたいと思います』と2分40秒のビデオ
を上映して解説し続けた:
 『このビデオのプロデューサーは私です、いかがでしたでしょうか。皆さんに
は、何が面白かったでしょうか。私が好きなのはあの、杖(つえ)を借りずにス
タスタ歩けるようになった女性です。日本人の歩行速度を調べた調査によります
と、日本の今の75歳は、10年ほど前の65歳と同じ速度で歩いているのだそ
うです。つまり日本の高齢者は、10年で10歳若返ったことになります。日本
の協力が、ロシアのおじいちゃん、おばあちゃんたちを一人でも多くスタスタ歩
けるようにできるのを想像しますと、私の顔は思わず綻ぶわけであります。日本
はそういう、明るい未来、尽きせぬ可能性を、ロシアの市井を生きる人々にお見
せしたい。私たちは、いつもそう願っています』と自慢げであった。

 長々と引用したのは、プーチン大統領は、次のようにコメントしているからだ:
 
 1)『シンゾーは、日本では早く歩くようになったと言った。良いことだろう。
例えば、チェチェンとかダゲスタンでは、昔と同じようなテンポで歩いているが、
出生率は日本の三倍になっている。問題は、何にエネルギーを消費するのかと言
うことだ。
私が考えるのは、我々は皆んな、何よりも若者が、エネルギーを創造につながる
プロセスに使わなければならないと言うことだ』(これは、インド首相モジが、
印露の学生交流でイノベーションに取り組んでいるとの話から、「若者」につい
てプーチンが続けたもの。この後で、プーチンは、若者が政治デモをすることは、
政権を揺さぶり正しい道に導く効果があると評価もした。)
 2)我々は、日本を信用することが必要だとのお話を理解しますし、実際に善
意(kind)の、そして良い希望(positive request)だと思います。しかしながら、
平和条約を結ぶのには多くの問題(questions)があります。それらは、残念なが
ら、二国間関係の平面にあるわけではありません。軍事的、防衛的性格の問題、
安全保障の問題(matters)もあります。そしてここでは、第三国のポジションと
第三国諸国に対する日本の義務、米国に対するものも含め、考慮しなければなり
ません。そこでは、こんな、20年第30年代に生まれた善良な言葉(kind word)が
あります。善良な言葉(kind word)は良いでしょう、しかし、善良な言葉(kind
words)とSmith & Wessonが一緒のものは、ただの善良な言葉よりも、より効果的
なものです。我々はこれをよく理解し、これを考慮しなければいけないことを知
っています。これを言うのは、一見すると簡単に見えるが、実際には、あらゆる
問題は過去から継承されたものだと言うことです。しかし、本当に、我々は、私
とシンゾーは。これを解決したいと思っています。」と応えた。(英訳部分は、
クレムリンサイトから)

 附記:安倍首相のスピーチで挙げられた日本企業の対ロシア事業一覧:
①日立造船グループ企が、2019年7月、モスクワ近郊のゴミ焼却プラント受注。
②トヨタ、サンクトペテルブルク工場に追加投資。2028年まで200億ルーブル投
資。
③日本のトラック・メーカーの日野自動車は、モスクワ郊外で工場を建設中。
 中・小型トラック年産2000台規模の生産計画。
④マツダ・ソラーズ(ウラジオストク工場)エンジン年産5万基生産開始。
最も胸躍るお話:北極圏の液化天然ガス、砕氷LNGタンカー、カムチャッカ
⑤海運大手商船三井は、砕氷LNG船を3隻そろえ、ヤマルLNGの輸出注力。
⑥北極圏巨大LNG2事業年産2000万トン規模。 三井物産とJOGMEC(石
油天然ガス・金属鉱物資源機構)決定。日本は一大ステークホルダーになりLN
Gの買い手となるでしょう。カムチャッカで砕氷タンカーから普通タンカーに積
替える。
これが実現すれば、一筆書きの雄渾な連結の実現です。自由で開かれたインド太
平洋とロシアが開発を進める北極海。人類史上初めて、二つの海域が一つとなっ
て、偉大な物流の大道が誕生します」と安倍首相は強調した。ーーインターネッ
トでこの演説を見聞きすれば、安倍首相(日本の代表)の関心は、北方領土問題
などではなく、『一筆書きの雄渾な連結の実現」と言うことがわかる。この実現
のために、又このおこぼれを貰うために日本から588人もの人がこのウラジオ
の会議に参加して、安倍首相の日本政府の応援者を演じているだと思う。

2019ハバロフス州・市議会選挙で自由民主党が圧倒的勝利!
 ネットで極東ウラジオストック会議のついでに見た、隣の州であるハバロフス
クの州議会・市議会選挙結果に目を奪われた!ほとんど独裁権力だと思われたプ
ーチン政権の”統一ロシア党”の支持が崩壊してきているのが分かった。
 これまで長いこと自由民主党(LDPR)ジリノフスキー党首は、プーチン政権党
の補完的存在でピエロに過ぎないと言われてきたが、ロシア極東のハバロフスク
州議会選挙で得票率56%で勝利したが、同日行われたハバロフスク市議会選挙で
は35議席のうち34議席を占め、州第2の都市コムソモールスク市議会でも25
議席中24議席を獲得した。同時に行われたロシア国会補欠選挙コムソモーリスク
市(一人区)でも、自由民主党が得票率39%で勝利した。プーチン政権の与党”
統一ロシア”は3位、2位は25%の共産党であった。またコムソモールスク市長選
でも、自由党公認が56%の得票で当選、次点は24%の共産党、”統一ロシア”は
13%で3位だった。
 この圧倒的な自由民主党(党首が日本の自民党を真似したと語っていた)の躍
進は、2018年度のハバロフスク州知事選で自由民主党から立候補した1970年生まれの州議会議員フルガル氏が、当時の現職知事に対し立候補し35.62%:35.81%と675票差で負けたものの決選投票で、69%:27%で勝利し、徹底的に腐敗した州政権に徹底的にメスを入れていることが背景にある。またの機会に、この新州知事の選出母体が、ここまでの絶対的な支持を得たのは、どんな改革をしているのかも報告したいと思う。
 また極東だけでなく、首都モスクワとサンクトペテルブルクの選挙でも、野党
側が”戦略的投票”を呼びかけ、野党候補に投票を集中して、強固な体制側の壁を破ろうとしている新しい動きにも注目して行きたい。

終わりに

 10月になってしまったが、これからは米国大統領選の12回予定のデベートの
第4回が終わり、いよいよ民主党予備選の行方が気になってくる。
 小生が5月の記事で、ウクライナとバイデン副大統領の息子との関係が浮かび
上がってくると指摘したが、大分遅くになった今頃になって火が大きくなって来た。次に面白くなるのは、本来6月には報告が上がると予定されていた、司法大臣Barrの指名したJohn Durham, the U.S. attorney in Connecticutのロシアゲートとはそもそも何であったのかの捜査レポートである。トランプ追い落としのために、米国インテリジェンスコミュニテーが、英国MI6、イタリア、オーストリア、ウクライナなどの同業の協力を得たことが分かっているが、人員も予算も拡充された捜査の結果が待ち遠しい。(K.K)

P.S.次回チュッチェフのロシア詩を引用する場合には、首相官邸か外務省のスピ
ーチライターには、早稲田大学大学院文学研究科ロシア文学専攻の 坂庭 淳史氏の 「フョードル・チュッチェフ研究 ―19 世紀ロシアの「自己意識」―267頁 」を読まれると同時に、その分野の研究者に相談するようお願いいしたい。