【コラム】酔生夢死

ノービザ解禁ぐらい早くやれ

岡田 充

 春節(旧正月)が始まった2月中旬、台湾、韓国など旧正月休暇に入った海外から多くの観光客が訪日観光に詰めかけた。しかしコロナ禍前の2019年には訪日客の約3割約1000万人を占めた中国大陸からの訪日客数は少なく、あるTVニュースで中国専門学者はその理由を「経済不況が原因」と、頓珍漢な解説をしているのを観て驚いた。
 中国人観光客の回復が遅れているのは、日本政府が19年当時は認めていた一般中国人へのノービザ待遇措置を与えていないことが主因。その証拠に、多くの中国人観光客はノービザで入国できる近隣のタイ、マレーシアなど、東南アジアカ国を訪問しているからだ。
 中国政府は昨年来、日本政府に対しノービザ解禁を求め、相互主義に基づき中国側も日本人旅客にノービザ解禁すると、外交チャネルを通じ要求してきた。しかし日本政府の対応はノラリクラリ。あらゆる経済指標が下落するなか、唯一光明が見える観光立国を目指すなら、14億市場を無視できないはず。むしろ優先すべき政策だと思う。
 そんな中、日本経済新聞社が23年に行った同社の世論調査結果(2月18日朝刊)として、韓国を「好き」と答えた日本人は37%と前年より10ポイント上がり、「18年の調査開始以来で最も多かった」と伝えた。
 その理由として同紙は、韓国で尹錫悦大統領が就任、首脳交流が回復して日韓関係が改善したことを挙げた。K-POPの底堅いファンや、『韓流』の影響もあるだろうが、政府間の関係改善が、日本人の外国感情に大きな影響を与えているのは間違いないだろう。
 一方、中国を「嫌い」と回答した比率は74%と6年連続で7割台。「脅威」と感じる回答は87%に上る。それはそうだろう、岸田政権は中国が台湾に武力行使するのを意味する「台湾有事」と中国の脅威を毎日煽だけで、中国との関係改善にはほぼ手つかずだからだ。
 この調査で分かるのは、人々の対外認識は政府の対外政策の「映し鏡」の側面が強いこと。19年に1000万人近くの中国観光客が訪日した後、ある世論調査で中国人の対日観が大幅に好転する結果がでたことを忘れてはならない。
 日中双方の相互利益と国民間の相互感情を好転させる上で、ノービザ解禁ほど低コストで有効な措置はないだろう。中国政府は対日関係改善に向けて、福島汚染水の海洋放出についても、中国の独立したモニターを日本と国際原子力機関(IAEA)が受け入れるのを条件に、日本産海産物の全面禁輸の一部見直しを示唆し始めた。
 日中首脳会談は国際会議の場では22年から2回実現したが、自民党の政治資金問題で足元に火が付いた岸田首相が、東京―北京の首脳相互訪問を再開する環境は整っていない。関係改善の環境整備には、ノービザ解禁が疑いもなく早道なんだけどなあ。(了) 

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京都祇園を散策する外国人環境客

(2024.2.20)
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