【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(76)

バングラデシュ暫定政権への意見・感想

坪野 和子

 3か月、休載させていただきました。パソコンと私の睡眠障害問題があったからだ。そして誘拐事件があった。チベット人のお坊さんが中国人たちに本人の意思のように連れ去って何かコントロールしたかったらしい。無事帰宅されたようだ。

 バングラデシュの暫定政権への意見を言いたくてうずうずしていた「75回(通巻248号)バングラデシュ首相逃亡」でお話ししてくださった男性だ。今回は彼とは反対側の政治意見を持つ オルタ広場4号(2018.8.20)【自由へのひろば】「バングラデシュに広がる交通抗議学生デモ ~非人道的な弾圧と沈黙する日本大手メディア」で話してくださった方のご意見を両方載せることでご判断していただけるよう試みたい。アワミ同盟ハシナ前首相寄りのAさんと反アワミ同盟Bさんということで並べてみたい。…と思っていたらどっち寄りでもなさそうなCさんから電話が入り私の仕事の都合で簡単に伺うことになった。
 Aさん日本在留経験者で現在ダッカ在住、日本語ビジネス。Bさん日本在留。家業を親戚に任せ自給自足の生活を送っているものの「いい話しはないか」と大阪人の「儲かってまっか?」みたいな会話から始まる。彼は東京近郊在住ほぼ25年以上。いきなり簡単なコメントをいただいたCさんは基本は旅行業。日本語学校経営者でもある。今まで彼は(ビザブローカー)疑わしいと思っていたのだが、コロナ自粛以降、正規ルートを考えだしたようである。

 1.11月までの意見
◆Aさんのご意見
 「混乱しているね。良くないよ。ここ50年の中で一番不安定になっているよ。(政治犯の釈放に便乗して)脱獄する犯罪者が増えている。危険極まりない」
 「マスコミ統制が厳しくなった。バックに軍事やイスラム原理主義がついているからなあ」
 「イスラム原理主義がついているのがわかるのは、外で働く女性が減っているんだよ。アパレル工場の中には男性だけの職場が増えてきたんですよね。バングラデシュの良さが消えちゃったよ。(言いなりになっている)ユヌス氏は大失敗だったよ。こんなにダメだは思っていなかったからガッカリだよ」
 「トランプが当選したら、ユヌス氏は大変だってインドの人が笑っているんだよ。経済学者なのに経済が混乱するからね」
 「ユヌス氏は(報道とは違って)管理主義だよ。コントロールされているけれど、スタッフにもコントロールさせているんだよ。このままじゃ政権は成り立たない。前の政権(ハシナ政権)の経済政策が台無しになってしまうんだから」
 「インドとアメリカは実は仲が悪い。トランプが大統領になったらもっと問題が大きくなる。間に中国が入ってきたら絶対良くない。ユヌス氏の首席顧問が続いたら痛手は大きい。付け込まれるからね」
 「やはり経済の問題が大きいよ。お金が悪い人ばかりに流れるのを防ぐには、政治を知らないと。ユヌス氏は政治素人だからね」
 「今、実質、軍事政権+イスラム原理主義が握っているからね。ユヌス氏は彼らの都合で追い出されるだろうね。利用されていらなくなったらね」
 「正直、彼には元々期待していなかったけれど、(少しはいいかと思ったが)ガッカリだ。早く辞めてほしい。100%イスラム原理主義者に操られている」

◆Bさんのご意見
 「良くも悪くもなっていないね。まだそんなに時間が経っていないでしょ。これは暫定政権だからね」
 「ネットが自由になった。今までなにか書いたらとっ捕まっていたけれど、なにを書いても大丈夫になったよ」
 「バングラデシュに関する報道は現地よりドイツ・イギリス・アメリカ・マレーシア・韓国の流し方が正しいね(日本メディアの場合「革命」と扱っているが)今回は第三の中間コミュニティによる活動だったんだよ」
 「今回、裏にあるのは、(ハシナ政権下で)国をぐちゃぐちゃにした大臣がいて、マレーシア・ドバイの土地・建築物件620戸を税金着服して買ったんだよ。20年の予算。今回それをつるし上げ彼は国内かインドに逃亡して行方不明なんだよ」
 「投票者名簿がまだ作成中。18歳以上。まだ電子投票どころか役所の電子化が遅れているから選挙まで時間がかかると思う。でもユヌス氏は早く辞めたいんではないかと思う。”いつでもやめていい”発言があったから」
 「ハシナ氏のグループ、国から搾取し続けていたけれどみんな逃げたんだよね。でも誰が政権を握るかではなく、みんな国の中にいたら成長できないって感じているんだよね。技術力がないし、外国の技術はすごいよ。靴、イタリア、高いけど履き心地・持ち、違うでしょ。4000万人のバングラデシュ人が海外で仕事しているけど帰ってこないでしょ。政治家が帰りたい国を作らないと」
 「ユヌス氏は辞めたいと思っているんだよ」

◆Cさんのご意見
 「いや、今やっと落ち着いたと思うよ(現状)驚いたね。(学生運動・革命活動は)今までなら(2018年のデモやそれ以降)なにか予兆があったのに、突然だったよ。(一般人は)誰も知らなかった…と思うよ。でも、前の首相、2年くらいで帰ってくるよ。(政治関係なく)普通の人は良くも悪くも彼女がトップという存在だからね。彼女はトランプと仲が良かったから、経済が回ることを期待していれば帰ってくるだろうね。でも帰ってくるまでに彼女の周辺で止まっていて独占されていて回ってこなかったビジネスに手を付けておかないとね。この件、日本外務省が察知していたのにもかかわらず、知らなかったとシラを切ったらしいね」

 2.ごく最近政治的立場の違いを超えて共通している危機感
 ハシナ氏支持側も反ハシナ派も今の状況が予想を超えてイスラム原理主義や外国のイスラム派が改革(革命)の中心になっている若い子たちをコントロールしていると危惧している。反ハシナ派は二つの感覚がある。1つは軍隊の影響、1つはインドが州として組み入れ直したいと考えている陰謀。私は後者は完全に否定したい。なぜなら、パキスタン(当時は東西)独立は、経済的に面倒くさい現パキスタン・バングラデシュを切り離したかったガンジーと権力を得たかったジンナーの取り引きだから。インドはバングラデシュを今更領土としてほしくないだろうと考えるのが自然だろうと思う。イスラム原理主義が裏からコントロールしているのではないかと考える庶民にも「あれ?おかしい」が感じられているようだ。女性労働者の待遇が悪くなっていることが主な原因だ。退職する女性も増えている。バングラデシュはイスラム圏の中でも「かかあ天下」ランキング上位だろうと実感している。あるバングラデシュ・インテリジェンス(大学教授)が「ウチ(バングラデシュ)は、もっとも緩いムスリム」と言うくらいだ。たしかにこの国のトップは、おばちゃん2人で争っていた。
 では誰がウラで??というということでヒンドゥ教寺院や教徒を狙い続けているイスラム過激派がヒンドゥ教を騙ってデマを流しているのでそれが怪しいと言っている人たちがいるようだ。このイスラム過激派については表立った活動よりも裏でネットを使って動いていたため、人々は忘れていたふりをして何も言うことはなくなったようだが、再び浮上しているようだ。コントロールを感じている人たちには近隣諸国やどこかのイスラム原理主義が背後にあるのだと。

 3.今後の在り方(私見)
 以下は私見である。一日も早く選挙が行われる必要がある。ほとんどの国民は暫定政権は暫定なので、選挙までは頼りないユヌス氏に任せるしかないと諦めている、もしくはハシナ氏のインドからの帰還を待っている(支持派のみでなく反対派も正当な正常な状態を望んでいるため、きちんとした決着をつけたいからだとか)。もしくは政治より治安だから警察がしっかりした対応を望んでいる。一日も早く選挙が行われるためにも投票者名簿を迅速に作らないといけないのだが、前回の選挙から推定100万人以上の有権者増加で、しかも国外出稼ぎ・留学など不在者も多い国である。所在の確認に手間が必要だ。テクノロジーに長けている人材は海外流出しているので役所での電子処理も大したことができないはずだ。優秀な人材は欧米をはじめ、日本・中国に流出し、さらにブルーカラー労働者は中東・韓国・日本へ借金してでも働きに来ている。こういった事情で名簿を作ること自体に時間を要する。そして、ハシナ氏の帰還まで時間稼ぎしたい役人も少なくないだろうと想像する。日本の役人の体質と酷似している。日本の0.4倍しかない国土でこの人口、とにかく選挙を待たないとこの国は落ち着かないんだろう。インド領時代の藩王体制が今も変わらないのだから。でも日本だって大して違わないだろうね。ただ違うのは、国内に留まるか、国外に出るか?かもしれない。日本人若者は外国で仕事をする発想がないに近い。バングラデシュ人は慣れない言語を勉強しても海外で仕事を得たい。かつて知り合った当時は日本語能力試験N4だった技能実習生で入国した男子は特定技能合格N2合格。日本人若者は外国語を勉強して出稼ぎしたいという意識はない。この違いがあっても、若者は、いや中高年私も「国のため」という意識は薄いのだろうと思う。バングラデシュ、今後の政治や役所の体質を変えるのは…日本だって無理だからねえ。かといって「革命」も難しい。今回は「革命」と言っているけれど。1947年の分離独立に騙されたバングラデシュ。BBCの記事でご理解いただきたい。クリケットに関しては昨年世界大会でインド・ハイデラバードで開催され、スポーツと政治は分離している。蛇足だが、昨今インドを「India」と言わず元の国名「バーラタ」と言うようになったのはクリケットが原因だ。旧英領インド出身の選手たちや実況中継の視聴者への配慮である。それに便乗したモディ首相が国粋主義を打ち出すために元の国名「バーラタ」と言うようになった。話しはバングラデシュに戻るが、いや加えてパキスタンもだが、庶民はインド人と仲がいい。どちらも牛を国境から持ち帰る取り引きをしている(輸入)。いやバングラデシュに限って言えば、川の向こうから牛を連れ去ってもインド人は見て見ぬふりをしている。バングラデシュもパキスタンもインドの古い政治体質を悪い意味で引きずっているのではあるが、庶民の意識が高いので平均年齢28歳の国として発展の余地がある。しかし、人材が国外流出している現状は、おばちゃんふたりが政権争いをしていた結果ではないかと感じる。おばちゃんとはジア氏、ハシナ氏。日本で例えると、ジア氏は該当する女性政治家がいない。男性であれば小泉孝太郎氏かもしれない。ハシナ氏は田中真紀子氏が近い。政治家トップ、世襲や未亡人が継ぐ、それしかないのかしら?バングラデシュの問題、いろいろ言いたい人が多いので、また報告します。

(2024.12.20)
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