【投稿】

ビルに衝突する小鳥 バードストライクに本邦初の議会質問

        ~千代田区議会 岩田かずひと議員
仲井 富

<はしがき> 以下の千代田区議会議員岩田かずひと氏の、2021年9月16日のバードストライクに関する質問のきっかけは、私の朝の散歩道での出来事だった。九段下から飯田橋に至る散歩コースにある、三井住友飯田橋ビルの総ガラスの壁面に、鳩が誤って衝突した目撃から始まる。鳩は死んだかと思ったが、間もなく気づいたらしくふたたび飛び立って行った。私は高層ビルの林立する千代田区の、状況に怒りを覚えた。旧知の小枝すみ子議員に相談すると即座に、動物好きの岩田議員を紹介して下さった。その結果が岩田議員のアメリカ、韓国など世界的なバードストライクの状況を調査し多質問となった。

 千代田区の問題意識は粗雑だが、これだけの大問題を国会、地方議会で取り上げたのは、日本広しといえども岩田議員を持って嚆矢とするのではなかろうか。以下にバードストライクと地球温暖化に関する質問を紹介する所以である。

令和3年9月16日(木)午後1時 ◎場所:千代田区議会議事堂
○6番(岩田かずひと議員)2021年第3回定例会一般質問をさせていただきます。

 ◆ 小鳥が高層ビルなど人口構造物にぶつかるバードストライク

 皆さんは、バードストライクというと、どんなことを想像するでしょうか。恐らく多くの方が飛行機の操縦席のウインドシールドに野鳥がぶつかったり、ジェットエンジンに野鳥が巻き込まれるなどの航空機事故を想像するのではないでしょうか。しかし、バードストライクをそのまま訳せば読んで字のごとく鳥がぶつかる事故であり、それは飛行機には限らないのです。例えば、鉄道や鉄塔、高層ビルなどの人口構造物に衝突することも指すのです。

 最近では、全体がガラス張りで鏡のようなビルが増加したことで、これに映った背景と本物の空との区別がつきにくくなり、鳥がビルの存在に気づかず衝突したり、反射する太陽に反応して衝突する事故が増えていると見られているそうです。鳥の衝突死は、衝突によって命を落とす場合だけではなく、窓に衝突した衝撃で気絶し、高いところから落下して命を落とす場合もあるわけで、ビルが高ければ高いほど死の危険性は増大するでしょう。国内のある大学の発表によると、野鳥の死因のトップは捕食などの要因を抑え、全体の50%弱で圧倒的にビルなどへの衝突死が多いのだそうです。

 ◆ アメリカ国内の高層ビルにぶつかり死ぬ野鳥は年間6億羽

 2年前の記事ではありますが、アメリカ国内で高層ビルにぶつかって死ぬ野鳥は、年間およそ6億羽に上るという調査結果をアメリカコーネル大学鳥類学研究所が発表しました。また、別の研究機関によると、死亡被害は年間6億羽どころか10億羽にも上るとも言われているそうです。野鳥は高層ビル群の人工的な照明によって方向感覚を失い、壁壁面や窓ガラスに衝突してけがをしたり死んだりすることもあるのだそうです。どちらにしても、日本では私たちの日頃の生活ではなかなか見えてこない、あまり表立って出てこない事実でありますが、看過できないものだと認識しております。

 例えば、シカゴにある高層ビル1棟だけで、年平均1,480羽の鳥が衝突死したことが確認されています。つまり、このビルだけで14年間に約2万羽以上の鳥が命を落としているというのです。また、昨年ペンシルべニア州の鳥獣保護団体は、同州フィラデルフィア市内で推定1,000羽から1,500羽の鳥が一晩で死傷する異例の事態が起きたと報告したそうです。

 ちなみに日本では、アメリカほどではありませんが、大阪市内中心部にある、とある1つのビルで1年間に33羽の鳥が衝突死しているという記事がありました。これは日本野鳥の会大阪支部のホームページよりです。たった1棟のビルで33羽ということは、10年間では数百羽が死んでいるだろうということが容易に推測できますし、大阪市内全体では一体どのくらい、日本全国ではどのくらいの鳥が被害に遭っているのでしょうか。
 地域も違うし、単純計算するわけにはいきませんが千代田区では一体どのくらいの数の鳥が被害に遭っているのか、数字がありましたらお答えください。

 ちなみにニューヨーク市では、年間9万羽から23万羽が高層ビルに衝突死しているとのるとの推定があり、生態系への影響が懸念されていたことから、ニューヨーク市議会は、高層ビルの新築や改装の際に野鳥の衝突を防ぐ加工を施した窓ガラスの採用を義務づける条例案を可決し、2020年12月に発効しました。この条例により、鳥が認識しやすい加工やデザインの素材の使用を義務づけし、ガラスに模様や紫外線フィルムをつけることで鳥の衝突が大幅に減らせるのだそうです。ほかにもカリフォルニア州サンフランシスコ市では、ニューヨーク市よりも早く、この、鳥をガラス窓から守る条例を採用しているそうです。

 ◆ 透明防音壁や建物の窓に衝突して死ぬ鳥は年間約800万羽の韓国

 また、透明防音壁や建物の窓に衝突して死ぬ鳥は年間約800万羽の韓国、その韓国の東亜日報2020年11月17日の記事では、窓ガラスにステッカーを貼るという方法を紹介しています。東亜日報によりますと、猛禽類のステッカーを貼ることもあるが、これはあまり効果がない。

 国立生態院は、2018年に発表した「野生の鳥と窓ガラスの衝突」と題した報告書で、形が重要なのではなく、鳥が遮られたガラス窓があることを認識できるほど多くつけてこそ効果があると指摘。ほとんどの猛禽類ステッカーはまばらに貼り付ける。最も簡単な選択肢は、格子柄、透明性を維持しながら、鳥が構造物として認識できるように一定の間隔で柄を入れること。海外研究によると、鳥は高さが5センチ未満、幅が10センチ未満の柄があれば構造物であると認識して避けていくという、韓国でも効果が立証された。2018年テジョンの防音壁を2区間に分けて片方だけに格子状ステッカーを貼り付けたところ、11か月間、貼り付けていない区間では200羽が死んだが、貼り付けた区間では4羽のみ確認された。この方法は一般建物でも活用できる。

 国立生態院・動物管理研究室のキム・ヨンジュン室長は、鳥が窓に反射された空を何もない場所と勘違いしないように、縦5センチ、横10センチ以内の間隔で表示することが重要だとし、窓の外側にステッカーを貼ったり、ロープをたらしたり、アクリル絵の具で絵を描くなど、様々な方法を活用できると説明した。色ガラスをつけるか、様々な紋様のフイルムを貼るなど、デザインを変形することも有効だと述べております。が、残念なことに、このステッカーを使った方法は効果があまりない俗説であるとの意見もあり、あくまで一例としてご紹介いたしました。

 ◆ 千代田区の外神田再開発ビル170メートルを強行を容認する区の姿勢

 ただ、全米オーデュボン協会などの鳥獣保護団体は、建築家や開発業者に対し、自然界のニーズにもっと気を配るよう訴えています。このように世界的にも高層ビルなどから野鳥を守ろうという動きが出てきている今、千代田区では現存するビルに対してどのような対策をしてきたのか、また、今後多くの区民の反対を押し切ってまでも建てようとしている外神田一丁目再開発の170メートルのビルや、現在高さ制限60メートルの地域に150メートルのビルを建てようとしているとうわさの日本テレビ建設のビル開発業者や施主などに対し、もしも建設される際にはどのような指導なり対応をしていくのかをお聞かせください。(中略)

 ◆ 地球温暖化対策について

 次に、地球温暖化対策についてです。区長はどの程度ゼロカーボンを実現しようと考えているのでしょうか。ゼロカーボンは、企業や家庭から出る二酸化炭素などの温暖化ガスを減らし、森林による吸収分などと相殺して実質的な排出量をゼロにすることですが、都や国の言うとおりにするだけでは本当の実質ゼロカーボンは実現できないでしょう。
 例えば、区内のあちこちで建てられようとしている超高層ビル、CO2だらけではないですか。幾ら面積当たりのCO2が半分になったとしても、容積率を緩和して現在の3倍の高さのビルを建てたら、単純にCO2排出量の総量は従来の1.5倍になってしまうのではありませんか。だから目先のごまかしでCO2を削減しているように見せかけるのではなく、総排出量で計算しなければいけないのです。

 容積率の緩和のためにしている樹木など、緑化についても同様です。緑化によって容積率緩和という制度を業者に利用させるだけではなく、排出しているCO2と同等もしくはそれ以上の吸入を求めるべきです。暑さ対策としても考えているならば同様で、効果がなければ無意味です。また、水辺についても同じです。お濠の水の浄化装置をつけることによって容積率を緩和しても、実際は浄化装置によってきれいになるスピードよりも汚れるスピードのほうが早いために、いつになってもお濠はきれいにならないとか、名前ばかりの親水性で、雨の後はどぶのような臭いのする川に船着場を造ることによって容積率を緩和するのはちょっと違うのではないかと思います。

 例えば、生態系の変化で動物が絶滅していくことは、人間で言えば歯が1本ずつ抜けるのと同じようなことではないでしょうか。そのときはたかが歯の1本くらいと思っていても、1本が2本になり3本になり、そしていずれ健康被害が生じたときにはもう手後れです。

 ネイティブアメリカンの教えの中に「7世代先まで考えよ」というのがあります。台地は先祖から譲り受けたのではなく、我々の子孫から借りているのです。母なる大地の内臓をえぐるようなまねをしてはいけない。2050年まであと30年弱ですが、30年なんてあっという間です。ただやりましたというだけの既成事実ではなく、区長の本気度を見たいのです。目標を設定し、目指したけれど達成できませんでしたでは意味がありません。国や都の指針よりももっと厳しく律しなければ2050年にゼロカーボンの実現は不可能だと危惧しておりますが、区長の考えをお聞かせください。(中略)

 ◆ 高層ビル火災に対応できない区の消防車 最高40メートルしか届かない

 2020年第4回定例会で、有効な注水ははしご車の高さから水平の高さなので、千代田区内の40メートルのはしご車では、200メートル級の超高層ビルや番町に建設するとうわさの150メートルにもなるという日本テレビの超高層ビルの超高層階どころか、高さ60メートルの日本テレビのスタジオ棟の高層階でもビルの外から有効注水の高さには届きませんという質問に対し、消防車も横づけできるような高層ビルのほうが消火活動はしやすいとの理事者からの答弁がありましたが、ビルに横づけしようがしまいが区内の消防車では最高40メートルまでしか有効注水できないのは小学生でも分かることです。なので、このような的外れな答弁ではなく、丁寧、的確、分かりやすい答弁をお願いいたします。
 質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

 ◆ 千代田区役所担当者の答弁 バードストライクについて

○まちづくり担当部長(加島津世志君)岩田議員のご質問についてお答えします。

 初めに、バードストライクについてお答えします。千代田清掃事務所による動物死体処理の実績を見ると、東京都からの清掃事業の事務移管があった平成12年度では、猫318体、犬10体、鳥を含むその他が25体となっておりました。これが直近の令和2年度では、猫22体、犬6体、鳥を含むその他が27体であり、猫が9割を超えて大幅に減少する一方で、犬とその他は平成12年度とほぼ同様の実績となっております。また、平成12年度から令和2年度までの約20年間において、鳥を含むその他の処理件数は各年度30体前後を推移している状況であることは把握しておりますが、その原因の特定まではしておりません。

 次に、外神田一丁目再開発及び日本テレビ建設に関するご質問ですが、バードストライクは、一般的には建築物の窓ガラスに映し出される景色を空や周囲の木などと誤認することが原因と考えられており、高層の建築物に限ったものではないと認識しております。明確な原因の特定ができていないことから、区として何らかの指導をすることは考えておりません。

 ◆ 地球温暖化対策について

○環境まちづくり部長(印出井一美君)岩田議員の地球温暖化対策に関するご質問にお答えします。

 容積率緩和とCO2排出量増加についてのお尋ねですが、再開発事業と都市計画手法を用いて既成市街地を機能更新することで、老朽建物の共同化によるエネルギーの効率化や建物設備の環境性能の向上が図られ、床面積当たりのCO2排出量は大きく減少いたします。地球温暖化対策条例を施行した2007年度から2018年度を比較すると、業務系床面積は約15.4%増加しましたが、エネルギー消費量は約17.2%減少し、CO2排出量も約11.6%減ってございます。

 この間、区内各所で再開発事業等を活用した市街地の機能更新に取り組みましたが、こうした取組も含め、CO2の排出量が総量としても減少したものと認識しております。仮にこの間、こうした機能更新がなく、エネルギー消費量が不変であったとすれば、電力のCO2排出量が約8.4%増加していることから、CO2排出量は減少どころか増加したものと考えられます。

 さらに、電力自由化を契機に、2050年のカーボンニュートラルに向け、再生可能エネルギー由来の電力供給が加速度的に進んでいます。特に事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄う「RE100」を宣言する企業も増えており、今後は機能更新による消費エネルギーの削減とオフィスの「RE100」化により、床面積が増加してもCO2の排出量の大幅な削減が可能と考えます。また、再開発で面的エネルギーの利活用を進め、他の街区と連携したエネルギー負荷の低減や地域のエネルギーレジリエンスの強化が図られます。(後略)

 (世論構造研究会代表、『オルタ広場』編集委員)

(2022.2.20)
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