【オルタの視点】

ロヒンギャ問題…心痛めるイスラム教徒の友人たち(2)

坪野 和子


 前回書ききれなかったことがあったので、お許しをいただき、ロヒンギャ問題2回目となります。私を信じて、さまざまな発信をしてくださった各国のムスリムの友人たちと読者のみなさまとを結ぶことができれば幸いです。また、今回その後についても書かせていただきます。

◆1.消えてみられなくなった動画・画像

 ムスリム男子たちが送ってくれた悲惨な動画・画像がどのようなものかを書かせていただきます。11月現在いかなる手段を使ってもインターネット上ですべて視聴できなくなりました。…どのようなものかというと…

◇ ミャンマーから逃げる前の悲惨な様子
 ミャンマー軍が村人…行われていることです。
 子どもをふんじばって身動きできなくさせ、毒針注射を顔中に打ち死亡させる。さらに別の人から送られたその子の遺体の画像は天使の死亡と涙の絵文字つき。
 子どもを全身骨折するような虐待をし、死亡に至らせる。
 子どもを数人集めて追い詰めて全員蜂の巣にする。
 テロリストとして縛った住民を目隠ししていろいろとしゃべらせ、首を刀(旧日本軍の軍刀と同じタイプ)で切って殺す。
 住民を追い詰め、四角く掘った穴の中に落とし、そのまま生き埋めにする。
 いずれも、顔を伏せず、目を閉じず、しっかり正視しなくてはならない辛さを得ています。簡単に忘れられないショックです。
 世間に出回っているすべての画像・動画が真実ではない可能性があるとしても、今回の場合、ヤラセや作り込みの余裕のない状況と判断せざるをえない…撮影者の悲しみや憤りを越えたなにかを感じるものでした。

◇ ミャンマーから逃れていく・きた人々
 ここからは本人たちではなく、主にバングラデシュのジャーナリストや近隣の支援者たちによる撮影でしょう。
 定員オーバーあきらかなボート…(南アジア感覚だと重量オーバーという感覚が薄い)沈みかけて助け合う…ですが、おぼれて川の底に消えていく人の姿。
 飲み水が欲しくて飲んだら大勢の人々が下痢。死亡者も出ています。
 大雨なのに、まだ住むところがない人々。路上で寝ています。
 住むところのための支援物資はビニールです。日本でかつてゴミ袋として使われていた黒やブルーのビニール。その支援が回ってきた人々は竹の柱に貼り付けて一家の住まい(ビニールに関しては、日本の市町村で透明ビニールを指定されているため、各ご家庭で眠っている可能性が高いので、それを寄付できないかと)。11月現在もまだ回りきっていません。回っても大洪水で流されてしまったご家庭もあります。難民キャンプがあるコックスバザールに支援物資が届くと奪い合いの姿も見られます。
 弱り切った子どもや老人…おそらくあと何日かなと思えるような姿。

◇ 送っていただいてもっとも多かった「アラー彼らに平安を」
 老夫婦を天秤棒の籠に載せ、たどり着いたのに老夫婦はすでに息がない。その画像はアラビア語で「アラーの加護がありますよう」「アラー彼らに平安を」という文字を入れられていました(元画像はネットのどこかで見られます)。

◇ もっとも多かった…ああ!!
 そして…もっとも多かったのは…数々のご遺体!! いろいろなショットで。家族をそのまままの状態で放置せざるをえなかった様子。ご遺体を収容している場所。

◆2.スー・チー氏 鬼女の如きコラージュ写真

 9月8日。英国BBCは沈黙し続けたスー・チー氏に対し、インタビューを行い重かった口をあけていただいた動画を公開しました。彼女は「これは民族浄化ではない」
  https://www.youtube.com/watch?v=Y2sueS6efEs
 この発言にイスラム教徒たちの怒りに火をつけました。一部、デモなどで使われた赤い×印や東欧の血を取る伯爵夫人風、ドラキュラ、彼女に向けたダーツなどはネット上で見る事ができます。それは彼女への失望からくる怒りです。「軟禁時代かつての彼女はすべての少数民族を擁護するスタンスを取っていた、以前はロヒンギャの国会議員もいた。国籍があったことの証拠だ」「彼ら(ロヒンギャ)は、スー・チー氏の民主化を支持し協力していたのに裏切りだ!」日本の大手メディアで伝えられているスー・チー氏擁護と対照的な!

◆3.ノーベル平和賞受賞宗教者の声明

 9月8日。この日、ダライ・ラマ14世法王はチベット語で仏教徒としての慈悲を持って平安な解決ができないものだろうかと語っていらっしゃいました。イスラム教徒の人々は英語で語られた「仏(釈尊や悟りを開いた成就者)であれば、ロヒンギャに救済の手を差し伸べるであろう」という言葉が響いたようです。若者に影響力を持つ有名人たちは twitter で〝Thank you Dalai Lama" ものすごい反響をえました。ダライ・ラマ14世法王はスー・チー氏に平和的解決を求める書簡を送りました。また、かつてスー・チー氏の軟禁解放を世界に呼びかけた南アフリカのデズモンド・ツツ元大主教も書簡を同日送られていらっしゃいます。

◆4.薄まっていく真実

 9月11日。国連の動きを英国BBCが伝えました。
  http://www.bbc.com/news/world-asia-41224108
 国連だけでなく赤十字、国境なき医師団など支援の報道や宣伝がはじまりました。日本政府は9月26日にやっと…こっそり??閣議でIMOを通じた支援を決定した…と。
 9月半ば、その後しばらく情報が錯綜しはじめました。「ロヒンギャの人たちは帰れるようになった」「バングラデシュは受け入れを止めた」…など誤った情報も流れました。それらは真実ではないので風化しました。
 ところが、支援がはじまると、私たちが目にするものは支援団体の寄付を求めるモデルを使っているとわかる画像群。支援団体による可愛い可哀想な子どもの画像。生存して、これから未来のある子どもたちに目を向けることは良いと思います。
 しかし、なにが起きているのか、現実はあまりに知られていない…。

◆5.11月現在
 ロヒンギャの人々は現在バングラデシュ以外…パキスタン、インド、サウジアラビアにも逃れています。サウジアラビアは受け入れだけでなくバングラデシュへの金銭物資の支援も行っています。11月。バングラデシュのハシナ首相はコックスバザールの難民キャンプを訪問し、子どもたちを励ます一方、ある程度、流入が終わった現在、これ以上受け入れをするのは厳しい状況だと語ったとの報道もあります。11月7日、ロヒンギャ支援の国連安保理議長声明にミャンマー政府は反発したと伝えられました。

※この原稿は友人たちの生の声とメディア報道とその反応に基づきます。友人たちとは主に英語でのやりとりです。ベンガル語がヒンディ語に似ているのでバングラデシュの人たちや動画の音声でなんとかしました。私が右から左に書く文字が読めない残念さをかんじます。ウルドゥ語、ペルシャ語、アラビア語が読めるともう少し彼らの心を伝えられるのにと残念な思いがあります。どうか読者のみなさまにご理解周知いただくことを願います。

<参考動画>
 https://bdnews24.com/ 今回のおすすめ公式メディアです。
 https://www.facebook.com/1890494181271434/videos/1890494944604691/
 https://www.youtube.com/playlist?list=PLn2el81t1I3NtT885SJLdQ_yUrJVzXuZF
 https://www.youtube.com/results?search_query=bdnews24.com+Rohingya
 http://www.bssnews.net/

 ベンガル文字のロヒンギャ রোহিঙ্গাদের 動画検索をかけるとギリギリ生々しい動画やそれらをモザイクや一瞬にカットした動画を見つけることができます。

<資料>
私がニュースで拾った記事・twitter で拾った記事をブログにまとめました。前回からさらに追加しております。多言語によります。
  https://ameblo.jp/amalags/theme-10104147261.html

 (高校日本語講師&専門学校時間講師)

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