【自由へのひろば】

一水会の基本理念と綱領行動方針
― 戦後体制打破と対米自立 ―

木村 三浩


◆はしがき

 一水会について書けと、オルタ編集部の加藤さんから要請があった。すでにオルタに関係しておられる、学者、評論家、研究者などは、我が一水会機関紙「レコンキスタ」でも登場されているし、一水会フォーラム(講演会)の講師であり、執筆者でもある。そういうこともあって今回初めて一水会が目指すことと基本的な路線を含めて書かせていただくことにした。

 第一に強調しておきたいことは、われわれ愛国者の立場は、「六十年安保」を契機として、岸自民党とアメリカの手先によって合法化された、既存の親米保守勢力とは異なり、日本の自主独立を勝ち取ろうとする立場であることを明確にしたい。しかし、当時の右派が、戦後直後の混乱から、左派勢力と対決し、反共を最優先させたことは、全く意味が無かったことではない。それは、海外の勢力に使嗾されたイデオロギーからの「革命の防止」にあったからである。この一点において「反共」は意味を持っていた。
 だが、我が国の主体的な民族自決や変革の論理と陣形を構築できなかったことが、常に反革命としての烙印と立場を甘受せざるを得なかった弱点としてつきまとってきたのである。この非主体的論理の脆弱さを克服することこそが我が国の愛国者に求められている歴史的課題でもあるのだ。

 従って、前記、保守、右派勢力を私は、「親米ポチ」と呼ぶ。なぜなら彼ら保守勢力はアメリカの肝入りで育成された岸自民党とその後継者を支持する立場にあったからである。ましてや、戦後の叙勲制度の最大の汚点となったカーチス・ルメイに対する勲一等を授与した自民党(小泉純也元防衛長官)を我々は全く厳しく指弾する。日本に初の原爆を投下し、東京大空襲をはじめ、日本全土焼きつくした張本人である。この無辜の国民に対する大虐殺は戦争犯罪であり、戦後の日本が対米従属の路線で生き延びる道を選択することで不問に付したのである。
 また現在安倍自民党政権が進めている、トランプ大統領におべっかを使い、ゴルフ外交で屈従の限りを尽くし対米従属極まる政治姿勢に断固反対する。また対米従属の極まりである沖縄の辺野古基地新設は、自民党の良識派である翁長知事を先頭とするまさに左右の枠組みを超えた民族闘争として広がっている。我々もこれに呼応して現地への支援や東京などで安倍政権の対米従属を批判する行動を起こしている。アメリカ大使館や安倍私邸へのデモなどは、かつての安保闘争では左派勢力の独壇場だったが、今は左派勢力に代わって主体的に我々がアメリカ大使館や安倍首相私邸への抗議行動を展開している。

 原発問題についても我々の立場は明確である。福島原発事故の放射能汚染は、アメリカの原発を日本に輸入した結果であり、それを糺すためには「原発即ゼロ」こそが必要である。五十四基の原発が日本列島に存在することは、一旦緩急あらばミサイルやテロの攻撃目標となる。現状の形で原発を抱えていては、安全保障上からも愛する日の本の国、日本は壊滅する。以下にわが一水会の基本的立場を紹介させていただく。

◆一水会の基本理念 対米自立・対米平等の民族自主独立国家日本を目指す

 一水会は昭和四十七年五月三十日に結成された。昭和四十五年十一月二十五日に決起した三島由紀夫・森田必勝両烈士らの憂国の精神を継承すべく設立した団体である。戦後体制を打破し、対米自立・対米対等な真の独立国家を目指し、結成から一貫して民族自主独立の旗を掲げてきた。

【綱領】

 わが一水会は、昭和四十五年十一月二十五日「楯の会事件」での三島由紀夫・森田必勝両烈士の自裁を“戦後体制打破”へ向けた果敢な行動と位置づけ、両烈士らの魂魄を継承するため、昭和四十七年五月三十日、「保守の拠点か、変革の原基か」という思想的命題を掲げ結成した。当初の結成宣言は以下の通りである。

 維新を永久的浪漫対象とする吾人等は、「維新を阻害し停滞させる諸体制諸権力と対立し、それを打破すべく行動する」という立場を明確にし、変革者としての矜持を持ち尊皇義軍の精神による平成維新、世界平和に向けて、戦いの陣形を築くことを内外に宣言した。
 結成から今日まで四十数年が経っているが、これまでの戦いの中で基本的原則は一貫しており、今日においても生成発展を遂げるべく、より高いレベルで政治理念を集約化させ、対米自立、自主憲法制定、日米安保破棄、戦後体制打破を目指して、維新成就のために闘っている。

【基本理念】

 我々は日本の完全なる独立と、敗戦によって失われた日本国の誇りと民族の尊厳を恢復するため、我が国の歴史・伝統・文化を基調に戦後民主主義の誤りを正し、道義的国民共同体を創造する。また、日本のみならず、世界のあらゆる民族を尊重し、戦勝国を中心とした現在の国連に対抗する新たなる国際組織と世界新秩序の樹立に向けて邁進する。この趣旨の実現に向け、我々は自省心のある社会運動を実践し、維新変革の達成を期す。

【活動基本原則】

 一、世界各民族の尊重、連帯による新国連の建設
 一、日本の歴史、伝統、文化、精神の護持と発揚
 一、戦後体制を否定し対米自立による尊厳の回復
 一、戦後民主主義の誤りを正し、国民共同体の創出
 一、自省心ある社会運動の徹底と維新変革の達成

 上記基本原則の下、様々な形態の活動を果敢に取り組んでおり、現実の政治に影響を与え得る実践的な変革者の立場を維持し、日々研鑽と努力を重ねている。
 我が会の、より具体的な活動展開は、①自主憲法を制定すること、②東京大空襲、広島・長崎の原爆投下に対し、米大統領自ら現地を訪問し謝罪すること、③沖縄など日本国土から米軍基地を完全に撤去すること、④日米地位協定を見直すこと、④グローバリズムの市場経済簒奪主義から国益を守ること。
 これらの主張は、いずれも我が国の置かれている対米従属という現状を鋭く批判するもので、昨今ではさらに、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加への反対や、安倍政権による平成二十五年四月二十八日の「主権回復の日」記念式典挙行の欺瞞性を暴露し、真の主権回復を訴えるなど、活発に活動を展開している。

◆左右の枠を超えて対話討論で対米自立路線の広がりを

 我が会の活動の特色として、上記のような対米従属の現状に対する強い批判に加え、左右の枠を超えて様々な知識人・文化人・政治家らと積極的に議論を展開する点が挙げられる。多様な意見の尊重である。これらは、対米自立路線として集約されつつある。また、我が会は「対話の精神」を尊重し、相手を選ばず、呼び掛けがなされれば極力議論をすることを心掛けており、ダイアローグを大切にしている。これを常日頃より実践している。

 平成二十五年一月十二日、私は「平和力フォーラム」主催の竹島問題に関するシンポジウムに参加、同席した左派の論客(在日韓国人学者ら)を相手に、竹島や我が国の過去の植民地支配などの問題について活発に議論を交わした。
 また同年二月九日、同じく「平和力フォーラム」主催による尖閣列島問題に関するシンポジウムに参加し、再び左派の論客(在日中国人華僑幹部ら)を相手に論戦を展開した。こうした左右の垣根を越えた活発な活動は、定期的な著作の刊行、月刊誌の発行などにつながり思想と活動を形成している。これは、我が会の大きな特色の一つであり、戦前の左右の枠を超えて議論されてきた「老壮会」的な姿勢を目指すものである。

◆国際交流戦線

 さらに近年は、その活動の視野を国内のみならず海外にまで拡大している。以下に、海外における我が会の活動内容を述べる。

 我が会は湾岸戦争以降のイラク、NATO空爆後のユーゴスラヴィア(現セルビア共和国)等に訪問団を派遣、以来継続して交流を重ねていくことで同国との親睦を深めていった。特にイラクについては、イラク戦争開戦に一貫して反対し、平成十八年には処刑されたサッダーム・フセイン大統領の追悼会を我が国で唯一開催するなど、その関係性について、一貫して筋を通し、アメリカの覇権主義に反対している。この様な状況を継続して交流を深めていく姿勢と力量を維持していることが特色である。
 我が会はこの他にも、フランス、ドイツ、ロシア、リビア、シリア、マレーシア、オーストリア、ハンガリーなど、世界各国の愛国主義政党・団体と交流し、愛国者同士の国際連帯を構築している。平成二十二年八月十二、十三日にはフランス国民戦線のジャン=マリー・ルペン党首(当時)ら欧州諸国の愛国政党幹部を東京に招き、「世界平和をもたらす愛国者の集い」を開催。翌日にはルペン党首らとともに靖国神社を参拝した。さらに平成二十四年十月二十、二十一日には、フランス国民戦線のブルーノ・ゴルニッシュ氏が代表を務める欧州の愛国政党の連合組織「欧州愛国主義同盟」の第一回会議に私と一名が招待を受け、出席した。
 平成二十三年、平成二十五年には、グルジアからの独立を主張し、国家建設を遂行しているアブハジアに一水会代表として私が自ら訪問して、民族自決を支持する大きな連帯と成果を築いてきた。

 我が会は、こうした海外の愛国政党・団体との親睦と交流をより一層強化すべく、平成二十五年春、一般社団法人「世界愛国者交流協会」を設立した。その活動や交流に関しては、月刊『レコンキスタ』紙上のワールド・パトリオティック・ニュースというコーナーで報告している。常に時宜にかなった海外の愛国政党・団体の活動内容の紹介などを行っている。
 この主旨はやはり我が国の真の独立、主権の回復にあり、国際的な連帯を通じて、生の情報を取得するとともに、アメリカ発のコントロール情報に騙されない情報戦を闘っているものと指摘できよう。あまりにもマス・メディア等が発信する情報がコントロールに浸かり過ぎており、正しい認識がなされないことは、正確な政策判断が下せない、ということになってしまう。それによって、国益が損なわれてしまうことは、愚かであり、「売国的」であると言わざるを得ない。

 (一水会代表)

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