【コラム】フォーカス:インド・南アジア(39)

世界規模での「世界救助隊」の創設へ向けて

〜日本の国際貢献を考える〜
福永 正明

<一>トルコとシリアの大地震
 
 2023年2月6日、トルコ南東部のシリア国境に近いガジアンテプ市付近にて、マグニチュード(M)7.8の大きな地震が発生した。同日午後にも、近くにてM7.5の揺れが続いた。
 大地震直後より各国メディアは速報として報道し、残念ながら死者数は増加を続けている。2月14日時点では、死者は4万人に近く、5万人を超える規模の大災害となるとされる。連絡のとれない友人もおり、被災地の人びとに心を寄せたいと思う。
 本稿では、南アジアを直接の論点とはしないが、世界の大災害と日本の国際貢献について考えたい。

<二>日本の救援活動

 トルコ・シリア大地震発生日の6日、総務省消防庁は国際消防救助隊の先遣隊として18名(外務省1名、消防5名、警察3名、海上保安庁3名、医療班2名、構造評価1名、JICA3名、合計数は合致せず)を派遣、7日には消防12名(東京消防庁2名、福岡市消防局3名、広島市消防局3名、茨城西南広域消防本部1名、徳島市消防局1名、上越西南消防事務組合1名、宮崎市消防局1名)と、警察20名、海上保安庁11名、JICA9名、医療関係者3名、構造評価1名)の計56名を派遣した。
 また自衛隊も、2月10日に国際緊急活動実施に向けた準備のため2名を派遣、さらに「トルコ共和国国際緊急援助空輸隊」等を編組し、現地で活動する医療チームに必要な機材等の輸送のため航空自衛隊B-777特別輸送機(通常は政府専用機として使用)1機による輸送活動を2月13日に実施した。

 現地で部隊は、救助が必要な人の発見と救助活動を続けている。2月11日の14時20分頃には、日本派遣隊が活動の隣接する現場で活動していたトルコチームが女の子を救出。JDR・救助チーム医療班が女の子を診察し、無事を確認した。これは、災害発生後130時間ぶりの生存者の救助として大きく報道された。
 以上、各省庁のプレスリリースからの内容であるが、厳寒の気候、二次災害の恐れもあるなか、派遣された人びとが懸命に活動を続けている。

<三>日本の真の国際貢献のために必要なこと

 政府による緊急救助の取り組みは、評価されるべきである。だが、日本国憲法の前文において「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」し、さらに「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」とした国民として、抜本的な改革と異なる視点からの国際緊急援助の必要性を論じたい。

 筆者はこれまでさまざまな論考のなかにおいて、日本主体の世界規模での緊急災害援助隊(以下「世界援助隊」)の創設を唱えてきた。
 その「世界援助隊」とは、災害大国とされ毎年多くの人びとが自然災害のために傷つき亡くなることの多い日本が、世界に誇る国際貢献となる。

 具体的には、日本が中核となり全地球規模での「世界救助隊」を結成し、その拠
点を各主要大陸に置く。日本が災害救助の技術指導、機材運用指導などを担い、さらにその費用は日本国民が負担していく。各地の人びとを雇用し、訓練し、万一の災害時には即座に出動、駆けつける「世界救助隊」となる。これは平和国家としての貢献であり、わざわざ日の丸と付けたり、「日本」と名称に付する必要はない。むしろ、全世界市民の救助隊となるよう、国名など不要であろう。
 テレビ番組の「サンダーバード」の活躍を思いだしていただければ、想像できるであろう。つまり、日本は世界各地の災害救助に専念する国となり、費用は日本国民が全額を負担していくのも方法ではないか。資源もなく、市場もない日本が、災害に緊急対応することに専念することにより、日本の存在価値は大きく高まり、「信頼度」は増すことは確実である。

 国内からは、「そんなことよりも生活苦の人びとに金を」との声もあがるであろう。現実にテレビのモーニングショーでは、コメンテーターが想像力もなく、「私たちにできることはやはり支援する、寄付をするしかない」と、何の支援なのか不明なままテキトーな解説を述べている。

 しかし、私たちが平和に、そして、世界のすべての人たちが平和で幸せに暮らせるようにすることこそが、今の時代において日本ができる最大の貢献であろう。
 日本の負担する費用は、不必要な軍拡費用を削減すればよい。
 憲法改悪反対、軍拡反対との声は強い。ではどのように具体的に私たちの平和、世界の人たちの安全と平和を守るか。信頼される国としての日本となるためには、本論のような大きなスケールでの意見も追求してよいのではないだろうか。
 トルコとシリアの大地震への募金活動が開始されている、もちろんごく普通の市民の気持ちを形にすることは重要であろう。だが将来において、日本国として、いかなる国際貢献、信頼の獲得を行うかを大胆に考えることも重要であろう。 

 憲法前文「平和を愛する諸国民の公正と信義と信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」ことを忘れてはならない。軍備拡張でのデタラメな「抑止力」に惑わされず、本当のごく普通の市民たちの信頼をいかに得て、それを維持して、日本の安全と平和を保つのかについて考えていきたいと思う。
 トルコとシリア大地震の多くの被災者のことを思いつつ、空想と冷笑されるかもしれないが、しかし現実へ向けた提案としたい。

福永正明(ふくなが まさあき)
大学教員

(2023.2.20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧