【コラム】中国単信(94)

中国茶文化紀行(31)多彩な花茶世界

趙 慶春

 花茶には(1)「窨花」と「提花」の技術で花の香はあるが、花は入っていない花茶 (2)「窨花」して「提花」しない、花の香があり花も入っている花茶 (3)香料をつけた花茶 があることを紹介してきた。ここでは花茶の仲間を三つ紹介したい。

 1,造形花茶

 ばらばらの茶と花を繋ぐ技術で一つの塊(基本的にボールの形)に加工して、湯を注ぐと、茶葉と花が伸びて茶湯の中で広がり、花の香や味だけではなく、綺麗な花の形となる花茶である。
 「造形花茶」は湯を注ぐと花が茶湯の中で次第に開いて、綺麗な花になるように茶葉と花が想定どおりに伸びる優れた加工技術が求められる。「造形花茶」は芸術性に富んだ茶と言える。そのためか「造形花茶」の名前は「茉莉花茶」「桂花茶」「菊普茶」のようにシンプルな名前ではなく、たいていは文学的、ロマンチックなネーミングとなっている。「造形花茶」に使われる茶はほぼ緑茶で、花は1個から2、3個の場合もある。

 たとえば、「拈花微笑」(造形花茶の名前、以下同じ)は金盞花(キンセンカ)2個と茉莉花1個、「囡児春」は金盞花1個と茉莉花8個と千日紅(センニチコウ)1個、「紅色恋人」は茉莉花7個と千日紅1個、「花言茶語」は百合花と桂花(木犀、キンモクセイの花)3g、「蝶恋花」は菊花1個と茉莉花1個と千日紅1個、「花開富貴」は百合花1個と桂花0.3g、「東方佳人」は金盞花1個と茉莉花3個といったように使われている。
画像の説明
 (写真1:「青出於藍」は茉莉花、千日紅と菊花を使用)
 (写真2:「造形花茶」は「工芸花茶」とも呼ばれる。またボール形ではない場合もある)

画像の説明
 (写真3と4:「工芸花茶」に湯を注ぎ、花が咲いたもの)

 2,花の代茶飲

 「代茶飲」とは茶ではないが茶と名付けられた飲み物で、まったく茶は入っていない。茶が生産できないため、「小麦粉」と胡麻など多様な果実を炒めた中国東北地域の「油茶(麺)」はその代表例だろう。最近は乾燥させた花に「茶」の名前をつけて売り出している。たとえば、乾燥させたローズの花を「ローズ茶」として売っている。このような「花」の代茶飲は花の美容効果や健康効果が注目され、次第に人気が出始めている。

画像の説明 
 (写真5:菊の花の代茶飲)

 こうした「花」の代茶飲に湯を注いで飲むのだが、花を茶湯の中に入れ、自家製の花茶として飲む人も少なくない。

 3,花だけではなく、ほかの飲食物も入った茶

 これらの茶にはまだ正式な名称や分類がない。以前紹介したモンゴル民族の喫茶法で喫茶段階で、ミルクや牛肉、羊肉類や乳製品などを茶湯の中に入れる茶を、筆者は「添加茶」と呼んでいる。「添加茶」についてはまた紹介するが、今回は花も入り、ほかの飲食物も入っている「調味茶」を紹介しよう。

画像の説明
 (写真6と7:ドイツ製「芒香白茶缶装茶」。原材料は緑茶、白茶、パイナップル、マンゴー、竹の葉、菊の花、食用香料)

 このような「調味茶」は中国や日本ではなかなか見当たらないが、中国の少数民族地区や欧米に一定の人気がある。また、写真8と9のような、花が入っていないものの、乾燥した柑橘類の皮に茶の葉を詰め込んで熟成させた茶は健康によいと言われ、一定の人気がある。

画像の説明
 (写真8:プーアル茶が入った小青柑茶)
 (写真9:台湾の酸柑茶)

 (大学教員)

(2021.08.20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧