【コラム】中国単信(116)

中国茶文化紀行(53)

~宋代の添加茶⑤ 擂茶(台湾擂茶を例に)
趙 慶春

 「擂茶」(レイ茶)は中国南方、特に湖南、湖北、江西、福建、広西、広東、四川、貴州、台湾という広い範囲で愛され、日常的に飲まれている添加茶である。「擂」は「すりつぶす」という意味であり、「擂茶」は多様な食材や漢方薬草を茶と混ぜ合わせ、すりつぶしてから湯を注ぐか、煮込んで飲む。この独特の飲み方はモンゴル奶茶(飲み方の類似性からチベットの「酥油茶」を含む)と並んで少数民族の喫茶方法として双璧と言える。
 日本ではあまり知られていないので、筆者が台湾で体験した観光客向け「擂茶」の楽しみ方でその基本作法を紹介しよう。

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(写真1)                   (写真2)
(写真1)台湾新竹北浦老街の「三十九号」という店は台湾の観光客向け体験型「擂茶」の創業店で、筆者が今回の調査で訪問した店でもある。
(写真2)大陸各地の「擂茶」は緑茶や紅茶を使うケースが多いが、台湾新竹はウーロン茶・東方美人の産地なので、その東方美人茶を使う。
手順一:道具と原材料の準備。

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  (写真3)                  (写真4)
(写真3)「擂鉢」、「擂棒」という基本の道具。そして基本原材料である「茶、ピーナッツ、ゴマ」を「擂鉢」に入れておく。
(写真4)ほかの原材料。「上」は炒り米である。「下」は「蒸青緑茶穀物豆類粉」である。

「蒸青緑茶穀物豆類粉」とは下記写真5の各種の穀物や豆類と蒸青緑茶(蒸し製緑茶)を粉にしたものである。穀物や豆類など添加物。地域によって中身は大分異なってくる。

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(写真5)

手順二:茶と添加物を一緒にすりつぶす。

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  (写真6)                 (写真7)
(写真6)写真3の「擂鉢」に入れておいた原材料をすりつぶす。「擂りつぶす」のに時間も力もかかる地味な作業である。
(写真7)ピーナッツやゴマの油も出てきて、最後は「味噌のような状態」になる。

手順三:写真8のように「蒸青緑茶穀物豆類粉」を加えて、混ぜる。
この「蒸青緑茶穀物豆類粉」は、観光客向け体験型「擂茶」では事前に準備してあるが、本来は穀物や豆類、地域によっては野菜類、漢方薬品類、ないし塩、あるいは砂糖など、すべてを「擂鉢」に入れて擂りつぶす。それだけ時間と労力が必要となる。
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(写真8)                  (写真9)
(写真8)「蒸青緑茶穀物豆類粉」を「擂鉢」に加えて、混ぜる。

手順四:均等に混ぜたものを喫茶茶椀に分けた後、事前に淹れておいた茶の湯を注いでよく攪拌する。
(写真9)筆者が調査した時に使った茶の湯は同じ台湾産ウーロン茶。

手順五:味を調整して飲む。
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(写真10)
(写真10)擂り粒した各種原材料の粉と茶の湯の量のバランスで「擂茶」の味を調整する。個人の好みで炒り米を入れても良い。

(2023.6.20)
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