◇北の便り(8)

予算編成で地方自治体は四苦八苦  北海道庁、職員給与を10%カット

                      南  忠男
──────────────────────────────────

◇職員給与の削減と住民負担の増大
 
今の時期は各地方自治体とも新年度の予算編成でおおわらわであるが、税収減・地方交付税のカットによる歳入不足や公債費(借金の利払いと償還)扶助費(「生活保護費」等に対する地方負担分)等々の義務経費の膨張で容易に予算を組めない状況に追い込まれている。

 これまでも、特別職(助役・収入役等)の廃止・減員、議員定数の削減や、首長・
三役の報酬のカットをすすめて来たが、これだけでは追いつかず、職員定数の大幅削減、賃金の大幅カット、自治体独自の福祉施策の圧縮、公共料金・使用料・手数料等の引き上げによる住民負担増によってようやく予算編成ができると言う状況である。

 北海道は財政再建団体転落の危機に追い込まれているが、職員給与のカットや、
人員の削減で乗り切ろうとしている。道知事は、職員の給与10%削減を提案し、労
使交渉がもつれて、スト突入1時間前に、道側のわずかな譲歩(退職手当削減の撤回)により妥結されたものの問題の先送りにすぎず、将来に大きな課題を残している。道の提案した職員給与の10%削減は、06年度からの2年限定としているが、08年度以降の展望も立たないのが実態である。

 職員給与の削減は、道に限った話ではなく、7割以上の市町村ですでに実施されている。予算編成寸前の駆け込み妥結では、旭川市の6%削減(市側の当初の提案は7%)があるが、苫小牧市では、4.77%カットの当初提案を一歩も譲ることなく、労使交渉の決裂のまま、市長は給与条例改正案と、給与削減を盛り込んだ予算案を議会に提案した。

◇「小さな政府」に追従する「小さな道庁」

 道知事は職員給与の10%削減に引き続き大幅な職員の削減計画を発表している。10年計画で、前期5年で22%、全期間でも30%以上の削減をもくろんでいる。職員の退職による欠員不補充、業務の民間委託、出先機関の統廃合、札幌医科大学(道立)の地方独立法人化等々課題を羅列しただけで、現在の道の組織機構・人員配置のどこにムダがあり、どのように改革するのかの、指標も示されていない。只、22%、30%以上と言った数字だけが踊っているに過ぎない。小泉・竹中の「小さな政府」に対応した「小さな道庁」で、中央政府の猿真似と追従以外のなにものでもない。

 道政のこのような姿勢からは、道内の全ての市町村が、収入減と義務的経費の膨張で収支の均衡を失し、予算編成で四苦八苦しているとき、市町村を包括する広域自治体として果たすべき使命の片鱗も窺えない。中央政府に従属することは、結果的に政府の地方切捨てに加担することとなり、自分自身の首を絞めることになる。

 小泉改革で地域間格差が拡大し、北海道は大変厳しい状況におかれている。二人以上の世帯収入を合計した「勤労者世帯実収入」(総務省の家計調査)によれば、05年の道内の月額は43万9千円に落ち込んだ(全国平均は、52万2千円、沖縄を除く地方別では最も低い)。有効求人倍率が全国で1.00倍に回復したと言われるが、道内は0.63倍と大きな格差があり、臨時や季節雇用、道外からの求人を除けばさらに低くなる。生活保護(保護受給者数を人口で割った保護率)は全国の二倍になっている。

 元気のない北海道において、トリノオリンピックでの北海道出身選手の健闘だけ
が期待される。(2月14日記)(筆者は旭川市在住・元旭川大学非常勤講師)。

                                              目次へ