■俳句 富田 昌宏
───────────────────────────────────
縫目なき空の青さや稲の花
稲の香や生涯此の地守らむと
職退いて野良人となる新酒かな
積み上げし本の崩るる残暑かな
掘井戸の蓋打つ音や桐一葉
桐一葉牛の瞳に嘘はなし
秋高し牧場の牛の背番号
紅は雨聴く色や萩の花
(妻新盆二句)
新盆やつとに増えたるひとり言
栗茹でヽ湯気もろともに妻の霊
-----------------------
◇「 蚯 蚓 鳴く 」
平成20年度栃木県芸術祭文芸作品・俳句の部入賞作品*
-----------------------
農に生き土に還る身蚯蚓鳴く
代掻くや心の起伏均しつつ
頷きしごと田植機の動き出す
初筍秘仏のごとく掘られけり
突っ張って乾く野良着や風五月
日々平穏じゃがいもの花咲きにけり
蚊を打ちて仏心揺らぎゐたりけり
睡蓮にうすくれなゐの羞恥あり
南部風鈴関東弁に馴染みをり
夏蝶や六法を踏む石舞台
(作句者は俳句結社「柿の木」代表)
-----------------------------------------------
*この作品は随筆・詩・短歌・俳句・川柳など各部門ごと
に文芸賞(1名)準文芸賞(2名)文芸奨励賞(5名以
内)で富田昌宏氏の次の作品が準文芸賞に選ばれました。
オリンピックでいえば、いわば銀メダルです。
目次へ