【あなたの近くの外国人(裏話)(67) 】

入管法から「難民」「避難民」「在留資格」を考える④

坪野 和子

  現在私はまだ依然として新潟東港でパキスタン出身の友人の介護、いやボランティア家政婦をしている。このメールマガジン発行の頃は、とりあえず東京圏の自宅に戻っている予定だ。ここにいて、毎日パキスタン発信のテレビニュースを観ている。パレスチナの人々の様子が心を痛める。自宅に帰ったら配偶者が日本のテレビを長時間見ていて、それを脇で聞くことになるのだが、おそらくイスラエル側の、いやアメリカの…。ずっと次回こそ踏み込んだ内容をと思っていると、様々な問題に接近してくるので話しが進んでいないこと、ご容赦願いたい。今回は私の身近なトピックを述べさせていただく。
 
1.「イスラエル・ガザ戦争」のニュース

1-1.「イスラエル・ガザ戦争」イスラム圏の報道から

 この原稿を書き始めた頃は『イスラエルとパレスチナの「戦争」について』と打っていた。パキスタンのいくつかのニュース・チャンネルで、イスラム圏の国の報道と映像によって9月29日と10月2日に「パレスチナの南でイスラエルによる空爆があった」と伝えていたが、曖昧な情報では空爆ではなく、ミサイル実験だったようだ。その後、10月7日と9日にハマスが攻撃、イスラエルが空爆、後は私たちが知る情報と同じような時系列である。
 しかし、眼にする画面がまったく違う。瓦礫から子どもを救い出し、抱きかかえて病院に行く父親。小さな子どもたちと共に怯える母親。老夫婦が着の身着のままどこかから避難してきた様子。また「ガザ」ではなく、攻撃されているエジプト国境近い狭い地域の名マルトーと放送されていた(地図を確認したが地名の綴りが何通りもあった)国境を抜けるにはエジプトが助ける気にならなければならないが入れて貰えなかった様子も見た。
 ただ唯一、日本で見られない様子が私の心を温めてくれた。イスラエル側であるがユダヤ教の正装である帽子とヒゲと長いコートを着用した男性たちが「戦争を止めろ」と静かにデモをしている様子だ。これは双方に対するものだ。早く停戦に持ち込んでもらえると嬉しい。なお、日本はダブルスタンダードであるが、国連認定の「パレスチナ難民」はお金を出している。パレスチナ・アラブ人の人口の半数以上が難民である。今、約500万人が留まっていることになっているのだが、ヨルダン、レバノンなどの受け入れはどうなっているのか知りたい。

1-2.「イスラエル・ガザ戦争」インド人IT学習者らと語りあう

 私はオンライン授業の始めに日本語中心のフリートークでスタートしている。話題の多くはこの「イスラエル・ガザ戦争」のニュースに集中した。インド人学習者は今全員ヒンドゥー教徒である。全員一致したのは
 「避難できるといいですね」
 「今回はイスラエルに問題があるのだが、今までのハマスのやり方があったので…イスラムの住民には同情するが」※案の定、人質をたくさん取った。
 「どちらが悪いのではなく戦争そのものが悪い」
 1人を除いて「第三次世界大戦になるのではないかと心配している」
 ここでイスラムという言い方がひっかかった。ムスリムではなく、パレスチナでもない。多宗教・多民族・多言語のインド人ならではの言い方かもしれないと思った。

 「戦争になると子ども・女性・老人・障碍者が危ない」
 「私はアメリカが怖い。ウクライナもガザもアフガニスタンもバルマ(ミャンマー)も。中国・ロシアと北朝鮮がアメリカと直接戦うことがないですから、他の国でやる(代理戦争)」
 「ミサイルをたくさん落とすとお金が移動します」
 「タミル語で解説を聞いていたら、イスラエルが何か仕掛けてきっかけがあったらジェノサイドまではやらずとも追い出したいという意図があるかもしれないとのことでした」(英語ミックスで話した※「ず」「ぬ」の否定の練習になった)
 「UKの三枚舌(※初めて覚えた日本語・二枚舌)はまだ世界に問題を残している」

 1人中級レベルの学習者が「戦争をしない国はどこでしょう」と言った。非武装の国々や中立国を確認した。日本の憲法9条の英文も読んでもらった。放棄、自衛隊など漢字も確認した。彼女は以前から地理・歴史が苦手(理数系女子)だと言っていたが、日本語でそれらを勉強することになってしまった。この日はテキストがほとんど進まなかった。もっと憲法9条を自信をもって堂々と話せたらよかったのだが、「日本の建前は…」ともいうことができなかった。私自身は自衛隊完全否定派ではないが、アメリカの基地がある国だということが…ちょっと.
(※初級最後のほうで覚える日本語用法)
 
 参照 2023 Military Strength Ranking 
 自衛隊強し!(5位から8位にダウンしているが)
 ウクライナもランクが戦争前25位から15位に上がっていた!
 日本人が心配しているイランだが軍事力ダウン中。
 https://www.globalfirepower.com/countries-listing.php
 
2.日本語学校の留学希望者が増えている

 今、私は困っている。私のパキスタン人生徒のことだ。ある日本語学校のSkype面接に合格した。ところが、その学校は大口の入学希望者を持つ現地校と契約をしたらしく、なんと!補欠キャンセル待ちとなってしまった。その学校は今までホームページにベトナム語がなかった。推測だが、ベトナムと契約したのではないだろうか。書類もすべて揃えた。その書類の数の多さ・煩雑さ。そこまでやったのにもかかわらず…なのだ。
 彼は足掛け4年、おじいさんの介護をしながら日本語の勉強をしていた。おじいさんが遠くに逝ってから就職し、長い労働時間の隙間に勉強していた。コロナのロックダウンでE-ラーニングで勉強していた。150時間学習は日本語学校必須の条件だ。まったくゼロの初心者は受け付けていない。実に400時間を超える学習時間だ。ただし、発達障害グレーゾーンのため、普通の1回分が3回から5回くらいやらないと覚えない。しかもパキスタンの教育が「教え込み」なので、インド人に教えるように、自分で考えさせたり、質問させたり、理解できなかったことをはっきり伝えたりといった方法では覚えてくれない。昔の日本のように丸暗記させるしかなかった。しかも文法より語彙に興味を持ちすぎる傾向があり、パキスタンの学校教育がインドよりはるかに遅れていることも影響していると思う。またカラチは無計画停電・計画停電、ネットワークエラー、しょっちゅうだ。さあ授業を始めるぞ!と思った途端に、または反復練習をさせている最中にこんなことが起こる。それでも続けてくれていた。
 彼は、パキスタン人には珍しくウソのつきかたを知らないし、おじいさんの介護を1人でやるくらいだし(叔父さんは日本にいる・両親は離れて生活している[父親はセールスマンなので不在が多い]・イトコたちは学校の寮)話しを聞いてもココロやさしい。こんな子が入学できないなんて日本の損失だ。他の学校に当たってみた。いまのところ全て定員が埋まっていると言われた。国の名前を言った途端、それを言う学校もある。

 ぶっちゃけで教えてくださった担当者がいらっしゃる。数人の話しを1人のようにまとめると「今、入管が留学生の審査に対して緩くなっていると言われています。特に、欧米・中国・ベトナムであれば、書類に多少問題があっても現地校の信用で通りやすくなったりもしています。日本留学は人気が出ているんですよね。技能実習制度がなくなるという噂も影響していると思います。とりあえず日本に入国してしまえば、進学も就職も考えやすくなりますし、在留資格変更のほうが最初から特定技能で日本を目指すより楽ですからね。そして、仕事をしたいというより、アニメや日本料理や文化面での勉強をして帰国したいという、ま、本来の日本語学校の意義を求めている人もいるんですよ。それと、やはりパキスタンもそうですが、バングラデシュ、スリランカ、イランといった国からですと、それだけで入管の審査が厳しくなるので、日本語学校としても入管に通りやすい国から優先順位を付けざるを得ないところがあるんですよね」
 なんか差別を感じるがそれでも問い合わせは続けるつもりだ。私はまだ諦めない。

3.留学生が進学で困っている

 以前にも少し書いたことがあるインド人男子のこと。まだ私を「おばあさん」と呼んでくる。いい加減日本語の文化に気づいてほしい。優秀なITエンジニアや通訳者に日本語を教えている私からすれば、日本語学校でなにを勉強しているんだと言いたい。3月には卒業予定で、専門学校に進学したいとのことだ。これまた「留学生の一次募集は終わりました」とやはり狭き門だ。普通なら日本語学校から専門学校を紹介してもらえるはずなのだが、彼が在学している日本語学校は不祥事を起こしたからなのか、紹介できなさそうである。以下のリンクを参照されたい。

 出入国在留管理庁が日本語教育機関の告示を抹消 未来の杜学園日本語科(仙台・青葉区)東日本放送 https://www.khb-tv.co.jp/news/14954053
 日本語学校、留学生から「100万~300万円違約金徴収」の誓約書…入管庁が処分
 読売新聞 https://www.yomiuri.co.jp/national/20230711-OYT1T50087/

 私個人は、この学生たちはお約束違反だと思う。卒業することを前提に学生ビザを出してもらう手続きをしてもらったのだ。この時まだ留学の在留資格を持ったままのはずだ。違約金が高額なのは実際には中退しないだろうという予測の下で誓約書を作ったのだろうと思うが、高額すぎるのは、この日本語学校の間違いだとも思う。まあそれだけ、なんでもいいから日本語学校に入って日本に在留したいだけの人は潜在的にたくさんいるのだろう。円安で魅力がなくなったと言われているが、英語ができない人たちにとってはまだまだ魅力がある国のようだ。

 …ということで、在学生には、とばっちりもいいところだ。このインド人男子のように。インド人で日本語学校にいる人たちは現地の大学受験に失敗したらしき様子もある。さすがに訊きだせないが。このインド人男子はなんとか自分で学校をみつけるしかなさそうだ。

4.ビザブローカーのカモになりやすい状況

 最近、現地日系企業に就職した通訳コースの生徒。ずっとどうしても日本で日本の企業に就職したがっていた。3回、日本に来て通訳の仕事をしたこともあったので、なおさらだ。秋葉原で買い物したいとか、どうしても日本に住みたかったようだ。就活サイトをいろいろ見たが、国内在住者のみの募集ばかり。通訳はネイティブ日本人ばかり。では特定技能と思ったら、ずっとホワイトカラー業務しかやっていないし、ヴェジタリアンのため、飲食・食品関係は不可能だ。では日本語学校でとなると日本語学校側から年齢を理由に断られる。ではどこか直接雇用で就労ビザをと思ってもIT以外のそういう募集は、ビザブローカーの罠が潜んでいる。金はいくらでも出すからビザを作ってほしいなどと言ってしまったら、観光→難民申請か不法滞在をおすすめされるのが目に見えている。カーストが高いので難民申請など受け付けて貰えるはずがない。誰かに、どうしても日本で仕事がしたいと個人的に絶対に話さないでくださいねと。悪い人たちがいるので彼の当時の状況ではカモになるかもしれないと思った。しかし、現地日系企業で就職が決まった。今まで彼の日本語力では難しい企業の通訳もこなしていたのだが、分不相応だった。今の企業では彼の等身大レベルで入り込んでいこうという姿勢が見られる。よかった。
 
[おまけ]続「ねずみ駆除」と「海外で勘違い動画が出回っていた」

 ◆続「ねずみ駆除」
 前回、「ねずみ駆除」は解決したと思っていたが、その後、2匹捕獲し、本解決となった。最後のねずみは、まず外で「ぎゃお、ぎゃあああ、にゃお」というけたたましい声が聞こえてきて、その数時間以内くらいだろうと思うが、ねずみが「ホイホイ」に掛っていた。「ねずみ、かかった」と言ったら友人は「なに?」ああ、「かかった」という日本語、「かける」「かかる」が多様なのでまともに覚えていなかったようだ。そのねずみはそのままゴミとして火葬した。翌日から一匹も家の中には来ていない。ねずみは乱婚の動物とされているが、このねずみたちは捕獲状況から一妻多夫だったように感じる。法でしばられない動物、人間より猫の威力など感じていた。…ふと、一夫多妻でそれぞれ奥さんが違う国から呼び寄せられて家族在留している家庭があるが、これOKなんだって思ったことを思い出した。…ここまで打って、また天井から足音がした。
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 ◆続「海外で勘違い動画が出回っていた」
 前回、入管の収監職員を警察と間違えた動画を送ってくれたので、警察じゃないよとメッセージを返したら、新たな動画を送ってきた人がいた。動画はTiktokの Mobile studio Japan(パキスタン出身者)。本当の元リンクが見つからないので概要を述べる。しかし大元はYOUTUBEでシンハラ語によって挙げられているようだ。
 新潟県警に職務質問のため、車を止められたスリランカ人の男性。「しゃべつしている」(差別している)「人間妨害やってる」(人権侵害を誤って覚えたのだろう)。Uターンが怪しまれたらしい。所持品を見せ、なんでもないとわかると「おまえら、入管、私の国の人、殺した」と叫んでいる。警官たちは「ご協力ありがとうございました」と言い、男性は「ごめんなさいを言って」と言った。このやり取りが3回行われていた。
 さらにもう一本。自国の警察が人権侵害そのものの上、叩きながらしょっ引いている動画を送ってきた。
 そして、電話がきた。「ははははは。あなた、言う通り、日本の警察、弱いね。『ありがとう』言って、ごめんなさい(脱帽)しているね。私の国、警察、恐いね。日本、イミグレーション、恐いね。警察より怖いね。こんな国、(日本以外に)どこにあるね」
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(2023.10.20)
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