【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(68)

入管法から「難民」「避難民」「在留資格」を考える⑤

坪野 和子

 現在私は…が最近、本稿の冒頭定型のようになってしまった。これは私自身が12月1日から出入国管理及び難民認定法施行令とその規則の一部を改正されるまでに少なくとも難民のみならず在留資格に関する問題、それと入管vs?警察vs?各省庁?問題やAI活用提案などまで論文に近い構成で分析を進めるつもりだったのが、私が述べたいと思っていたことに関わる生々しい事実や話題や噂が締め切り近くなると飛び込んでくる。今回はもうすでに満杯だ。これ以上は12月を意識せず、このペースで進めるつもりだ。
 でやはり現在私は新潟東港でパキスタン出身の友人の介護、いやボランティア家政婦をしている。実は10月半ばで一旦東京圏の自宅に戻ったのだが、パキスタン国籍の教え子のお父様がこの土地で亡くなり、しかも不法滞在者扱いになっていた。書類の読み書きならこのコミュニティにいる日本人配偶者や日本育ちの子どもで充分用が足りる。故人が起こした問題について話したいから表に出ないでいいから相談に乗って欲しい…という言い訳で…言い訳である。
 
 前回と同じ:このメールマガジン発行の頃は、とりあえず東京圏の自宅に戻っている予定だ。ここにいて、毎日パキスタン発信のテレビニュースを観ている。パレスチナの人々の様子が心を痛める。自宅に帰ったら配偶者が日本のテレビを長時間見ていて、それを脇で聞くことになるのだが、おそらくイスラエル側の、いやアメリカの…。ずっと次回こそ踏み込んだ内容をと思っていると、様々な問題に接近してくるので話しが進んでいないこと、ご容赦願いたい。今回私の身近なトピックを述べさせていただく。
 
 …今回も、まったく同じ状態である。今回は、バングラデシュ、パキスタン、川口市の順で述べよう。
 
 [概要]
 1.バングラデシュにおけるロヒンギャ
 大きな問題になっている。難民キャンプではなく誰の土地という訳ではない共有の山を好き勝手に占拠し犯罪行為を起こしている。

 2. パキスタンのアフガニスタン難民問題とテロ対策
 11月8日にカッカール暫定首相が約1時間の記者会見を行った。主にアフガニスタン不法移民に関して、旧ソ連の近隣諸国との査証発給、近隣諸国との外交など。
 3. 隣の道路でヘイトスピーチぎりぎりのデモを目撃した
 先月の一時帰宅で川口のドゥルガ供養のイベントに行った。ここでは新旧の交流を楽しんだ。デモでははっきり言及してはいないが、自称クルド人による迷惑・犯罪に近い問題・マナーの琴線に触れる数々の行為への怒りを持った市民が国粋主義政党のデモに参加することになったのではないかと感じた。
 
画像の説明 

 1.バングラデシュ ロヒンギャが無法地帯を作ってしまっている
 本連載でロヒンギャ問題を扱ったのは2017年10月11月である。あれから6年以上が経過した。本年2023年10月9日。インドのベンガル語(バングラデシュと西ベンガル州[コルカタ/旧カルカッタが首都]公用語)ニュースでロヒンギャによるインド・バングラデシュ同時多発テロが報じられた。

画像の説明 
 https://www.youtube.com/watch?v=Sw302XIdfYc

 彼らはやはりミャンマー政府が言うようにテロリストだったのか…と思うのは早計だ。正式に?難民となったロヒンギャとは限らない。難民だったのかもしれない。そして、バングラデシュの市民の慈悲による食料提供には限界があった。難民キャンプに閉じ込められていた人たちだけでなく、その後、歩いて国境を渡って行方不明になった人など数が多すぎて把握できるはずがない。ロヒンギャも襲撃された村以外に住んでいた人たちもいる・いた。歩いて国境を渡る…手引きできる人さえいれば、ミャンマー→バングラデシュ→インドなんて問題ない。お金も食べ物もないなら組織に操られるなんて簡単だ。実は、これを打つ前にバングラデシュのロヒンギャ問題をバングラデシュ市民目線で述べるつもりだった。ここからは、用意していた内容を述べよう。
 ある日、バングラデシュ出身、小さな島の漁村出身の日本国籍取得者の友人とIT学生の人材確保のための日本語学校を設立するビジネスミーティングに出かけた。彼は将来貧しい小さな島の人たちの食・職を支援したいと。私は教育で参加したい。そこまでは仕事と慈善のお互いの夢の現実の話しだった。雑談をしているうちに話題はバングラデシュにいるロヒンギャ問題となっていった。
 「ロヒンギャ、バングラデシュで今、大変。最初、可哀想だと思っていたけど、何年も経つといろいろ問題が出て来るもんですね」
 「あれだけ大勢だといい人悪い人いろいろだし、いい人も悪くなっちゃうだろうし」
 「世界の人たちは、ロヒンギャが今もコックスバザールの難民キャンプで暮らしているとでも思っているんでしょうかね。山のほうで今、ロヒンギャが危ないんですよ。誰の土地でもない『村の山』に勝手に住んで、大麻の栽培をはじめちゃったんですよね。その上、山の近くに住んでいる人の家に強盗に入るし、難民キャンプにいないロヒンギャ、絶対ヤバい」
 その後、会話はロヒンギャに便乗した偽装難民の話しや歴史を辿って日本と英国が第二次世界大戦中に煽った対立が原因なのに他人事で知らん顔しているのはどうかと思うといった共通の感想を語り合った。彼はハシナ政権側にあるようなので原初のロヒンギャ受け入れに対する批判は出てこなかった(とはいえ日本人だ)

 2.パキスタン アフガニスタン不法移民・難民の帰還・退去が始まる

 パキスタンにおけるアフガニスタン難民受け入れは今回のタリバンの政権奪回以前のソ連侵攻くらいからである。今回に関しては受け入れ人数が100万人を超えている。いや、受け入れたはずではない不法滞在者も山ほどいるようだ。自国の経済危機の下である。パキスタンでは特別な難民キャンプがある訳ではない。国内のスラムはアフガニスタン人が多く住む。この劣悪な環境で第三国に出られればラッキーだ。出ることも戻ることもできない。出る・戻るには手続きや金銭と袖の下交渉などが必要だ。また緊急避難して脱出してきた家族も少なくない。
 大変な人が多いなか、アフガニスタン人による犯罪も増加している。マリファナ、ハッシシなどは今回の大量難民以前からアフガニスタン密輸入品である。日本でも大学生が捕まったくらいなのだが、向こうの高校の寮生活学生も似たようなことをやっているようだ。難民が増えてからの薬物流出量は摘発数の増加からも伺うことができる。高級茶葉とか宝石とかを持ち込んで逃げているのとはわけが違う。またパキスタンは銃の携帯が自由なのでロシア、アメリカのお下がりの武器なども持ち込まれている。個人両替商=ブラックマーケットで偽米ドルが多量に見つかり摘発されている。
 犯罪のみならず、テロも増えている。パキスタン軍が撃退したテロリストの遺体からはアメリカ軍お下がりヘルメット・軍用ベルト・機関銃などが押収されている。最近何回か連続して起きた自爆テロのテロリスト遺体はアフガニスタンの帽子や衣類が発見されている。これらは私もテレビで観たが間違いなくアフガニスタン人テロリストだろう。
画像の説明 
 
 こうした中、10月29日、パキスタン政府はアフガニスタン人不法滞在者の「強制送還」を発表したと伝えられた。
 
 パキスタン 不法移民の強制送還 アフガニスタン人の安全に懸念
 2023年10月29日 7時54分 NHK
 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231029/k10014240971000.html
 
 一応英語と和訳で確認してみた。BBC
 https://www.bbc.com/news/world-asia-67259108
 [和訳]タリバンから逃れたアフガン難民、パキスタンが強制送還 「人権の大惨事」を国連が懸念 2023年11月2日 BBC 

 https://www.bbc.com/japanese/67283144
 これは難民全てといっているのではないと思った。難民認定された人々ではなく不法滞在者を対象としている。また第三国出国予定の人々は対象になっていなさそうだ。「強制送還」は始まったようだ。翌日から現地テレビニュースでは「難民の帰還が始まった」と伝えられている。どうやら私たち(彼らからみた)外国人のイメージと違うようだ。国境でアフガニスタンIDカードを見せ、家族とともにトラックに乗っていく様子。中には嬉しそうにしている子どもたちの様子もあった。私が感じるに、子どもにとって政治は関係ない。同じ貧しい生活をするのであれば自分の故郷のほうがいい。パキスタンのほうが五十歩百歩で安全かもしれないが逃げてきた人たちとともにタリバンのテロリストが一緒にパキスタンに来ているのだから。小型船で川を渡って帰還する人たちの様子も目にした。パキスタンの報道なのでそういう様子を見せたかったのかもしれないが、恐くて間違って逃げてしまったものの帰れなくて困っていた人たちを戻してあげているように見えた。国境警備の人たちは日本の入管職員ほど怖そうではなかった。またパキスタン経済危機で仕事に就けず、日用必需品が値上がりしている。どうしても母国に帰れない人たちはイランや旧ソ連の「スタン」国などを目指すことになるだろう。
 10月8日。カッカール暫定首相が記者会見を開いた。
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 記者会見の内容は主に近隣諸国との外交に絞られていた。テーマを決められての質疑応答のようだ。暫定首相なので経済問題を問いただしても長期政権ではないし、この国は首相逮捕、国会指名首相、首相代行、そして選挙前の暫定首相というパターンで政権が動いている。暫定首相の役割は外交関係の方向性を国民に伝えることのようだ。記者会見中、日本では「お手短に」と司会が伝えるが、パキスタンでは首相自ら「1秒ね」と「お手短」で記者を指名していた。インドとのカシミール問題は次の首相に譲る内容なので「前向きに検討」、そして近隣諸国「スタン」との査証発給・受給は進んでいる、アフガニスタン問題は時間の3/4を使っての質疑だった。ここでも不法滞在者と難民認定で帰還希望者には退去してもらう(いただく)と追放や日本イメージの強制送還ではなく強制帰還であると感じる質疑のやりとりだった。無理矢理国境に連行して引きずり出すというものではなかった。帰還したご家族のご無事を祈りたい。

 3.川口駅前で目撃した 移民反対デモvs?ヘイト抗議団体
 10月22日。私は川口駅前のイベントスペースで催された東インド関係の「ドゥルガ供養」に出かけた。ブース出店したチベット文化研究会の友人たちや旧知のインド人、新しく友達になったばかりのインド人・日本人と楽しく過ごした。女神様の加持もいただいた。会場に行く途中、何か作戦を練っているような団体と遭遇。私はこの時、後で署名でもあつめるのだろうと思った。プラカードを見てデモ反対。ああこれからどこかでデモをする人たちに抗議に行くのだろうと思った。
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 撮影させていただきました。
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 イベント会場の横の大きな道路。デモの先導か後方か覚えていない。
 外国人が悪いのではなく政策が悪いんです…という文言を入れながら、
 「移民受け入れ政策反対」と揃っていないコールが聞こえてくる。
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 日の丸と旭日旗?日章旗?
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 先ほどのヘイト反対団体。デモの横につけてウォークしていた
 概要でこの光景について感じたことを述べたので、今回はここまでとする。
 
 【クイズの正解】C.です。
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 地図はすべてwikipediaから引用
 日本:1 ミャンマー:1.8倍 パキスタン:2.0倍 バングラデシュ:0.4倍
 ※バングラデシュは日本の国土面積の半分もありません。
 [参考]
 The True Size Of ...
 http://thetruesize.com/
 このサイトを使って国のサイズを比較することができる。試しにJapanと入れると意外に広い国であることを感じることができる。

(2023.11.20)
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