【オルタ広場の視点】

共同通信など3社すべて菅支持率逆転と東京五輪8割が開催反対

仲井 富

はしがき 菅政権支持率逆転 コロナ不信と東京五輪8割が開催反対

 1月の世論調査が相次いで発表されたが、共同通信を始め、各社に共通するのは菅首相に対する人間的不信感が高まっていることだ。注目すべきは、東京五輪の強行開催を叫ぶ菅や森喜朗五輪会長に対して、各社ともに8割前後が今年の開催不能との結果が出ている。
 コロナ対策への不信感とともに、東京五輪への、菅政権と有権者の乖離はますます深まっている。問題は9月に予定される総選挙で、自民党政権を追い落とすだけの力量が野党にあるかだが、それは100%無理だと言うことも、共同通信の政党支持率を見れば一目瞭然だ。

 これほど菅政権への不信感が高まっても、共同通信の全国世論調査詳報を仔細に見れば、自民党への支持率は依然として40%を超え、野党第一党の立憲民主党への支持率は7%台に留まる。既に菅では選挙に勝てないという見方が広がっているが、選手交代で自民党政権は続くのである。その力量を支えるものは何か、立憲など野党が及ばないものは何かが問われているのだ。

 ◆ 共同通信社の電話世論調調査 東京五輪8割が中止・延期を求める

 共同通信社が1月9、10両日に実施した全国電話世論調査によると、菅内閣の支持率は41.3%だった。12.7ポイント急落した前回昨年12月から、さらに9.0ポイントの続落となった。今回の不支持率は42.8%で、政権発足から約4カ月で不支持と支持が逆転した。新型コロナウイルス感染拡大で1都3県に再発令した緊急事態宣言のタイミングは「遅過ぎた」との回答が79.2%に上った。政府のコロナ対応を「評価しない」が68.3%だった。

 営業時間の短縮要請に応じた飲食店に協力金を給付する一方、要請に従わない場合には罰則を科すとの菅義偉首相の方針に絡み、罰則導入に反対が48.7%で、賛成の42.7%を上回った。緊急事態宣言の対象地域について「他の都市圏も含めるべきだ」との回答が39.8%で、「全国を対象にするべきだ」の37.7%を合わせると77.5%が対象地域の拡大が必要だとした。

 「桜を見る会」前日の夕食会費用補てん問題について、これまでの国会答弁を訂正し謝罪した一方で、ホテルが発行した明細書の提示を拒否した安倍晋三前首相の対応は「不十分だ」との回答が78.1%に上った。
 東京五輪・パラリンピックの今年夏の開催は「中止するべき」が35.3%で、「再延期するべき」の44.8%を含めると80.1%が見直しを求めた。(後出の図表<共同通信社 全国世論調査の詳報>参照)

 ◆ NHK世論調査 内閣支持率逆転 77%が今夏の五輪開催不可能

 NHKは、1月9日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける「RDD(アールディーディー)」という方法で世論調査を行った。調査の対象となったのは、2,168人で、59%にあたる1,278人から回答を得た。

 それによると、菅内閣を「支持する」と答えた人は、先月より2ポイント下がって40%、「支持しない」と答えた人は、5ポイント上がって41%で、支持と不支持が逆転した。支持と不支持が逆転したのは、去年8月に安倍前総理大臣が辞任を表明する直前に行われた調査以来で、去年9月の菅内閣発足以降では初めてだ。内閣を支持する理由では、「他の内閣より良さそうだから」が39%、「人柄が信頼できるから」が23%、「支持する政党の内閣だから」が21%など。支持しない理由では、「実行力がないから」が40%、「政策に期待が持てないから」が33%、「人柄が信頼できないから」が11%となった。

 夏の開幕に向け準備が進められている東京オリンピック・パラリンピックについて聞いたところ、「開催すべき」が16%、「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が39%だった。先月に比べて「開催すべき」が11ポイント減り、「中止すべき」と「さらに延期すべき」はいずれも7ポイント前後増え、あわせると77%。

 ◆ JNN世論調査 支持率逆転と東京五輪開催できないが81%

 1月11日の世論調査で、菅内閣を支持できるという人は、先月の調査結果より14.3ポイント減って41.0%。一方、支持できないという人は14.8ポイント増加し55.9%と、支持と不支持が初めて逆転した。

 新型コロナウイルスの感染防止に向けた政府のこれまでの取り組みについて聞いたところ「評価しない」が63%と、「評価する」を上回った。
 政府が1都3県に緊急事態宣言を出したことについて、宣言発表を「評価する」人は65%、「評価しない」人は30%だったが、タイミングについて尋ねたところ、「遅すぎる」が83%に達した。

 今回の宣言は飲食店などへの時短要請や不要不急の外出自粛呼びかけなどが柱となっているが、これを「過剰だ」と答えた人は6%、「適切だ」は36%、「不十分だ」は55%。緊急事態宣言の期間は来月7日までとなっているが、1か月で宣言を解除「できると思う」と答えた人は7%にとどまり、「できるとは思わない」人が87%に達している。

 今年夏に予定される東京オリンピック・パラリンピックについて、「開催できると思う」と答えた人は13%、「開催できると思わない」と答えた人は81%だった。「桜を見る会」の前夜祭をめぐる事件で、これまでの安倍前総理の説明に「納得できる」と答えた人は12%にとどまり、「納得できない」が80%に上る。

◆ 共同通信社 全国世論調査の詳報 与党支持と野党支持の差変化なし
画像の説明

 共同通信社の「全国世論調査の詳報」によれば、政党支持率において自民党は依然として安定している。自民党支持率は41.2%に加え、公明党3.9%、維新4.3%で合計49.4%だ。野党支持率合計は立憲民主党7.8%、共産党3.3%、国民民主党0.8%、れいわ新撰組1.1%で合計13%に過ぎない。
 これだけの差がありながら、野党統一候補を立てた2019年参院選で、菅首相の地元の秋田県を始め全国9選挙区で勝利できたのは無党派層と維新、公明などの投票によるものだ。そういうことをきちんと分析しなければならない。

 ◆ 地方議員と党員百万の自民党の地力と野党の底辺での格差

 この与野党の力の格差はどこから来るのか。それは国政を支える地方議員や首長の存在だ。唯一沖縄だけが国政選挙で多数派を形成しているのは、元自民党の翁長知事を担いで、保守派を含む野党統一候補によって勝ち続けることが出来ていることと、曲がりなりにも地方首長や地方議会で自民党と台頭に闘う地力を持っているからだ。

 総務省資料によると、全国的なレベルでは、直近の2019年の地方選挙結果で、自民党の地方議員数は1,301名、立憲は128名、国民民主が103名、公明が206名となっている。無所属が2,946名と最大多数だが、その多くは保守自民系が多い。
 その最大の象徴が大阪だ。大阪市議会83名中、立憲、国民はゼロ議席が続いている。ここは立憲の辻元清美幹事長代行、国民民主党の平野幹事長の地元だ。しかも参院選挙では、2013年以降3回連続ゼロ議席が続く。

 菅直人元首相の選挙区でも都議会議員ゼロが続いている。都議会全体で立憲の議員は定数125名中5名に過ぎない。この地方議会での圧倒的な少数派転落の責任を曖昧にしているから、東京・大阪の二大都市での立憲民主党の復権はありえないし、野党連立政権の展望も生まれて来ない。

 また自民党の党員百万人というのも見逃せない。立憲会派に参加したが最高顧問を断り、一議員として野党結集に動く中村喜四郎議員が、このことを重視して、まずは次の選挙で与野党伯仲に持ち込むことをめざして、共産党も含めての野党統一を説いているのは至極当然の提言であろう。

 ◆ 東京五輪開催不可能の世論と五輪強行の菅政権と森喜朗五輪会長

 共同通信社をはじめ各社の世論調査に共通するのは、五輪開催は不可能という世論だ。だが菅首相と森喜郎五輪会長はともに、五輪開催ありきの姿勢を頑なに崩さない。
 世界中のコロナ患者が1月で9,000万人に達した。1億人に達するのも時間の問題だ。世界の総人口は現在約80億人、その80分の1がコロナ患者の現在、コロナの拡大が東京五輪開催までに収束するとは考えられない。7割から8割の国民が東京五輪の今年開催などありえないと考えているのは至極当然のことだ。

 米メディアが、五輪開催を高く掲げる森会長を「沈みゆく船の船長なのだろう」と、自信満々だったタイタニック号船長になぞらえた(1月13日中日スポーツ)。

 ――森喜朗会長 沈みゆく船なのか。米セーリング専門ニュースサイトのスカットルバットは12日、東京五輪・パラリンピックの森喜朗会長(83)について「沈みゆく船の船長なのだろう。われわれが昨年から学んだことがあるとすれば、それは『コロナを過小評価するな』ということだ。タイタニック号も沈没すると思っていた人はいなかった」。
 同サイトは、森会長が12日の年頭あいさつで「もし心の中に多少でも迷いがあれば、全てに影響してくる」「長い夜も必ず朝が来る。一丸となって、この最大の難関を突破するよう頑張りましょう」と職員に述べた言葉を紹介し、「タイタニック号のスミス船長の言葉を想起させる。船を氷海へと導く前、彼は『たとえ神でさえも、この船を沈めることはかなわない』と語った」と1912年、大西洋で氷山衝突により沈没した当時世界最大の客船になぞらえた――

 (世論構造研究会代表・『オルタ広場』編集委員)

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