【オルタのネットワーク】

反レイシズム情報サイトAnti-Racism Resourcesについて

明戸 隆浩


 前回第131号のヘイトスピーチ特集に掲載された記事『あらためて今、「ヘイトスピーチとは何か」を考える』の末尾で、筆者は以下のように書いた。

 少し前までは情報アクセスの格差の問題もあったが、少なくともここで言及した国連や各国の法律については、現在そのほとんどをインターネット経由で入手することができる。なお筆者は現在ヘイトスピーチについて考えるために必要な文献やリンクをまとめたウェブサイトを準備しているが、そうしたサイトを利用すれば、より簡単にそうした情報にアクセスすることができるはずだ。

 この「ヘイトスピーチについて考えるために必要な文献やリンクをまとめたウェブサイト」は、今、以下のような形で公開・運用されている。「そう言われてみるとそんなこと書いてあったなあ」という読者の方はもちろん、そうでない方も、一度以下のリンクにアクセスしてみていただければ幸いだ。

Anti-Racism Resources(反レイシズム情報サイト)
レイシズムとヘイトスピーチについて考えるために
 http://antiracismresources.blogspot.jp/

 このサイトは、「排外主義」「ヘイトスピーチ」「ヘイトクライム」「反レイシズム」「反差別法」「表現の自由」などのテーマにかかわる情報を、「国内の本」「国内の論文」「国外の本」「リンク」の4つに分けて紹介するものだ。

 このうちまず「国内の本」では、2000年代以降に日本国内で出された本を中心にリスト化した上で、関連する最近の雑誌特集についてもまとめている。学術的な本も一部含まれるが、全体としては手に入れやすく、読みやすい本が多いのではないかと思う。

 次に「国内の論文」では、やはり2000年以降のものを中心に、日本国内で出された学術論文をまとめている。以前は大学図書館などに行かないと手に入らないものも多かったが、最近はネット経由で本文にアクセスできるものが増えている。そうしたものについては末尾にリンクを付けておいたので、必要があればすぐに本文を読むことができるはずだ。

 続いて「国外の本」では、おもに英語で書かれた本を集めている。国内の本に比べると専門家向きのものが多いが、目次や著者情報などへのリンクを細かく付けておいたので、それを見るだけでも参考になる部分があるのではないかと思う。なお数は多くないが、日本語に翻訳されているものについてはその情報も掲載している。

 最後に「リンク」だが、ここには国連の文書や各国の法律へのリンク、および国内の反レイシズム運動のウェブサイト一覧を掲載している。リンク先には日本語以外のものもあるが、いずれも直接原典につながっているので、そうした情報が必要な際にはかなり使えるはずだ(ちなみに筆者自身、前号の記事を書く際にはこのページをずっと開きっぱなしにしていた)。

 なおいずれのページについても、新しく情報を追加した場合はトップページにブログ形式で記録を残した上で、筆者の twitter アカウント(@takakedo)で告知している。新しく出た文献などをチェックしたい場合は、そちらを参照していただければと思う。
 ヘイトスピーチやレイシズムに対抗する上で必要なものは数多くあるが、その中でももっとも重要なものの一つが「情報」であることについては、おそらく多くの人々の共通認識であるだろうと思う。このサイトがそうした情報を集約するための拠点の一つになることを願いつつ、今後も引き続き内容の充実に努めたい。
(筆者は関東学院大学ほか非常勤講師/社会学・多文化社会論)


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