■【私の視点】

  河村減税の「庶民革命」に敗れた菅民主の増税路線 
    ~名古屋の結果をどう見るか~               仲井 富
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 沖縄参院選(09)知事選の不戦負け、(010・11)北海道5区の補欠選挙敗北
(010・10)、茨城県議選、西東京市議選と連敗(010・12)そして2月6日の名古
屋市長選、愛知県知事選挙では敗北というより大惨敗。民主党の最強地盤でのダ
ブルスコアどころかトリプルスコアの敗北は、民主政権にトドメを刺すとともに、
今後の政局展開に決定的な影響を及ぼす結果となった。以下この選挙結果につい
て分析してみたい。

 要約すれば1)愛知・名古屋の選挙結果は、公約と民意を踏みにじった民主政権
に有権者が「反逆した」結果であり、2)減税の河村、大村タッグが増税の民主、
自民連合候補を粉砕した。3)民主党の公約裏切りが、地方首長新党の流れを加速
させ、4)民主党の4月地方選挙の敗北は決定的となった。5)その結果、つぎの国
政選挙での敗北もまた必至となった。
 
  その後の事態はさらに菅民主政権の自滅、崩壊を決定的にしている。それは名
古屋を契機として、次期地方選挙に出馬する民主党候補者が、東京でも名古屋で
も静岡でも、民主党の推薦または公認を辞退し、他の会派または無所属での立候
補に切り替えていることだ。
  その象徴的な例が、菅首相の地元、国立市で、民主党結党以来の党員で、市議
4期の生方裕一氏だ。

 今年5月の地方選で5期目に挑戦するが、昨年12月末、民主党離党届を出し
た。理由は「菅さんなら改革してくれると期待していたが、結局、菅さんはポス
トにしがみつくだけで、政治家としての覚悟がないことがよくわかった。以前は
『霞が関はバカ』といっていたのに、財務官僚に取り込まれてしまった。マニフ
ェスト詐欺もヒドイ。有権者に対する冒涜であり民主党は解党して出直した方が
よい」。(夕刊ゲンダイ2月18日)


●有言実行の河村に有言不実行の菅民主惨敗 


 全国最強の民主党地盤で総選挙、参院選と完勝してきた民主党が、2月6日の名
古屋市長選挙と、知事選挙、そして名古屋市議会リコール投票で惨敗した。河村
市長は、自分の報酬を2400万円から三分の一の800万円にして、退職金4000万円
をも返上。先ず身を切って、10%減税と議員定数半減を訴えた。捨て身の河村市
長の姿勢を名古屋市民が勝利させた。民主党は衆院選挙で議員定員80人削減の公
約は言葉だけ、無駄を省くことは止め消費税増税へ。普天間県外移設は裏切って
沖縄切捨て。高速無料化、ダム中止も消えた。
 
  ことごとく公約を破り捨て、権力維持のために財務省の掌に乗って、旧自民の
財務大臣を入閣させるという、タケシが言う詐欺師内閣、有言不実行の菅民主党
政権が否定された。しかも河村打倒のために名古屋の民主党は自民党と手を組ん
で見せた。いまの菅民主と同じ姿勢だが見事に失敗し、自民、民主、連合の旧体
制方式も崩れ去った。知事選挙では分裂した自民党候補にさえ敗れ3位だった。


●民主政権と既成政党敗北の名古屋 


  名古屋市長選挙と愛知県知事選挙における民主党の敗北は、数字で見るとまさ
に惨敗だ。市長選挙で河村は約66万票、民主、自民、社民、国民新が推した石田
は約22万票、共産の八田は約5万票だ。ダブルスコアどころかトリプルスコアで、
既成政党が推した石田(民主前代義士)が敗北した。河村改革に反対したのは
民主、自民だけではない。民、自、公、共、社民と既成政党はすべて反対だった。
議会勢力は70対1と河村勢力は1議席だった。

 リコール以外にこの既成政党の既得権益擁護連合を崩すことは不可能だった。
そして戦後政治史上初の政令指定都市における議会リコールに成功した。よくマ
スコミや学者評論家は「河村の手法は大衆迎合主義で独裁の危険がある」と非難
するが、名古屋の実態を知らなさ過ぎる。反河村勢力も公明党が離脱して崩れた。
公明支持層から「議員の1600万円の報酬は高すぎる。せめて市長並みに半減し
ろ」と言う声が高まって方向転換せざるを得なかった。民主、自民、社民、共産、
連合は議員の既得権益擁護の姿勢を変えなかった。

 その結果の惨敗である。名古屋と愛知の有権者は「減税」の河村を大勝させる
ことで、国民への公約を破棄して、消費税増税に舵を切った民主政権に「反逆し
た」のである。
  ▽名古屋市長選開票結果
  当 662251河村たかし 諸前(地域政党減税日本)
    216764石田 芳弘 無新(民主、自民、社民、国民推)
     46405八田 広子 無新(共産推)
     23185杉山  均 無新


●県知事選挙と比例票の比較 国政選挙でも敗北へ


  愛知県知事選挙の結果を見ると、民主の惨敗の意味がはっきりする。下記の表
のように民主党の推薦候補は3位で約49万票だが、過去二回の国政選挙では、民
主党の比例区票は09年衆院選で約190万票、10年参院選で118万票。じつに過去の
国政選挙の3割から5割以下に激減した。愛知県は2009衆院選で全15選挙区を制し
た民主王国だ。その牙城で、民主推薦の県知事候補は当選した大村秀章氏のみな
らず、自民党の県連推薦候補にも後れをとった。中日新聞の出口調査によると、
市長選では民主党支持者の77%が河村氏に、県知事選では57%が大村氏に投票
している。
  民主最強の地盤でのこの結果は、全国の都市部での民主凋落につながる。4月
の首長選挙では、民主党は自公への相乗りはあっても、従来の民主独自の候補者
擁立は不可能だろう。東京、北海道、大阪でも擁立が困難だし、もし擁立しても
敗北は必至だ。大都市を中心に伸びてくるのは、大阪、愛知を中心に広がる、首
長新党であり、みんなの党だ。こういう動きに鈍感だった既成政党は、共産、社
民を含めて大都市部では減少、消滅へという道をたどることになろう。

 首長新党の4月地方選挙の伸長は確実だが、いずれもその大阪都構想や中京都
構想なるものは未成熟だし、たとえ議会の多数派を形成しても、国政の壁を乗り
越えなければ実現は困難だ。必然的に国政への進出がつぎの課題となる。4月地
方選挙で、民主党は地方での基盤を失い次の国政選挙の展望はかぎりなく暗い。
敗北、消滅、あるいは次の政界再編成を予感させる。

▽愛知県知事選開票結果
  当 1502571大村 秀章無新(地域政党日本一愛知の会))
    546610重徳 和彦 無新
(自比例票、09年衆院 958,861 10参院 680,080)
    487896御園慎一郎 無新
(民比例票、09年衆院1,883,229 10参院1,182,899)
    324222薬師寺道代 み新
(み比例票 09衆院 185,966  10参院487,800)    
    141320土井 敏彦 無新
(共比例票  09衆院 250,890 10参院 169,431)


●笑ってしまう民主党の醜態、選挙に負けて報酬削減 


  選挙翌日の2月7日、笑ってしまったのは、惨敗した民主党名古屋議員団が、河
村改革の一つ、議員報酬半減の800万円に賛成すると発表した。だが市民税減税
10%には反対だそうだ。中日新聞の出口調査では、民主党支持者の77%が河村に、
県知事選挙では57%が大村に投票した。このままでは民主党王国の愛知でも
市議会議員全員が危ういと感じたからだろう。だが遅すぎるし、こんな中途半端
な変身を民主党支持者は許さないだろう。
 
  さらに笑ってしまうのは名古屋の惨敗に菅も岡田もきちんとした話が出来ない。
それほど困惑していると言うことだろう。ただ1人、あの旧自民党出身の石井
選対委員長が、「地方選挙の結果だから政局には直接影響はない」などと発言し
ただけだ。民主王国でトリプルスコアで負けた原因はなにか、蓮ホウ以下の人気
大臣?を次々に送り込んで、河村改革の不当性を攻撃した。にもかかわらず、そ
の敗北の責任は誰も取らない。「政権の行っていることが国民に伝わっていない
」(枝野官房長官)などというが、とんでもない。沖縄の切り捨てをはじめ、行
っていることの、あまりのひどさに有権者がノーを突きつけたのだ。

 おそらく、民主党は次の地方選で大都市での首長候補者は擁立できない。国政
政党としての資格を完全に喪失したのである。


●明日なき菅民主、稲盛会長も「こんなていたらくに落胆」と発言


  民主党にとって笑えないことが起きた。長きにわたって政権交代が必要だと、
民主党を応援し続けてきたJAL会長で内閣顧問の稲盛和夫氏が記者会見で「現
在の体たらくを見ると、こういうことで支援したつもりはなかったので、大変落
胆している」と述べた。今後については「一回目の政権交代可能な状態までは一
生懸命、熱を入れたが、私も年だし.あとは静観したい」と距離を置く考えを示
した。(読売2月9日)法人税減税で大企業のごきげんをうかがっているが、まと
もな経営者からは付き合いきれないと突き放されたようなものだ。そして翌日、
古賀連合会長も記者会見で「連合としては最大限の応援をしたが大敗北を喫した。
内部がまとまらず有権者の不信をかった」と苦言を呈した。
 
  菅政権ではもう地方選挙は戦えない、という悲鳴が各地であがっている。それ
とは無関係に、国会で「税と社会保障の一体改革」を唱え、自民、公明への「抱
きつき」を試みたが失敗した。菅民主政権の消費税増税路線は、かつての自社連
立政権の橋本内閣で社会党の久保旦大蔵大臣が演じた、消費税2%増税の姿と重
なる。これを通したのは土井たか子議長だった。そして社会党は消滅し自民党は
生き延びた。

 財務省はこれと同じ役割を菅民主と横路孝弘議長にやらせようとしている。「
これに反対するものは歴史に対する反逆行為だ」などと財務省の振付に乗って、
民主自滅への道をひたすら走っているのが菅民主政権だ。自民、公明もここまで
きた菅民主の「ドロ船」に乗って、ともに沈む愚は犯さない。社民党も、これま
での沖縄を中心にした背信と裏切りをのりこえて、もういちど菅政権と組むかど
うか。安易な妥協は沖縄の県民を怒らせ、社民の重大拠点を失う結果になる。
 
  わたしは1955年から今日まで、左派社会党、統一社会党そして自社二大政
党対立の時代。そして細川政権から自社さ連立、自公連立と、数十年間霞が関界
隈で、政治の世界をのぞいてきた。だがこれほどひどい公約違反を平然とやって
のける政権に出くわしたのは、社会党が安保、自衛隊容認と消費税増税した自社
さ連立政権と今回の菅政権の2回だ。

 村山社会党は消滅した。そして民主党はさらに大きな背信行為を犯して、政権
交代にかけた国民の夢と希望を打ち砕いた。「民主主義にたいする歴史的な反逆
行為」によって自滅崩壊に至ったのだ。ほっておけばこの政権は「憲法改正」ま
で、自民党の案に乗って「あんたらが言っていたことだ」という「抱きつき憲法
改正」までやりかねない。一刻も早く菅民主党政権を打倒することが、民主党支
持者の責務である。
 
  異様な「TPP開国論」歴史の連続性を見抜け 内橋克人氏講演会(農業協同
組合新聞) 2011 年 2 月 09 日

「菅直人首相は歴史上、幕末・明治を第一の開国、あたかも輝かしい開国であっ
たかのごとく信じているようですが、蒙昧とはこのことをいうのでしょう。第一
の開国こそは欧米列強への隷従的・片務的な「不平等条約」でした。相手国は一
方的に関税を決め、日本は独立国家の当然の権利である関税自主権さえ奪われた。
それから領事裁判権という名のもと、犯罪を犯した外国人を日本の法律で裁け
ない治外法権も強制されました。対等な関係における日本の「開国」がやっと実
現したのは、第一の開国から60数年も経った第1次大戦後のことです。近代日本
がいかに苦悶を迫られたか、それを菅氏はご存じない。
 
「開国」という「政治ことば」に秘められた大きな企みが人々を間違った方向へ
導いていく。「規制緩和」「構造改革」がそうでした。これに反対するものは「
守旧派」と呼び、少数派として排除しましたが、今回も同じ構図です。「改革」
とか「開国」とか、一見、ポジティブな響きの、前向きの言葉の裏に潜む「政治
ことば」の罠、その暗闇に目を注ぎながら言葉の真意を見抜いていかなければな
りません。「国を開く」などといいますが、その行き着くところ、実質はまさに
「国を明け渡す」に等しい・・・」正にTPP推進は「国を明け渡す」所業。ア
メリカのロボトミー内閣となった菅政権は地獄に堕ちよ。

 農業協同組合新聞から (徘徊記 上記は友人から今朝送られてきたメールで
紹介されたものです。詳しくは、以下の「続きを読む」をクリックして下さい。

                (筆者は環境問題研究家)