■【視点】

国会議員の脱税と「使用者責任」

  ~出番です!! 「マルサ」と会計検察院
山口 道宏

 またしても「秘書が」「経理が」の逃げ口上だ。国会議員本人と会計責任者の「連座」が証明できないという。どんな会社だってマル暴の世界だって、ひとたび不祥事があれば「使用者責任」が問われる時代だ。一連托生とはこんな時に使うが相応しい。
 検察が、今回発覚した自民党派閥の長年に亘る政治資金裏金づくり事件、とりわけ最大派閥にして最大の、数億円にのぼる不正経理の温床である「安部派幹部」の立件を見送りというから驚きだ。

 裏金議員は全員を政界から追放、ではないのか!!
 「不起訴」が報じられる数日前のこと。「70~80パーセント(の勝算)がないと起訴は難しい」と民放テレビにゲスト出演の検察庁OBが言っていた。さらに同氏は「この先は検察審査会で」というから呆れた。検察は当事者能力がないので、と予め布石を打つのか!? これでは検察現役の無力さをさらすようで聞いているほうが恥ずかしい。
 今回、事件を担当した東京検察庁特捜部は、メディアによれば「地方から応援も」「正月返上で」「第2のリクルート事件だから」と、国民にその矜持と正義に期待を持たせていた。

 その検察は、今回も件(くだん)の「森友、加計、桜」(第2次安倍政権)と変わらぬ「証拠が不十分で」を繰り返した。当時「忖度」は流行語にもなった。
 ある司法記者が言う。「---そんな体たらくだから黒川案件(安部晋三政権が検察庁長官人事に介入し、定年延長の解釈変更をしても黒川弘務東京高検検事長(当時)を据えたいと閣議決定。のちに当人の賭け麻雀が発覚し同件はご破算になった)の無理強いもできた」と手厳しい。
 仮に裁判所が審判を「あとは裁判員裁判で」と丸投げしたらどうか。「疑わしきは罰せず」という法諺があるが、これだけ材料がそろっても手が出ないとなれば「いつだって検察は政治家には弱腰だから」と舌打ちされても仕方がないか。

 「パー券もウラ金も皆ヒトの金」(左文字)は上手い。新聞で紹介された川柳だ。
 本件の、税金逃れ、不正経理は明らかだ。ましてや「容疑者」が選挙で永田町に送り込まれた「選良」の国会議員ならば、なおのこと国民への重大な背信となる。

 国民には憲法上「3大義務」(教育、勤労、納税)がある。納税では昨年10月から、国は消費税の取りはぐれをしまいと「インボイス制度」を導入して小規模経営やフリーランスにも徴収を課した。弱い者いじめはいけない。繰り返すが、今回の事件は、政治資金操作で、裏金は脱税だ。
 あの「マルサ」(国税局査察部)はどこへ!? 乗り出すは税務署が率先すべきでないか。
 併せて税金の無駄使いを監視する「会計検査院」がいい。いまからでも、両者による徹底した合同捜査はどうか!!

  (ジャーナリスト・星槎大学特任教授)

(2024.2.20)
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