【視点】

国会議員は歳費(給料)があればいいではないか!!

裏金事件究明は即ちオモテの金の適正度審査が必至の理由
山口 道宏

ケジメと「お詫び」

 「男の顔は履歴書である」といったのは評論家の故大宅壮一(1900-1970)だった。
 男も女もない。交番でみる指名手配の写真と町でみかける選挙ポスターの顔写真が重なってみえるのは筆者の老眼が進んだせいだろうか!?
 企業や自治体などで不祥事が発覚。すると「謝罪」はカメラに向かい、役員一同が決まって「申し訳ありませんでした」と頭を垂れる。もはやそれはニッポンの景色となって久しいが、なぜ懲りずに繰り返すのか。
 つまり、ケジメが形式的で、それは事態を招いた本質に迫っていないから。
 機能不全を放置して起きた「事件」「事故」に対してマニュアル通りの「お詫び」だから見ている方が気分を害する。

ウラがあればオモテがある

 さて、今回の「自民党裏金事件」の場合はどうか。
 そんな「お詫び」すらないから国民は随分となめられた格好だ。彼らは税金で食っている「選良」にもかかわらず長年にわたり国民を平気で裏切ってきた。
 ウラがあればオモテがある。このところ、いよいよ国会議員が怪しい。
 ついては、裏金の次はオモテの金の適正度チェックが必要だ。検察特捜もザル法と認める「政治資金規正法」の改正に続くのは「政党助成金」の廃止法案がふさわしい。
 そもそも「政党助成金」(1994年政党助成法)の成り立ちは「企業献金の廃止から税金で」という題目だが、なぜ国民が肩代わりなのか!! パーティ券収入が企業献金の裏メニューとわかった時点で「政党助成金」の成立根拠はすでに崩れている。

議員は歳費(給料)があればいい

 もってのほかだ。彼らは企業献金と「政党助成金」の両方を受け取っていた。
 大変な国難だ。いい思いが出来れば企業だろうと国民だろうと、が議員の本音といまさらながらわかる。
 ただ働きをしろ、というのではない。報酬に構造的な欠陥がある。議員は歳費(給料)があれば他は要らないでしょ、という至極当たり前の話だ。
 今回の自民党派閥の裏金づくり事件で浮き彫りになった国会議員の懐事情。なかでも「政党助成金」の膨大な金額に誰もが驚いた。2024年公布予定総額は315億円という。内訳は、自民党160.5億円、立憲民主党68.3億円、日本維新の会33.9億円、公明党29億円、国民民主党11.1億円、れいわ新選組6.2億円、社民党2.8億円、参政党1.8億円、教育無償化を実現する会1.1憶円、共産党は制度反対で不受理。税金である「政党助成金」の約半分が今回の不正追及の対象・自民党へと支払われる事実だ。
 「アベノマスク」は税金の無駄です、と「問題」にする会計検査院も、ここには関心がないか!? 不思議の国ニッポンだ。「政党助成金」と議員歳費は二重払いにならないのか!!

 さらには、どうなったか!!「旧文通費」(調査研究広報滞在費)の行方だ。
 覚えておられようか。「(旧文通費が)おかしい」と指摘したのは維新の会の新人議員だった。たった1日在職なのに月額100万円が支給、という実態が暴露された。そのことを「国会議員は白アリだ」と批判したのは同じく維新の吉村副代表(後日、自身もかつて受け取っていたことが分かりブーメランになって火の粉を浴びている)。
 「白アリ」は土台を食い散らすから家屋である国会を浸食していないか!! もとより「旧文通費」とは議員歳費や「政党助成金」とダブった支給にならないのか、これもまた整合性に疑問符だ。
 自民党裏金事件で「マルサ」(国税査察)が動かないのも不自然だ。遠い話ではない。安倍政権での「モリ・カケ・さくら事件」の国税部門の忖度ぶりは国民への背信行為と強く指弾された。

国会議員の半減、「政党助成金」の抜本見直し、議員特典の全廃から

 国会議員は「永田町に就職しました」といってあながち見当違いではない。
 そこには一体いくつの財布があるのか、それらは別腹らしい。とんでもない!! 退路を断つごとく国庫に返還だ。岸田総理は欠陥商品を詫びる社長ではない。やおら正義の審判官のようだ。脱税の議員を養うための国民による納税ではない。今回の事件の本質は、税金を報酬とする人間が法律を作り自ら法律を破ったことにあった。
 不条理は即刻に糾さなくではならない。政治浄化を臆している暇はない。それは抜き差しならないところまで来ている。
 さしずめ国会議員の半減、「政党助成金」の抜本直し、その他議員特典の全廃から。そんな「身を切る覚悟」の有言実行だ。 (2024.4.13記)

  ジャーナリスト 元星槎大学教授

(2024.4.20)
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