【沖縄の地鳴り】

後退止められるか、オール沖縄

平良 知二

 衆院総選挙(10月31日)開票の夜、重たい気分でのテレビ・スイッチ切りとなった。全国の情勢もさることながら、沖縄の結果の落胆が大きく、早々と寝床に入った。いつもは開票終了の間近まで見届けるのだが。
 玉城デニー知事を支えるオール沖縄側と自民党の争いは4議席を2勝2敗。この数字だけならオール沖縄の負けでもないのだが、比例復活を含め自民は4人当選し、前回から1人増。オール沖縄は逆に1人減となり、4対2の自民勝利となった(前回は3人対3人)。
 各区の票数を探るとオール沖縄には議席数以上の厳しい現実が突きつけられる。

 その厳しさを象徴するのが「辺野古」を抱える本島中北部の第3区。前回(同区のみ前回選挙は2019年4月)同様、オール沖縄は屋良朝博氏(現職=立憲民主党)が立ち、優勢が伝えられたものの自民の島尻安伊子氏に敗れた。島尻氏は元参院議員(大臣でもあった)とはいえ、前回の両者の対決は屋良氏7万7,156票、島尻氏5万9,428票で、屋良氏が1万7,700票の差をつける勝利だった。
 しかし今回、これが島尻氏8万7,710票、屋良氏8万0,496票と、島尻氏が逆に7,200票の差をつけたのである。

 同区は前回、玉城氏の知事選出馬による補欠選挙だったこともあり、投票率は44%とかなり低かった。低い投票率の中で屋良氏は上記のように1万7,700票も引き離したのだが、この区はもともと玉城氏の地盤であり、玉城氏が知事に当選した勢いもあった。知事選前年の2017年10月の前回総選挙では、玉城氏は自民の候補に2万8,900票差もつけ(9万5,517票と6万6,527票。候補者はあと1人)、それこそ圧倒的な勝利だった。屋良氏はそれを引き継いでいた。
 そんな状況もあって屋良氏優位の当初予想ではあった。ただ今回の投票率は前回より10%も高い54%となり、有効投票数は3万余票も増えた。関心の強さと選挙運動量が有権者を動かしたと思われるが、その増えた分の90%以上が島尻氏に行った、そういう計算が成り立つ。3万票の90%である。異常な片寄りだ。「辺野古」を抱える選挙区であり、オール沖縄の敗北感は普通ではあるまい。

 勝ちはしたものの、似たような状況が本島中部の第2区である。同区は長い間、社民党の候補が議席を守り続ける強固な革新地盤だ。今回はそのベテラン議員の引退に伴い新人・新垣邦男氏(社民)が立ち、自民の現職・宮崎政久氏(前回は比例復活)と争った(維新など候補者は計4人)。結果は新垣氏7万4,665票、宮崎氏6万4,524票、ちょうど1万票差で新垣氏は議席を引き継ぐことができた。
 しかし前回、宮崎氏と戦った社民のベテラン議員は9万2,143票も取っており、宮崎氏に2万8,000票の大差をつけていた。それが今回は1万票の差に縮まった。宮崎氏の票はほとんど増えていない(前回から349票のプラス)ため、自民が前回以上に頑張ったということにはならず、オール沖縄とは組みしない第3の維新候補(1万5,296票)が一定の力を持ってオール沖縄票を奪った計算となる。オール沖縄はここでも維新を含めた保守側に“敗れた”といえなくもない。

 先の第3区の場合、政権による強いテコ入れが島尻氏勝因との見方がある一方、屋良氏が「辺野古」問題を少し脇に置き、経済振興などをメーンにした結果ではないかとする関係者もいる。街頭演説など「辺野古」一本で通すべきだった、とこだわる人もいる。
 屋良氏はもともと軍事・安全保障を得意とする新聞記者上がりで、国会で「辺野古」問題を追及してきた1人。東京で問題を追及している間、島尻氏が地域をこまめに歩いているのを無視できず、地域振興などを訴える戦術をとったようだ。

 来年の知事選(9月)を心配する声は小さくない。知事選の前に南城市、名護市、石垣市、沖縄市、宜野湾市など主な首長選挙が続く。6、7月ころの参院選も大きな戦いとなる。総選挙のような後退が重なるとオール沖縄の存在価値が問われ、知事選はそれこそ剣が峰だ。「辺野古」は現政権の思う次第、ということになる。

 後退をどう止めるのか、改めての結束が急務であろう。

 (元沖縄タイムス記者)

(2021.11.20)
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