【コラム】日中の不理解に挑む(22)

「思わぬところで中国と・・・」

棚田 由紀子


 ひょんなことから、近所の栄養教室の事務スタッフとして働くこととなった。
 偶然は重なるもの。今、その栄養教室に、中国の栄養学校が講義と調理実習を依頼してきている。日本人が長寿な理由や、子ども達にとっての理想的な食生活とは何かについて、日本の食文化や取り組みを勉強したいという。年明け早々にも、その栄養学校の生徒さん達が来日する予定だ。
 まさか栄養教室で中国語や中国に関する知識が役に立つことになるとは、思ってもみなかった。中国の、日本に対する関心は買い物だけではないのですね。CSネットでも自然学校を柱とする仕事が年を追って増加している。爆買いでもなく医療ツーリズムでもない、新しい「日中間を取り持つ道」、それが自然であり栄養というわけだ。どちらも命や生きることに深い関係がある分野。やはり、人間が共通して求めるものは充実した生命活動なのだろう。

 しかし、栄養教室の事務所は大わらわ。日本人向けの講義や実習は慣れているが、中国人向けに一体どのような講義をすればいいのか、誰も分からない。
 講義や実習の中身もさることながら、契約の手順も分からないことだらけ。中国人と日本人のビジネスに対する姿勢も異なるので、これまで日本人とだけ仕事をしてきた栄養教室は、何もかもが手探りの状態が続いている。
 中国人は行動が早い。思い立ったらすぐ行動。そして見限った時の撤収も恐ろしく早い。日本国内で日本人相手に教室を開いてきた事務所スタッフは、所長以下全員が中国人のビジネスの進め方に面食らっている。そんなスタッフの姿を見て、少し前の自分を思い出した。

 私も以前は日本人的な働き方(ゆっくりでも丁寧な仕事)しか知らず、中国人的な働き方に対しては日々ストレスが溜まる思いをしていた。よく言えば素早い行動、悪く言えばコロコロ変わってばかり、に振り回され続け、正直げんなりしていたこともあったが、今ではすっかり慣れてしまった。中国人のような迅速な行動と日本人のような丁寧な作業が身に付いた今、もしかしたら私って「仕事できる人」なのかも?!と自惚れてしまいそうになる。危ない危ない。

 CSネットと栄養教室、両方で日中間を取り持つ仕事ができ、とてもやり甲斐を感じる。栄養教室ツアーを成功させ、息の長い交流につなげていけたらと思う。いや、つなげていくぞ!

 (筆者はCSネット・スタッフ)

※この原稿は著者の承諾を得てCSネットメールマガジン12月号から転載したものです。


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧