■【オルタのこだま】                     

憲法を論じて欲しい           今井 正敏

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 「連休はごろ寝をやめて社説読む」5月6日付の朝日新聞の「朝日川柳」に出
ていた一句。この川柳の短評は、「執筆陣感涙」。
 「日本国憲法」の満60年の日を迎えた5月3日付の朝日新聞の朝刊を見て、
朝日の読者はちょっとびっくりした人が多かったのではないか。それは、この憲
法記念日にあたり朝日新聞は、昨年の4月から展開してきたシリーズ「新戦略を
求めて」の集大成として、「社説2 提言・日本の新戦略」と銘うって、一挙に
21本もの社説を、広告一つ見当たらない8ページにわたる紙面に並べて読者に
提供したからだ。

 「新聞を開いた読者は驚かれることだろう。新聞としては前代未聞の試みだ。
新聞のもつ言論の役割を深く自覚したい。そんな決意の表れと受け止めていただ
きたい。」と論説主幹の若宮啓文氏は書いている。護憲、改憲、加憲等々憲法をめ
ぐる論議が高まってきている施行60周年の節目の年に、このような「前代未聞」
の決断をした朝日新聞の意図と決意に対して、私は大きな拍手を送りたい。

 ただ問題なのは、一般的に「社説」はあまり読まれないといわれているので、
前期の川柳子のように、ごろ寝をやめて連休にこの21本もの社説をどのくらい
の人が読んだろうかという点になると、いささか心もとない。
 私は、健康上、外に出歩くことができないので、約2時間かけて21本全部に
目を通したが、かなりきつい作業だった。若宮主幹もこのへんのことは十分承知
していて、「いくら大型連休中でも、社説を一気に読んでほしいとは申しません。
少しずつ読んでいただこうと、抜き出して保存できるようにしました。」と述べて
いる。願わくは、多くの人に読んでいただいて、「地球貢献国家」をめざすという
「新戦略」のキーワードと、「戦争放棄」の第9条を持つ日本の憲法は、そのため
の貴重な資産だ。だから変えない。これも私たちの結論だ。という朝日新聞の主
張と見識に対して、賛意を表する人が多くなることを切望する。

 テレビ界でも、5月6日放送の田原総一朗氏がコメンテーター役を務めている
10チャンネルの「サンデープロジェクト」に、朝日、読売、毎日の論説トップ
が揃って登場し、憲法問題を焦点に論じた。
 三大全国紙の論説責任者がテレビで同席し、論議するというのは、テレビでは初
めてという説明であった。最も関心の度合いが高い「9条」については、朝日は「変
えない」と主張、読売は一項目の「戦争放棄」の宣言は残すが、二項目は変更して
「自衛軍保持」を明記し、集団的自衛権も国連主導であれば行使できると明文化す
るようにと改憲の立場を強調、毎日は表現は違うがほぼ朝日と同様の姿勢で、「現
行のまま」という線を主張し、三者三様で、大変聞きごたえがあった。

 このように、新聞、テレビとも、それぞれの立場で、憲法施行60周年を記念
し、憲法問題を取り上げたが、安倍首相が明言しているように、7月に行われる
参議院選挙では、好むと好まざるとにかかわらず、「憲法改正問題」が大きな論議
を呼ぶようになると思われる。(もうプランは固まっていると思うのだが)、
「オルタ」でもぜひ特集を組んで、憲法改正問題についての「オルタ」の見解と
主張を、各論者がそれぞれ力をこめて論述していただきたい。
                      (元日青協本部役員)
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