【北から南から】フィリピンから(11)

折り紙、書道、浴衣・・・日本を体験

〜ボホールで文化交流フェスティバル〜

麻生 雍一郎


 フィリピンでは現在、40人を超す国際協力機構(JICA)の海外青年協力隊員が活動を行っている。ピサヤ地方のボホール島は、そうした活動が最も活発に行われている島の一つである。ボホール州の州都タグビララン市のボホール文化センターでこのほど、第一回日本・ボホール文化交流フェスティバルが開かれた。

 州政府、観光局とJICA、国際交流基金が共催。ボホール島に派遣されている海外青年協力隊員が主軸となり、島外の協力隊員や音楽家、画家、書道家なども駆けつけて協力し、多彩な日本文化を紹介した。会場はボホール州内の大学、専門学校、観光・旅行・ホテル業界の関係者など700人で埋まり、日本の伝統芸能を鑑賞し、折り紙、書道、絵付けなど様々な日本文化を体験し、実り多いひとときを過ごした。
 壇上には日比両国の国旗とボホール州旗が掲げられ、バックスクリーンにはボホール島とフィリピン各地の山野、海、滝、湖水などの自然から鳥獣や動物、さらに踊り、芝居、料理から子供の遊びに至る人々の暮らしまで、豊かで変化に富んだフィリピンの魅力が映し出された。続いて比日両国の国家斉唱、フィリピン国歌の斉唱が始まると踊り手たちが壇上に上がり、青、赤、白のスカーフをひらめかせながら優雅な舞を演じ、国旗の美しさを印象付けた。

 挨拶に立ったエドガー・チャット・ボホール州知事は「観光産業はボホールで際立ってきた産業。多くの雇用を生み、中小の事業を振興し、あなたも雇用主になれる。これに貢献してくれているのがJICAだ」と比日の連携を強調。続いて丹羽憲昭JICAフィリピン事務所長が「観光は日本にとってもアベノミクスの基幹産業。運輸、交通、ホテルなど様々な産業を発展させ、異文化を学ぶ機会を提供する。ボホールでは日本の若者が新しい観光資源の発掘と観光ルートの開発に尽くしている」と海外青年協力隊員たちを祝福した。

 一連のあいさつの後、会場を仕切って“日本体験コーナー”が設けられ、藍染め、折り紙、書道、絵付け、グラスペインティング、浴衣試着など参加者たちは思い思いにコーナーを回りながら、日本の文化体験を楽しんだ。ボホール島内だけでなく、パナイ、ルソン、ネグロス島で活動している海外青年協力隊員も含め、合わせて12人がそれぞれの体験コーナーの講師を務めた。

 舞台の上では画家の山形敦子さんが3.6メートル×1.8メートルの大カンバスにフィリピンの夕焼けと日本の鶴をモチーフにしたライブペイントを行い、その前ではフルート奏者の斎藤麻理子さんと琴奏者の三吉侑氏による演奏会、「春の海」や「イカウ」など両国の名曲を演奏し、聴衆を感動させた。浴衣試着を試みた男女は次々に壇上に上がり、記念撮影を行うのに余念がなかった。吉野家の料理人による牛丼作りのプレゼンテーションに参加者たちは目を見張った。

 絵付けの講師を務めた滝口有希子さんは「日本人は慎重だけど、フィリピン人はとても積極的。躊躇せずにチャレンジします」と語り、折り紙を教えた杉浦由紀さんの感想は「覚えるのが早い。形は一様ではなく、色々な形になるけど」というものだった。参加者たちが織ったピンクのサクラは紙に描かれたサクラの木に張り付けられ、満開のサクラが登場した。

 企画に協賛した企業は20社余り。大きな琴を飛行機に乗せるのは、協賛のエアアジアが協力し、藍染めの藍は日本の(株)誠和が協力して日本から運んだ。ボホールで旅行会社を経営するノネット・ボロさんは「皆が体験でき、五感を刺激された。いい企画だった」と語り、企画推進の中心として働いた海外青年協力隊員の後藤まどかさんは「未来の観光に携わる学生たちへ役立てば、と考えて企画したが、ボホールの観光振興に貢献できたとしたら嬉しいです」と控えめに喜びを語った。

 (筆者は日刊マニラ新聞セブ支局長)