【日中・侃々諤々】
日中市民交流とCSネット
2012年3月にCSネット(日中市民社会ネットワーク)の活動を通して、居宅養老サービスを受けに来た北京にある「楽齢」という社区(コミュニティ)を基盤とするデイサービスセンターの主任——王艶蕊(主任)と知り合うことができた。その際、たくさんの施設や現場の職員、また利用者さんにお世話になって、丁寧に対応していただいたことは、この場を借りて深謝の旨を申し上げたい。
「楽齢」は2006年末に成立し、2011年に北京市石景山区楽齢老年社会工作服務中心(高齢者向けソーシャルサービスセンター)として登録され、「高齢者一人一人が自宅で楽しく老後の時間を過ごせるよう」を目指している。つまり、高齢者は住み慣れた地域(コミュニティ)に根差して、専門的なサービス(居宅介護サービス)の提供や高齢者向けの支えあいネットワークづくりなどを目標としている。
周知のように、中国では、速すぎる人口増加を抑えるための30年あまりの一人っ子政策による家庭規模の縮小、高齢化の進行、また改革開放政策による所得格差の増幅を背景として、昔のような家族扶養を行うことが極めて困難になりつつある。また一人っ子政策により、中国では高齢化率は急速に高まってきた。しかも、中国の高齢化は規模が大きく、スピードが速い、発展途上国としての「未富先老」(経済が豊かになる前に高齢化が進む)などの特徴がある。さらに日本を上回るスピードで高齢化が進行することが予測されている。高齢者の増加に伴って、高齢化の問題が複雑化し、公的な財源の確保も課題となってきている日本の経験からも予想されることである。要介護状態になっても、住み慣れた地域で自立した生活を送れる社会システムの構築が重要な課題となっていることが分かる。
中国における平均的な経済収入がまだ低い現段階では、低料金で利用できるサービスの充実や年金額を引き上げる一方、地域(コミュニティ)における住民間の支えあいをいかに活かすかが、高齢化問題の解決には重要なポイントとなる。今後、王さんのように、地域(コミュニティ)に根ざし、低所得高齢者のことを考えながら、実践する人も増え続けてくるだろう。今後、どういう形で、日中の間で高齢者分野の民間交流をどう行っていくかも課題となっている。
(筆者は立教大学大学院コミュニティ福祉学研究科 博士後期課程)