【沖縄の地鳴り】

日日是コロナ―東京に並ぶ沖縄から

平良 知二

 ▼沖縄のコロナ感染は、今や東京と並び、というより東京を超えて全国一の深刻さになった。東京は7月12日から4度目の「非常事態宣言」下に置かれたが、沖縄はそれ以前、5月23日からそのままの延長である。来月8月22日まで、ほぼ3カ月続くことになる。異例とも言える長期の“鎖国状況”だ。
 沖縄県は「まん延防止等重点措置」への移行を要請していたが、政府がそれでは生ぬるいと「非常事態」続行を決めた。急に言われて、玉城デニー知事もびっくりしたようである。多くの県民にも意外であった。特に観光業を始めとする経済界は驚き、政府への要請行動となっている。

 新規感染者が減ってきているのは確かであった。それだけに「沖縄だけがなぜ?」の疑念も無理ないことだが、それでも新規感染者は高止まり状況にある。7月10日までで累計の感染者数は2万1,000人余り。東京18万人余をトップに全国10位に入る。

 ▼5、6月の沖縄の状況がどんなにひどかったか、振り返る。
 5月下旬、新規感染者が1日に200人超、300人超とつづき、県民は沈黙の日々であった。「どうしようもない」がせめてもの言葉であり、新聞は連日、見出しで過去最多などと“大声”を飛ばした。
 ただ、この月は全国的に新規感染者が多く、相対的に沖縄のひどさは隠れがちであった。特に大阪、愛知、北海道、福岡が目立ち、これら道府県は月間1万人を超えた(東京は2万1,000人余り)。沖縄は4,699人で9位であった。

 6月の初旬も200人超の日があった沖縄だが、中旬から100人台、そして6月14日、約1カ月ぶりに遂に100人を下回ることができた(54人)。自分事ではないものの、ほっとしたのを覚えている。この日は全国の新規感染者も84日ぶり(3月22日以来)に1,000人を切っている(936人)。

 沖縄は以後、たまに20人台に落ちたりし、月全体では3,579人。前月より1,200人も減った。一方で全国各地も落ち着きを取り戻し、多くの地域で大幅減少した。このため沖縄の6月の月間感染者数は、東京、神奈川に次ぐ3番目の多さだった。沖縄の前月比25%減は大阪、北海道、愛知などの75~80%減に比べ、それほどの改善ではなかった。
 7月の今(10日現在)もいわば小康状態。100人を超えないだけで50~60人台の日が少なくない。

 ▼そういう状況の中、国の出先機関のトップである沖縄総合事務局(内閣府)の局長が局員を随行させて頻繁に離島などに足を運び、問題ではないかと新聞に取り上げられた。移動の自粛を呼びかけている立場の人の、この時期の行動なのか、と。離島のある自治体の首長は局長の訪問をやんわりと断ったという。時期を考慮したのである。

 局長は、自ら開設した沖縄観光ポータルサイトのための出張とし、サイトに使う写真など素材の収集、と釈明している。コロナ後の夏の観光シーズンに間に合わせたい、とも言っているという。しかし、毎回局長自身が現場に出向いて作成しなければいけないポータルサイトなのか。局のサイトなら職務として職員に任せることはできないのか。いろいろ疑問が沸く。夏の観光シーズンのためにこそ、今の行動が重要ではないのか。

 職務として随行せざるを得ない総合事務局の職員はたまったものではない。職員のある1人は筆者の親族なのだが、その父親は「出張は相当頻繁のようだ。小さい島にまで行く。旅費もかかって下の者が心配するほど」と嘆き、「キャリアはそういうもんだろう」と不信露わであった。不要不急は関係ないようである。

 ▼毎日が不要不急の筆者は「これは急を要する」とコロナ・ワクチンを打ち終えた(ファイザー社製)。町の集団接種に参加して無事に済み、後遺症的なこともない。ただ多くの高齢者が一緒だったが、友人、知人にはほとんど会えなかった。「みんなどうしているだろう」と心配になったが、民間の医療機関を利用する人も少なくない。何人かがそうだった。

 ワクチン接種がやはり切り札なのかと思う。東京オリンピックのテレビ観戦でヤーグマイ(家に籠る)が増え、コロナ対策にもなるはずだが、安心して観るためにもワクチンである。早く全世代に広がってほしい。
 朝日新聞の「かたえくぼ」に「打った?」とあって、若者はメジャーリーグの大谷選手のこと、高齢者はワクチンの合言葉であった。確かに友人に「打った?」と聞くこのごろの電話である。

 (元沖縄タイムス記者)
                             (2021.07.20)
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