【コラム】あなたの近くの外国人(裏話)(5)

日本で宗教の話しがしづらいから理解してもらえない(3)

坪野 和子


 《日本で出逢う外国人ヴェジタリアンはさまざま 2 》

 2月。太陰暦正月。春節休みの中華圏の観光客への売り出しのため、衣類の店、ドラッグストア、ショッピングモールなど免税店で目に付く中国語や多言語表記。なかには、「2月14日ヴァレンタインは日本では恋人や友達にチョコレートを贈る習慣があります。あなたもいかがですか」と日本語皆無の全部中国語でかかれたポスターまで見かけました。いや、これは習慣じゃなくってチョコレート会社が始めてから広まったんですけどね、と言いたくなってしまいます。チョコレートを売っても Made in Japan とは限らないので、またわざわざ日本のチョコレートを買うのでしょうかね。

 商売がわからない私は不思議な気持ちになってしまいます。ですが、私は外国へ行くとき、日本のお土産としてキャラメルを持っていきます。私が行ったことがある場所では、子どもたちも大人も喜んで食べてもらえます。森永・グリコどちらも好きなようです。四川省ではガイドボランティアと称する見張りの若い女性にあげたら瞬間で小さい箱全部なくなっていました。ブータンではガイドさんの小学生の息子さんにあげたら「おかわり」をせがまれました。乳製品食べないビーガンや小麦・大豆アレルギーでなければ、大抵の人が食べられるので無難なお土産だと考えています。

 やっぱりヴェジタリアンといえば…インド人、人口の4割がヴェジタリアンだと言われています。今回はインド人のヴェジタリアン。

● 0.回想。1988年。ダライラマ法王のお寺で勉強していた頃のことです。みんながヴェジタリアンの村に部屋を借りていました。日本人のお客様が来るとお肉を買って料理していました。残った骨、調理しきれなかった肉…お向かいのおとなしい犬がまるでウチの番犬みたいにウチの階段も前に座っている日が増えました。いつの間にか「クロ」という名前がついていて呼ぶと肉や骨がもらえると思って喜んでこちらに来ました。チベット人から、牛肉なんか食べたらインド人にぶん殴られるよ、と聞かされていたのでひやひやしました。こんな経験があったことが今の仕事に役に立っています。ヴェジタリアンの村で肉を食べることと、肉も魚も食べる日本でヴェジタリアンが暮らすこと。

● 1.修学旅行で食事の手配が大変
 今までインド人の生徒を指導したのは2人です。一人は武士のカースト=Aさんで、一人はお坊さんのカースト=Bくんです。Aさんは、食事のタブーが家族バラバラです。ヴェジタリアンかどうかは家庭で決まるのではなく、イダム=守護神で決まるそうです。ご両親はヴェジタリアンですが、Aさんは牛以外の肉は大丈夫です、魚は知りません。彼女の日本語スピーチコンテスト全国決勝でご両親にはじめてお会いしたのですが、朝早かったのでお弁当なしでいらしたそうです。コンビニで梅おにぎり買占め??それだけのお昼ごはん。大変ですねと言ったら「慣れていますから」って。

 Bくん。彼は乳製品OK、他の動物性食材はタブーです。彼の場合、家族同じヴェジタリアンです。インドのおじいさん家ではもう一段階上の五葷タブーで、ねぎやニンニクなどもたべられません。私は時々彼と一緒に成分表を見て、なんとかエキスが入っていないかとか乳化剤が豚か大豆かなど判断しあうこともありました。日本人の知らない日本語のヴォキャブラリーが増えていきました。

 修学旅行の事前調査の一つにアレルギー調査があります。アレルギーの種類を書く欄に「宗教由来のNG」。そして食べられないものにチェックを入れるのですが、ほとんどチェックがつきます。アレルギーの原因にありがちな大豆・小麦などにはチェックが入りません。「この表にない気を付けなければいけない食材は手書きで書いておいたほうがいいですよ」というと、なにか書き足していました。結果、全卵・魚卵・醤油・甲殻類・軟体類・貝類・魚類・肉類全般、そば・ごま・松茸、動物性を含む食品・飲料全てNG…この表にないのですが、海藻類の乾燥は大丈夫ですが、生の場合魚が卵を産みつけているので要注意と伝えておきました。こんなに食べられないものが多いと、一体何を食べるだろう…と思われるでしょうが、ホテル側の特別メニューはさすがでした。
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 1.野菜サラダ・茸たっぷりなパスタとガーリックライス・ミックス野菜スープ
 2.野菜サラダ・野菜サンドイッチ・じゃが芋とタマネギのスープ・フルーツミックス
 3.野菜サラダ・沖縄風焼きそば(ケチャップ)・島豆腐のソテーとグリル野菜・ミッ
  クスビーンズとレタスのスープ・フレッシュフルーツ入りゼリー(アガー使用)・ご飯
 4.野菜サラダ・グリル野菜のサンドイッチ・茸と南瓜のスープ・フルーツミックス
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 ですが…「僕、キノコあんまり好きじゃないです」…ヴェジタリアンで食べられるものが少ないのに好き嫌いがあるなんて…。ホテルの食事について本人も喜んでいました、キノコが食べられるようになったのですから。本人のみでなくゆるヴェジの中国人の生徒が「B君のご飯おいしかったよぉ。少しもらったけど、みんなのご飯よりおいしかったよ」「僕の御祖母さんがヴェジタリアン。仏教」あらまぁ。

 (高校日本語コミュニケーションアドバイザー&専門学校時間講師)


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