【選挙分析】
日本維新の与党化の背景と公明党のさらなる変質
◆自公連立政権18年間の公明党 安定した比例区得票率
自公政権がスタートしたのは1999年である。以来18年間、2009年から2012年までの民主党政権の時代を含めて、自公選挙協力はゆるぎなく継続した。10年間の自公協力による国政選挙は、2001年の参院選挙を皮切りに昨年2016年の参院選挙まで延べ10回に及ぶ。戦前戦後を含めて宗教政党が連立政権に参加し、安定的な得票で生き延びているという前例はない。戦後政治史の転換点は、1994年のいわゆる自社さ連立政権発足である。社会党が村山委員長当時、自社さ連立政権に参加したことで、戦後の保革対立の政治構造は一変した。当時朝日新聞の石川真澄氏は要旨以下のように述べている。
――村山は7月18日の臨時議会での所信表明やその後の質疑に答える形で、日米安保体制の堅持、自衛隊の合憲、日の丸・君が代の容認など、それまでの社会党の主張を大きく転換する見解を表明した。村山の政策転換は首相になった以上やむをえないという形で、最後のハードルを強引に乗り越えたものであった。そのことはまた、冷戦の終焉、ソ連・東欧社会主義国の崩壊などの「時代の転換」を反映していた。しかし、そうではあっても社会党のかつてから見れば明らかな180度の路線転換は、共産党を除く「政策ののっぺらぼう化」をはっきりともたらした。その結果、戦後政治を主導してきた「保守」は、日本政治全体を覆う広い合意の体系となり、より強い継続に向かいつつある。(「戦後政治史 岩波新書」195ページ)
自民党の権力奪還へのすさまじい執念が実を結んだのである。土井たか子衆議院議長時代の、小選挙区制導入が重なって、社会党はその後の選挙で敗北を重ねて消滅していく。自民党はかねてから創価学会の政教分離や出版妨害事件、池田大作氏の女性問題、財政問題を攻撃し、池田大作会長の国会喚問を執拗に要求してきた。それが一変して、安定的過半数政権への欲求から公明党との連立に舵を切った。1999年、小沢氏との自自連立政権から公明党を加えた自自公連立政権となった。以来18年間の公明党の得票数と得票率は以下のようになっている[註3参照]。
公明党の比例区票は民主が圧勝した07年参院選、09年衆院選でも大きな変化はなかった。公明党の比例区票が全国の小選挙区における自民党選挙区候補の当選を下支えしている限り、自民一強体制はゆるがない。公明党の矢野元委員長は自公連立政権発足当時、「創価学会・公明党票は自民にとって麻薬だ。一度始めると学会票なしには勝てなくなる」と予言した。まさにこの予言は当たっている。
下記の[註1][註2]に明らかなように公明党は自民候補259人を推薦し、その当選率は96%。その代償に自民が推薦する公明の小選挙区候補は9名である。自公政権は公明の要求による商品券配布や昨年参院選前の3万円の臨時福祉給付金、軽減税率などで大盤振る舞い、その代償に公明は、安保法、カジノ法、テロ法案、原発再稼働、辺野古米軍基地などに賛成し、持ちつ持たれつ安倍一強体制を支えている。その背後には創価学会本部との合意があるのは明らかだろう。
[註1]公明新聞:2014年12月16日 衆院選小選挙区 公明推薦の自民候補212氏が勝利 第47回衆院選で、公明党が推薦した自民党の公認候補259人のうち、212人が小選挙区で当選、41人が比例区で復活当選した。公明党が推薦した自民党の公認候補の当選率は、小選挙区で81.8%、比例区での復活当選を含めると96%。
[註2]自民、公明9氏を推薦 公明新聞:2014年11月26日 衆院小選挙区 自民党は25日、12月14日投票の第47回衆院選小選挙区で、公明党予定候補9人全員を推薦決定した。いなつ久(北海道10区)、太田あきひろ(東京12区)、上田いさむ(神奈川6区)、佐藤しげき(大阪3区)、国重とおる(大阪5区)、いさ進一(大阪6区)、北がわ一雄(大阪16区)、赤羽かずよし(兵庫2区)、中野ひろまさ(兵庫8区)。
[註3]自公18年の国政選挙得票動向 公明党比例区得票と得票率
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016年 参院 7,572,960(13.5%) 安倍内閣
014年 衆院 7,314,236(13.7%) 安倍内閣
013年 参院 7,568,082(14.2%) 安倍内閣
012年 衆院 7,116,474(11.8%) 野田内閣
010年 参院 7,639,432(13.1%) 菅 内閣
09年 衆院 8,054,007(11.5%) 麻生内閣
07年 参院 7,765,300(13.2%) 安倍内閣
05年 衆院 8,987,620(13.3%) 小泉内閣
04年 参院 8,621,265(15.4%) 小泉内閣
01年 参院 8,187,804(15.0%) 小泉内閣
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◆安保法制賛成から揺らぐ創価学会 本部元職員の内部告発
だが創価学会・公明党にも内部からの告発や反乱が起き始めている。それが公然化したのは、強引な憲法解釈によって、集団的自衛権を容認した015年の安保国会からである。それまでの創価学会・公明党の内部対立や反乱は個人的なものだった。しかし安保法制に反対する学会内部の反乱は、まず創価大学・高校の教師や生徒などの公然たる集団的行動であり、それはたちまち、インターネットを利用することによって広がって行った。015年の安保法反対のデモには、創価学会の三色旗がひるがえり、学会員が公然と参加するようになった。
一方、学会本部に対する職員の不当解雇に反対する裁判が起こされている。解雇された3人は、「池田先生の教えに反する学会本部の不当なやり方を弾劾する」としており、学会本部は6人の弁護士を雇って、これらの元創価学会職員3名をあくまでも排除する考えだ。
・小平秀一 平成11年3月、創価大学を卒業。平成11年4月、宗教法人創価学会に入職。平成24年10月、宗教法人創価学会を懲戒解雇。平成26年6月、創価学会を除名。
・滝川清志 平成12年3月、創価大学を卒業。平成12年4月、宗教法人創価学会に入職。平成24年10月、宗教法人創価学会を懲戒解雇。平成26年6月、創価学会を除名。
・野口裕介 平成14年3月、東海大学を卒業。平成14年4月、宗教法人創価学会に入職。平成24年10月、宗教法人創価学会を懲戒解雇。平成26年6月、創価学会を除名。
彼らは実名で本を書き、外人記者クラブで学会の不当解雇を公然と批判。全国的に創価学会本部の官僚体質を批判する学会員と連携して、全国的な集会行脚をつづけている。以下は彼らによる「元創価学会職員3名のブログ」の創価学会員に対する訴えである。
――はじめに このブログは、創価学会の元職員であった私たち3名が、創価学会の中で約8年にわたって体験してきた出来事をもとに、今の創価学会が抱えている問題点や、未来に向けて取り組むべき課題などを多くの方々に知ってもらい、考えて欲しいという思いから始めました。最近、テレビや新聞でも報道されていますが、世界の平和を目指す創価学会として、"安保法制を容認する公明党を支持すべきか否か"といった問題が注目され、学会員の中でも賛否が分かれ、意見が交わされています。愛知県の武豊町議会議員は、もともと公明党の議員でしたが、他国の戦争に加わる集団的自衛権の行使容認は違憲であると考え、昨秋、創価学会員でありながら、公明党を離党しました。
また、今年8月には、大阪の学会員有志約100名が創価学会組織とは別に、安保関連法案を違憲とする立場の憲法学者を招いて勉強会を開いたり、創価大学の教員らが、安保法案反対の署名を募り抗議活動を行なったりするなど、公明党に厳しく抗議する学会員の行動が全国で急増しています。(中略)公明党を思うがゆえに行動する学会員の必死の訴えは一向に届かず、公明党は安保関連法案の採決を容認する姿勢を崩しません。また、創価学会本部も沈黙を続けたままです。池田大作創価学会名誉会長と親交が深い、世界的な平和学者のケビン・クレメンツ博士は声明を出し、「平和主義と反核の信念で闘いぬいてこられた牧口・戸田両先生の受けられた苦難に対する不正義と言わざるを得ません」「日本の平和憲法の解釈変更を、沈黙をもって支持するなど、ありえないことです。」と厳しく指摘しています。そもそも池田名誉会長は、平成13年9月の産経新聞社のインタビューで、「憲法や集団的自衛権をめぐる国家主義的な方向には懸念せざるを得ない」と否定的な見解を示しています。また同月の毎日新聞社のインタビューでは、「私は絶対に第9条だけは変えてはいけない」と強く表明されており、創価学会が憲法改正や集団的自衛権の行使容認といった国家主義的な流れに対して積極的に反対する立場を取らなければならないことは明白です。(中略)
私たちに対する懲戒解雇も、私たちが本部職員の会員への暴言に端を発する会員除名問題について幹部職員に報告したことが懲戒理由とされた処分でした。そもそも、池田名誉会長は、全職員が参加する会議の席上、職員の不正を名誉会長に報告する時の窓口として、長年名誉会長の秘書を務める谷川副理事長(現理事長)を指名されていました。しかし、私たちが職員の不正行為を報告するために谷川副理事長を訪ねた行為が、なぜか懲戒処分の理由とされてしまいました。池田名誉会長の厳命があっても、最高幹部の都合によって職員の不正行為は隠されています。創価学会が目的としている「一人の人間の幸福」「平和」の実現のために、身をもって学会本部の抱えている今の問題を体験した者として、健全な組織に是正していくために、声を上げなければならないと思っています。このブログが、創価学会をより良くしたいと願う、師弟不二の戦いを実践する学会員の方々に読んで頂ければ幸いだと思っています。――
◆静かに創価学会をやめるために 学会は詐欺と退会した第三世代の抵抗
また相前後してネット内に「静かに創価学会をやめるために」というブログが登場した。このブログは今年1月末で、500万アクセスを達成したと以下のように述べている。
――みなさま、とうとう500万アクセスを達成することができました!
本当にありがとうございます! このブログ「対話を求めて」を始めてから5年と2ヶ月。途中、2度の休止期間はありましたが、こうして第三ステージに突入し、日ごとのアクセス数も確実に伸びていく中で、この記念すべき500万というアクセス数へたどり着くことができたのも、創価学会が詐欺だと気がついた多くの創価学会経験者の真実の声があったればこそと、心から感謝しております。
つきましては、この記念すべき機会に、より多くの方に「創価学会は詐欺だと気付いた」ということを、あらためてその具体的な期日とともに、このスレッドのコメント欄に宣言していただければと思っております。どうかよろしくお願いします。これからも「対話を求めて」は、創価学会は宗教などではなく、たくさんの人々を欺き不幸に陥れながらお金をだまし取っていくだけの汚い詐欺団体であるという事実を、皆さんの実体験を通じて世に知らしめていきたいと思っております。一人でも多くの学会員がこのことを考え、気づき、人生の選択を自らしていくことができますように願ってやみません。――
興味深いことは、これらの創価学会内部における様々な内部告発の公然化と退会を呼びかける動きは、創価学会第三世代ともいうべき人達が多いことだ。安保法案反対の創価大学、高校なども戦後の創価学会の世代としては三代目が多い。内部告発をしながら復職闘争を進める人たちも同じ世代だ。また「静かに創価学会をやめるために」の退会世代も、祖父母や父母に勧められて会員となったがもう我慢できないという若い世代だ。いずれも共通しているのは、インターネットを駆使して連絡を取り合い、全国的に連携している。「静かに創価学会をやめるために」の退会グループが参考にしているのは矢野絢也元委員長の手帳強奪事件に関する裁判闘争のなかで、矢野氏が出版した内部告発の四部作だ。参考文献として一昨年あたりはすべてブログに掲載されていた。
矢野氏は四部作の中の『乱脈経理』のなかで以下のように述べている。
――憲法89条は宗教団体に対する「公金」の支出を禁じている。国税庁が学会に対する税務調査に手心を加え学会の課税漏れを見過ごすことは、形を変えた「公金の支出」である。学会の最大の収入源である学会員からの寄付金は宗教活動として非課税扱い、聖教新聞などの売り上げも、布教に係るなどの名目で一般企業より低い税率に抑えられている。地方税の法人市町村民税、法人と道府県民税、法人事業税も無課税だ。日本大学の北野弘久名誉教授は「学会はもともと信徒団体に過ぎず、99年、日蓮正宗から破門された時点で宗教法人の認定条件を喪失している。それ以後は団体として集票活動を行う政治団体であり、また営利事業団体だ」と喝破された。私は、これに全面的に賛同する。現在の学会は集票活動をする政治団体であり、会員から寄付を募り、墓苑やさまざまな出版物を売りつける営利団体に他ならない。国税当局にマークされ、のたうち廻る思いをした池田氏は「やはり政権に入らないと駄目だ」と述懐した。その後、池田氏の野望は細川連立、自自公連立、自公連立政権として実現した。我々は自公連立政権の功罪を論じる前に、そもそも連立政権誕生の動機が、税務調査逃れと国税交渉のトラウマであったことを確認しておく必要がある。―― (矢野絢也/著『乱脈経理』2011年 講談社刊)
(世論構造研究会)