【旅と人と】

母と息子のインド・ブータン「コア」な旅(21)

坪野 和子


◆ブータンでの買い物は手ごわい、日本人が恥ずかしい(2)

 みなさまへの情報です。先月もお伝えいたしましたが、ブータン・日本国交樹立30周年を記念して、さきの1月21日に「ブータン・日本親善オファー」という企画がブータンの外務大臣と経済大臣より発表されました。
 期間限定西暦2016年6月から8月の間に日本国籍を有し、観光を目的とした入国者に対してディスカウントを行うということでした。徐々に割引を適用したと思われるツアーを組んだプランが出てきています。ABロード、地球の歩き方などのサイトで比較できます。またツアーの中には、「タイ出発」というものもあり、日本とタイの往復運賃を安く抑えるかどうかでかなり違ってくると思われます。来月には各社ともひととおりプランが決定すると思います。

 ところで、原稿を仕上げているただいま英国のウィリアム王子とキャサリン妃がインド訪問を経てブータンご訪問中です。このご訪問で、いろいろな発見がありました。
・「インドはどこ?とはい言わないけれど、ブータンはどこ?」と意外に知られていない国であること。
・「スイスの国土面積とほぼ同じ」という表現で説明されていました。そして…諸外国のメディアのほうが日本のメディアよりも正確で丁寧。日本では九州と同じくらい、人口は熊本市並みと説明することがしばしばです。
 なんと!! その熊本で大地震があったのですから、ひとつの国の人口より多い場所で天災が起きたのですから…。
・「注目はキャサリン妃のファッション」王室・皇室のご訪問など、ここまでネットで追いかけたことがなかったので、こんなに何回も場面に合わせて着替えているとは知りませんでした。また名前くらいは知っている有名ブランドのデザインはこういうものかと知りました。とてもステキですが、私のような庶民にはまったく手が届かない別世界でした。

 …ということで、旅行の話しの枕、今回はやはり庶民の私にはついていけない…パロでの高級ホテルでの話しを述べさせていただきます。

==============================
1. パロ---四つ星ホテル[テンジンリン・ホテル]---
==============================
 ガイドさんの提案「1泊プンツォリンで、朝パロでもいいと思う」いまだにこの提案に同意すればよかったと後悔している。高級ホテルにチェックイン。流暢な英語でお出迎え、息子の顔から「やっとわかる英語が出てきた」と思ったに違いない。
 ロッジのような離れみたいな場所に部屋があり…広い、ひろ〜い、広すぎる!!
 自分の「家」より広い「部屋」なのだ。ウサギ小屋と言って間違いない昭和40年代の3DKの団地の一室が我が家。しかも、壁一面に本棚が並んでいるので生活スペースが狭い。そんな生活をしているので広すぎて落ち着かないのだ。公定料金で決まっていなければ、交渉して狭い部屋かもっとアットホームなホテルにしてもらいたかった。

 とりあえず荷物を広げて、2泊するのだから一度も洗濯していなかった衣類をランドリーに預けることからはじめた。2泊するお客が洗濯物を預けるサービスはあってもあまり頼まれたことがないらしく慣れていなかった。とりあえず預けて…締切り間近の原稿を仕上げることにする。ブータン選挙についての論文だ。しばらくネットが使えなかったのでネットが使えるうちに日本へ送信しなければ。これも一日延ばしてもらえばよかったかもしれない。なぜなら旅の間に日本で調べて分からなかったことが分かったから。
 でも、原稿は送信してしまった…。

 風呂…といってもシャワーの延長で、お湯は日本人が考えるよりもぬるく、出しすぎるとお湯が水になる。これはどんな高級ホテルでも同じ。インドでこんなことは当然だったから、息子が慣れてしまっていたので「それでもお湯が出てくるからいいよな」と。
 寒いダージリンではまずお湯をバケツに入れ、足湯用に浸かることで下から温め短い時間の入浴??お湯浴びる??でもいいようにやっていた。これは私がネパールやチベットにいた頃やっていた日常生活だ。このお風呂の件では、ガイドさんに抗議や文句が出やすいので、一応「日本みたいにたくさん一度に出すと止まるかもしれない」などと説明されていたが、今までの旅がそうだったので、何とも思わなかった。
 蛇足だが、旅行のチラシなどを見て「日本人の旅って何処に行くということよりも、風呂、飯、寝る」が良ければいい旅なのかしらと思っていた。実際、バス旅行などから帰ったご近所のかたにどうだったか訊くと、景色や旅行した場所についての感想より「風呂、飯、寝る」の感想ばかりだ。「風呂、飯、寝る」は昔のお父さんが話す言葉の変化球みたいなものだろうか。

 息子が風呂??シャワー??に入っている間、テレビを観た。ニュースと伝統競技の綱引きとブータン伝統舞踊。国営放送でもCMが流れる。中国と同じだ。この日はゆる〜く楽しんだ。尚、ブータンのテレビ番組は一日中やっているわけではない。番組がない時間帯は砂嵐…ではない。静止画が流れていてその上に求人広告が数十分毎に変わる。「庭師募集」「木材加工職人募集」「ショッピングモールスタッフ募集」など。
 この仕事はあるかな…期待して見ていた。「コールセンタースタッフ」…残念ながらこの日はなかった。コールセンタースタッフはブータンとインドの女性に人気の職業だ。英語で、地球の反対側とまではいかないが、アメリカなどの英語圏の夜中の電話に対応する仕事だ。これは大学などに直接求人なのだろうか。この広告について後でガイドさんにきいたら「広告費が安いから」とのことだった。

==============================
2. パロ---宴会場??---
==============================
 夕食タイム。ビュッフェ式。部屋の雰囲気から気取ったコースが出てきたらくつろげない、どうしようと思ってドキドキしていた。普通にブータン式のビュッフェ。大皿料理のセルフという感じだ。ガイドさんが呼んでくれて同席して食事。ガイドブックや旅行サイトでは「ガイドやドライバーは食事に同席しない」とあるが、同席してくださった。
 しかも…ガイドさんやドライバーさん用のまかないを持って。「エルマ・ダルツィ」…普通は「エマダツィ」とカタカナ表記される青唐辛子のチーズ煮込み。私たち親子が、外国人向けの食事のほうがクチに合わないことに気づいてくださったので。サイコーの配慮でした。
 翌朝も生の紫玉ねぎ、唐辛子、持ってきてくださいました。
 なんでも、ここのレストランはタイ人シェフの西洋人向け料理が主で…ああ、出かける前に旅行評価サイトをチェックしたらインド人が「中華」と書いていた。なるほど。

 で、奥に騒がしい団体。…日本人だ!!
 貸切でもないのに、大宴会。ノーキョーさん(大勢で来て飲んで騒いでお土産買って帰って行く日本人の団体さん・農協ではない)いやだ、恥ずかしい。見ると、ブータン人のお坊さんも。会ったことある、何かの集まりかパーティーで。宴会でのあいさつとか日本で行っていることと大して変わらない、いや、同じだ。国境を越えても変わらない。お坊さん、ウチの近所の大学の留学生だ。本人は呑んでいないが、日本人の宴会慣れしている。食べるよりもさしつさされつの飲酒を楽しんでいる模様。しかも飲んでいるから声も大きい。

 西洋人のお客様はイヤな顔をして食事がすんだら去っていった。
 隣りの席に「中国人」…「〇〇〇〇」「そうね、〇〇〇〇」息子がその話を聞きとった。ガイドさんは息子の様子に気づいた。
 日本では爆買いでうるさくて、マナーが悪いと評判の悪い中国人だが、ブータンでは違う。ブータンにお金をかけて来るくらいだから、敬虔な仏教徒。それなりにハイソな人たちだ。中国国内でも滅多にお目にかからないような上品な人たちだ。
 だから、ブータンでは中国人観光客の評判が良い。たとえ公定料金がなくなっても、現実的な物資が少なく、宗教関係のお詣りが主なので、日本に来るタイプとは違うだろう。

 私たちが部屋に戻ってからも宴会は続いていたようだった。解散したと思われる…が部屋の中から簡単にわかる。他のお客様が寝ているかもしれないのに、自分の部屋にたどり着くまで大きな声でしゃべっていた。恥ずかしいなぁ…中国人のふりをしていたいなぁ…。
 私たち3人、レストランを出たとき、ガイドさんが息子に訊いた。
 「あの中国人たち、なんて言っていたの??」
 「うるさいわね、あの人たち」
 「・・・」
 次回、日本人が恥ずかしいと思った「修学旅行感覚の寺院参拝」2。目的地「高僧タントン・ギャルポの橋」

 (筆者は高校時間講師)


最新号トップ掲載号トップ直前のページへ戻るページのトップバックナンバー執筆者一覧