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沖縄・辺野古反対を裏切った島尻安以子と民主党菅直人政権

仲井 富

 ◆「くさり、やまとぅ」(腐った大和人)島尻安以子の政治遍歴

 菅首相は官房長官時代の6年半、安倍政権の番頭として辣腕を振るった。
 その最大の成果が、大阪維新の橋下徹と島尻安以子の変節であった。橋下氏は、市長時代は当初、辺野古移設を問題視して、辺野古移設に疑問を投げていた。それを頼りに当時の仲井真沖縄県知事が訪ねようとしたことさえあった。
 そして島尻安以子は、当時の民主党の菅直人首相が辺野古反対から賛成に転じたのに乗じ、自民党県連も一体となって2010年の参院選で辺野古誘致反対を掲げて当選した。沖縄の野党社民、共産の対応も愚かだった。この選挙にそれぞれが独自候補を立てて、総計では50%を超える得票だったのに、島尻の当選を許す結果となった。

 しかし島尻は、2012年自民党安倍政権発足とともに変節する。菅官房長官の意向を受けて、まず辺野古反対で当選した自民党の国会議員をすべて賛成に転じさせた。ついに仲井間知事まで最終的には賛成となった。すべて菅の官房機密費によって落とされたのだ。
 これに怒った、当時、那覇市長の翁長氏が、決然と辺野古反対を掲げて2014年沖縄県知事選挙に、党社民、共産などのオール野党によって圧勝した。その後の国政選挙すべてに、保革共闘のオール沖縄が国政選挙で勝ち続けている。

 島尻安伊子は辺野古賛成の功績で、安倍内閣の沖縄・北方領土担当大臣となった。ところが北海道での記者会見で「歯舞・色丹」という、あまりにも有名な言葉を読めず、その無能さを天下にさらしたことで有名になった。
 沖縄では島尻のことを「くさり、やまとぅ」(腐った大和人)と呼ぶ。「くさり、やまとぅ」とは、「沖縄に居ながら、自らの地位を守るため、あるいは自らの出世のために、沖縄を裏切り、踏み台にして、のし上がろうとする者」のことだ。沖縄人ではなく宮城県出身の「やまとぅ」だからこそ、非情な背信行為を平然としてやってのけたのだ。

 ◆ 島尻の歴史的敗北と、落選後も政務官として年収2,416万円も

 その島尻は、2016年参院選に自民党公認で参院選に立ったが、オール野党の伊波洋一に10万票差という沖縄の国政選挙史上最大の敗北を喫した。
 この選挙で、無党派層の71%が野党統一候補の伊波候補に投票した。前回、翁長知事も無党派層61.96%と仲井真を圧倒したが、さらに上回る71%という驚異的な支持を獲得した。また公明党本部は、自民党に軽減税率を飲ませ、3万円の給付金をばらまく約束を取り付けた。それを餌に公明県本部は辺野古移設で中立の姿勢を転換させ島尻支持に切り替えた。
 だが朝日出口調査では、公明党支持者の34%が伊波に投票したことが明らかとなった。公明支持者といえども仲井真、島尻の背信行為を許さない人々がいたのだ。

 島尻は落選で大臣の座を降りたが、その後も菅官房長官の口利きで、2016年8月、後任の鶴保庸介沖縄及び北方対策担当大臣の下で、沖縄振興及び子どもの貧困対策を担当する大臣補佐官に任命され、2017年8月、鶴保の後任の江崎鐡磨大臣の下でも大臣補佐官に再任された。
 2018年2月27日、自身を任命した江崎鐡磨の大臣辞任に伴い、自らも大臣補佐官を辞任したが、江崎の後任の福井照大臣が同日の記者会見で島尻を続投させる意向を表明し、3月2日付で再度、大臣補佐官に任命された。10月2日に成立した第4次安倍改造内閣の宮腰大臣の下でも続投した。

 政務官の給与はいくらか調べてみた。驚くべし、島尻安以子の政務官給与は年間ボーナス込み2,416万円、第二次安倍内閣の6年余、少なくとも総額1億円を受け取っていたことになる。
 すべて菅官房長官時代の辺野古反対から賛成に回ったことへの報酬である。ほぼ国会議員並みの給与だ。菅は官房機密費のみならず、手下に対しては半永久的に国費で食い扶持をあたえているのだ(写真)。

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満面の笑顔で菅首相とグータッチする島尻安以子~島尻安以子事務所ニュースから

 ◆ 橋下徹氏:菅首相は「とにかく仕事熱心」「裏切らない」と絶賛

 今年2月20日、元大阪府知事で元大阪市長、弁護士の橋下徹氏(51)が、関西テレビで放送された「モモコのOH!ソレ!み~よ!」(土曜午後1:59)に出演。菅義偉首相について、「とにかく仕事熱心」「裏切らない」と絶賛した。
 松井一郎大阪市長は菅氏と太いパイプを持っており、「松井市長と菅総理の食事会に呼ばれ、何度か同席させてもらった」ことがあるという橋下氏。2~3時間に及ぶ食事会で「菅さんは一滴も酒飲まないし、もう、ずっと仕事の話をしている」と説明。「とにかく仕事熱心。政治家って、会うと人の悪口か自慢話しか言わないんですけど、菅さんはひたすら仕事」「松井さんと菅さんがあそこまで太い関係になっているのは、絶対に裏切らないんですよ」と熱く語った。

 いまだに橋下徹は、大阪維新代表の時と同じく、菅首相との腐れ縁を引きずっているのだ。2014年総選挙の際、沖縄に行って、維新の下地幹郎とともに記者会見し「土下座しても辺野古移設を御願いしたい」記者会見し、沖縄維新を辺野古賛成に導いた市長時代の維新代表だった橋下氏と変わっていない。
 その下地幹郎も変節を繰り返してきたが、日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の汚職事件を巡り、贈賄の疑いが持たれている中国企業側から現金100万円の受領を認め日本維新の会から除名され。維新県総支部は解散となる見通しとなった。

 ◆ 立憲など野党は誰一人、官房機密費の闇を追及できない

 このような官房機密費の使途について立憲民主党などの議員は、誰一人追求しようとしない。それは何故か。みんな過去に官房機密費の恩恵に浴しているか、そうでない議員は無知なのかいずれかだ。
 たとえば辻元清美代議士とか、蓮舫参院議員とか、得意になって菅批判をしているが、彼女たちの口から一言も官房機密費の追求など出てこない。当然だろう。辻元議員などは、自社さ連立政権で官房機密費の恩恵にあずかり、民主党政権でも、自らが公約した官房機密費公開法案に対して、民主党政権の平野官房長官が平然とそれを無視したことに対して、一言もなかった。

 赤旗の報道に端を発する“次の爆弾”が準備されている。その一つが、菅首相の官房機密費問題だ。菅首相は官房長官時代の2,822日間で、官房機密費の中でも領収書がいらない「政策推進費」を総額86億8千万円支出している。1日あたり307万円もの支出だ。また、菅政権発足後すでに5億円が支出されていることも明らかになった。
 さらに問題視されているのが、昨年9月の支出である。8月28日に安倍晋三氏が辞任表明し、菅氏は9月2日に総裁選への出馬を表明した。菅氏はその前日の1日に、官房機密費のうち9,020万円を「政策推進費」に振り分けていたのだ。共産党はこの件についても徹底的な追及を続けている。

 ◆ 辺野古移設反対を真っ先に裏切った菅直人首相「空き缶帰れ!」デモ

 辺野古反対の沖縄県民の総意は、すべての国政選挙・知事選挙・県民投票で明確だ。日本のどこに翁長・玉城デニー知事の辺野古反対での勝利、国政選挙での完全勝利、沖縄県民投票での勝利という民意を無視する都道府県があろうか。
 菅の出身地秋田県では、「イージス・アショア反対」の女性候補・寺田静が2万票余の差で勝利した。その結果を受けて、政府は秋田配備を中止せざるを得なかったのだ。

 いかに日米地位協定が存在しようとも、沖縄の民意無視の罪は大きい。かかる政治状況を招いた根源は民主党政権の背信である。かつて菅直人は、2001年から民主党の沖縄ビジョン作成の過程で「米海兵隊は沖縄にいる必要はない、米本土に移転すべき」と公言してきた。
 とりわけ小沢自由党と合併して、自民、民主の二大政党対立による本格的な政権交代のきっかけとなった2003年の衆院選挙で菅民主党代表は、記者会見で以下のように述べた。「菅氏海兵隊海外へ:政権交代時米に移転求める考え」という4段抜きの記事である。そのなかで「菅代表は那覇市内で記者会見し、米海兵隊の基地と人員がいなくても極東の安全は維持できる。日本国内からの移転を考えている」と明言した。(朝日新聞 2003年11月2日)

 その結果が、2009年の総選挙における民主系野党の小選挙区全勝、自公完敗となった。だが民主党は、アメリカの出先機関と化している外務省や防衛省の親米ポチ官僚に言いくるめられて、半年も経たないうちに「普天間基地の最低でも県外移設」という鳩山首相の公約を破棄したのだ。
 後任の菅首相はかつての発言をかなぐり捨て、「日米合意による普天間基地の辺野古移設」のお土産を抱えてオバマに頭を下げた。

 菅直人首相は2010年12月17日に沖縄入りした。自ら普天間の名護市辺野古移設案を「県民にとってベストではないがベター」と理解を求めた。
 だが当時の仲井真弘多知事は「県外移設要求を正面から受け止めてもらいたい」と平行線だった。県民も「何度『ノー』と言っても沖縄の声は届かないのか」と怒りを募らせた。その後に辺野古現地に飛んだが「空き缶帰れ!」のデモに迎えられ退散した。島尻安以子よりも先に、辺野古移設容認を叫んだのは菅直人民主党政権だった。菅直人と菅義偉、両首相の罪は大きい。

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2012年12月17日:菅直人首相の辺野古移設方針に抗議する那覇市民

 2007年参院選  辺野古移設反対の糸数慶子、当選
 2008年県議選  辺野古移設反対派の県議会野党過半数、民主初の4議席
 2009年総選挙  辺野古移設反対の野党全選挙区当選、民主党政権へ
 2010年参院選  島尻安以子県外移設反対で再選、民主菅政権惨敗
 2010年県知事選 仲井真知事が県外移設を公約して再選、2013年変節
 2012年県議選  辺野古移設反対の野党勢力二度目の県議会勢力過半数
 2012年総選挙  自民党候補が県外移設を掲げて全員当選、民主総選挙惨敗
 2013年参院選  糸数慶子辺野古移設反対で三選、民主参院選惨敗
 2014年県知事選 辺野古移設反対の翁長知事10万票差で仲井真に勝利
 2014年総選挙  辺野古移設反対の野党勢力完勝、自民4選挙区で敗退
 2016年県議選  翁長支持の与党オール沖縄県議が27議席で三度目県議会過半数完勝
 2016年参院選  伊波洋一辺野古移設反対で島尻安以子に10万票差で完勝
 2017年総選挙  辺野古移設反対の野党候補3議席の勝利 自民1議席
 2018年知事選挙 県知事選挙で玉城デニーが戦後県知事選の最高得票39万票余で当選
 2019年参院選  高良鉄美が辺野古反対で自公の安里繁信に7万4千票差で勝利
 2019年 沖縄県民投票の結果 辺野古移設反対 43万4千票で反対派圧勝

 (世論構造研究会代表・『オルタ広場』編集委員)
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